本と風景

 

 7月30日の日曜日、以前から楽しみにしていた外国の本っておもしろい!のイベントに参加してきました!

 出版記念イベントのほうは、読書探偵作文コンクールの受賞者のお子さん&ご家族も出席されていて、とても賑やかなイベントでした。プログラム最初の、絵本の読み聞かせ、思わず童心に帰りました! 同じ絵本の英語版と翻訳版を、翻訳家の方が読み比べてくださったのですが、あらためて「日本語と英語って違うなぁ」と実感。翻訳はよく「横のものを縦に」と言いますが、絵本だと言葉が少ないぶん、ひとつひとつの言葉が作品全体を左右しかねない気がします。本当に、言葉を磨かないとできない作業です。

 

外国の本っておもしろい

 

 プログラムでは、英語、ポルトガル語、中国語(台湾)、フィンランド語、そしてアフリカという、さまざまな国や地域の言葉を翻訳されている翻訳家の方が、それぞれの言葉や文化のことをお話くださいました。ポルトガル語の絵本に「シナモンの香りがする絵本」があるそうです。シナモン?と思ったのですが、爛轡淵皀→大航海時代のスパイスの交易瓩箸いη愀覆鬚話しいただき、なるほど、と納得。

 

外国の本っておもしろい

 

 中国語の翻訳家の方には、台湾の絵本をご紹介いただいたのですが、イラスト、お話ともに幻想的な雰囲気があって、とても読みたくなりました。会場そばの青山ブックセンターで販売しているということだったので、イベント後に立ち寄ったのですが、もたもたしているうちに、売り切れてしまいました……。こちらの本です。

 

星空

 

 

外国の本っておもしろい

 

 そして、フィンランドの時間には、なんとフィンランドから中継を結んで、現地からフィンランド文学を翻訳されている方にお話いただくという形式でした! いまフィンランドは夏の盛りで、とても良いシーズンだそうです。手芸や工芸が好きなわたしにとって、フィンランドはあこがれの国。いつか行ってみたい……。(フィンランドといえば、ムーミン、だけじゃないんです! もちろんムーミンも大好きですが。)

 

外国の本っておもしろい

 

 最後は、アフリカの文化を音楽・歌・踊りで堪能しました。アフリカは地域によって、話す言語も、もちろん文化も違うようです。歌の歌詞の説明があったのですが、楽し気なメロディ、リズムから想像もつかないような、悲しい(せつない?)内容で、驚きました。これもアフリカのたくましさ、おおらかさなんでしょうか。ダンスタイムがあったのですが、ここのところ、毎日家にこもって翻訳作業を続けていたせいか、体がカチカチでまったく動かず……。

 

 と、本当に盛りだくさんの楽しいイベントでした! プログラムの最初に、「読書探偵作文コンクール」の歴代受賞者の表彰式があったのですが、小学生だったときに受賞して、いまは高校生という方もいて、このコンクールの歴史を感じました。受賞者のみなさんが、「自分の作文が本になってうれしい」と口々にコメントしていたので、聞いているこちらもうれしい気分に。わたしは、絵本や児童書の翻訳者を目指しているわけではないのですが、YAは大好きなジャンルで、ぜひ翻訳してみたいと思っています。イベントに参加されていたお子さんたちが大きくなったとき、手にとってもらえるような翻訳書を翻訳したい。そんな、新たな目標ができた一日でした。

馬

 

 ここのところ、犬とか猫とかが出てくる作品ばかり読んでいます。犬、猫、ときて、一昨日読み終わったのが、馬(&犬)が登場するミステリー。

 

 犬ミステリーはこちら。

 

その犬の歩むところ

 

その犬の歩むところ』 

ボストン・テラン:著、田口俊樹:訳

 

 「翻訳ミステリー大賞授賞式」の出版社対抗ビブリオバトルでこの作品を知ってから、ずっと気になっていましたが、やっと読めました。読んでいるあいだ、頭のなかに犁し瓩箸猝し瓩箸いΩ斥佞浮かんでいました。

 作品全体を通して、爛リスト教的な世界観瓩感じられました。テロや戦争のエピソードも出てくるので、「アメリカという国・アメリカの現実を象徴的に捉え、物語として表現している」という印象を受けました。といっても、難しく構えて読む必要はなく、どう読んでも、読んだ人間の心に何かが響く話だと思います。

 最後に神話が出てくるのですが、「犬は人間のそばにいることを選んだ」というくだりに(犬好きなら当然)ぐっときた!

 

 猫ミステリーはこれ。

 

書店猫ハムレットの休日

 

書店猫ハムレットの休日

アリ・ブランドン:著、越智睦:訳

 

 コージー・ミステリーはシリーズものが多いですが、読み続けていたシリーズでも、途中で読まなくなってしまうことも……。こちらの「書店猫シリーズ」は、この作品で三作目ですが、いまのところ第一作目から続けて読んでいます。

 主人公が経営しているのが書店というところもツボですし、120パーセント犬派のわたしも、クールな黒猫ハムレット(ハミー)にはやられっぱなしです。今回は狒簡謄ャット・ショー瓩縫魯爛譽奪箸ゲストとして参加する、というストーリーでした(以前、爛疋奪亜Ε轡隋辞瓩舞台のミステリーを読んだことがあるような……何だったかな……)。

 コージーお約束のドタバタ感がほどよいところがお気に入りのシリーズです。

 

 そして馬が出てくるミステリー。

 

とろとろチーズ工房の目撃者

 

とろとろチーズ工房の目撃者

ローラ・チャイルズ:著、東野さやか:訳

 

 こちらも、第1作目からシリーズ通しで読んでいるコージー・ミステリー(前作はこちらで紹介しています)。

 いつもながら、主人公(探偵役)スザンヌが経営するカフェ爛ックルベリー・クラブ瓩和臠棒后ハロウィンのイベントがあったり、猝啝綰笋蠅離肇薀奪瓩登場したり(読んで字の通り、トラックを店舗に移動販売をしている毛糸屋さん)と、ミステリー以外のカルチャー要素が満載です。そこがこのシリーズのいちばんの魅力かなと思っています。

 スザンヌは愛馬家(&愛犬家)なのですが、本作では馬がらみの事件が発生。あ、表紙にもいますが、牛も出てきます! スザンヌは前作で医師のサムと婚約し、結婚を控えているのに、殺人が起こったらその準備にも身が入らない……というのがらしくもあるのですが、ちょっと婚約者がかわいそう? と、ロマンスも入れつつ、ちょっとしたアクションもあって、でも全体的に落ち着いた雰囲気で、本作も安定感抜群の狢膺佑離魁璽検次Ε潺好謄蝓辞瓩任靴拭

 

 コージー・ミステリーも、いくつかのジャンルに分類できると思うのですが、わたしのなかでは、

 

・動物もの(犬や猫が登場する、あるいは主人公)

・職業もの(主人公が本屋、カフェ、スイーツのお店、チーズの専門店、スープの専門店(?)、アンティークショップ、ゲストハウス、ペットグッズのお店などを経営していたり、シェフやパティシェ、作家、芸術家だったりする)

・趣味、カルチャーもの(編み物やパッチワーク、お菓子作りなど、主人公の趣味がストーリーにからんでくる)

・歴史もの(貴族やメイドが登場するような、時代設定が古いもの)

 

といったジャンルが思い浮かびます。ミス・マープルのような、いわゆる猊當未里ばあちゃん瓩箸狎豢伴臧忰瓩主人公のコージーもありますが、最近の作品では、主人公(女性の場合がほとんど)が何らかの職業を持っている作品が大半を占めている気がします。 自分のやりたいことを職業にして奮闘している主人公に励まされることも多く、それがコージーを読む楽しみのひとつです。

 翻訳されてほしいシリーズや、続きが読みたいのに翻訳書が出なくなったシリーズもあるので、いちコージーファンとして、細々とでも、いろんなシリーズを読み続けることで、このジャンルを応援していきます!

オオカミ

 

 ひとつまえの記事で紹介した、こちらの作品。いちおう読み終わったので、感想など……。

 

 

Say Goodbye For Now by Catherine Ryan Hyde

 

<ストーリー概要>

 1959年の夏。女医ルーシーは、テキサス州の小さな町のはずれで、ひっそりと暮らしていた。辛い人生を歩んできた彼女は、傷ついた動物を保護し、世話をすることを生きがいにしていた。そこへ、ひとりの少年がやってくる。ピートと名乗る少年は、傷ついた一匹の犬―ハーフ・ウルフ―を連れていた。

 ピートは、家庭に恵まれない少年だった。プリンス(ハーフ・ウルフ)を介して、ピートとルーシーは心を通わせていく。ピートはまた、黒人の少年ジャスティンと知り合い、友情を育むが、時代がそれを許さなかった。ジャスティンが何者かに襲われ、ひどいけがを負ってしまう。一方、ジャスティンを治療したルーシーは、ジャスティンの父親カルヴィンと出会う。知的で思いやりのあるカルヴィンにひかれていくルーシー。妻を亡くしていたカルヴィンも、ルーシーの孤独とやさしさを理解し、ふたりは静かに愛を深めていくのだった。だがふたりの関係は、ピートとジャスティンの関係以上に、深刻な事態を引き起こしていく。

 ピートとルーシーに訪れる、プリンスとの、そしてジャスティン、カルヴィンとの別れ。だがそれは、ふたりにとって、長きにわたる爐靴个靴諒未譟goodbye for now)瓩世辰……。

 

<感想>

 半分くらいまではじっくりと、残りは走り気味に読んだのですが、残念ながら思ったより犬(プリンス)の存在感が薄かった……。メインの登場人(犬?)物ではあるのですが、プリンスを中心に話が進むことはなかったです。もちろん、ピートがプリンスの命を助け、プリンスがピートを守り、という、ピートとプリンスの関係には心温まるものがありました。プリンスはハーフウルフといってもほぼ野生なので、飼いならすことはできず、傷が癒えたら野生に帰っていきます。でも、それでピートとプリンスの関係が終わったわけではなく……という展開には、ぐっときました。

 

 王道のFeel-good storyで、読後感の良い作品だと感じました。数十冊のベストセラー(しかも、どの作品もレビューでひじょうに高い評価を獲得しています)を世に送り出している作家さんだけあります。

 ルーシーとピートが語り手の章が、交互に続く形で構成されています。どちらも心に傷を抱えるピートとルーシーが出会い、支え、癒し合い、本物の家族になっていく様子が、さまざまな出来事を通してさりげなく、かつ感動的に描かれています。ふたりが出会うきっかけがプリンスなので、やっぱりプリンスが物語の要、と言えるのかもしれません。

 そして、ピートはジャスティンと、ルーシーはカルヴィンと、それぞれかけがえのない関係を築き、最後は四人で幸せに……と話は進んでいくのですが、エンディングがちょっとあっけない気もしました。(最後はルーシーの語る章で締めくくられるので)わたしがピートのほうに感情移入していたことも、あっけないという印象に影響していると思います。

 作者がいちばん描きたかったのは、ルーシーとカルヴィンの犧絞未鮠茲蟇曚┐唇Ν瓩覆里もしれない、そう感じました。

 

 この作家さん、動物が登場する作品を多数発表しています。これもそのひとつ。

 

 

 犬がテーマの原書のなかから、日本の読者の心に響く作品を探す。このテーマで、しばらく読書をつづけてみようと思います。

犬の目

 

 楽しみにしていた作品が刊行されました!

 

その犬の歩むところ

 

その犬の歩むところ

ボストン・テラン:著 田口俊樹:訳

 

 翻訳ミステリー大賞シンジケート授賞式&コンベンションの、出版社対抗「イチオシ本バトル」で見事1位を獲得した作品です。(サイトでも紹介されています!)犬が主人公で、面白くて、しかもいい話で……ときたら、読まない理由はありません! 本屋に走らねば!

 

 と、わんこが主人公のミステリーが読みたくなって、文庫本になっていたこちらを読み始めました。

 

誘拐された犬

 

誘拐された犬

スペンサー・クイン:著 古草秀子:訳

 

 「犬もの」のミステリーというと、最近はこれを思い出してしまいます。名犬(迷犬?)チェットと飼い主の探偵バーニーのシリーズで、本国では八作ほど発表されているようです。本書は、以前別のタイトルで刊行されていたのですが、いつのまにか文庫本になってました! ストーリーはチェットの一人称で進むのですが、犬が言葉をしゃべれたら、ぜったいこんな風にしゃべるだろうな、という絶妙な語り口。犬好きなら「あるある」と声を出してしまうような、チェットのしぐさにはやられっぱなし! まさに「犬好きのためのミステリー」です。ジャンルとしては、コージーよりの、ほのぼの系でしょうか。痛い・暗い描写はほとんどないし、面白くて読みやすいので、犬好きさんへのプレゼントにもいいかもしれません。

 

 ここのところ、まったく読めずにいた原書も、これではいかんと思い、手がつけやすそうなものから読んでいこうかと思っています。読みたい本は山盛りあるのですが、ここは犬がらみの本でいってみようかな……。気になっているのは、この作家さん。

 

 

Say Goodbye For Now  by Catherine Ryan Hyde

 

 映画「ペイフォワード」の原作を書いた作家さんです。この作品以外にも、犬ものの作品を発表している模様。

 

 こっちも気になってます。

 

 

Hello Love  by Karen McQuestion

 

 ネットで犬ものの作品をリサーチしていると、表紙にやられてしまいますね……。どれも気になってしかたないです。とりあえず、手あたり次第にサンプルをKindleにダウンロードしたので、フィーリングがあったものを読んでみようかな。

オーストリア

 

 しばらく前に読了した、こちらのミステリー。

 

刺青の殺人者

刺青の殺人者

アンドレアス・グルーバー:著 酒寄進一:訳

 

 作者は、ドイツ語圏で大人気の、オーストリア人作家。前作『夏を殺す少女』もそうでしたが、独特の暗さと、重厚な空気感、かつスピーディーな展開という、読み応え抜群のミステリーでした。とくに終盤は、まさに手に汗握る展開で、はやる気持ちでページをめくりました。

 本作も前作同様、若い女性弁護士・エヴェリーンと、中年シングルファーザー(ちなみに喘息持ち)の刑事・ヴァルターがダブル主役という形です。ふたつの物語が交差し、最後はひとつになって怒涛のクライマックスへ!テンポアップするまでの序盤から中盤、もうちょっとじっくり読みたかったのですが、ここのところゆっくり読書する時間がなく、ちょっと流し読み気味になってしまったのがもったいなかった……。

 グルーバーは、『黒のクイーン』(男性の探偵・ホガートが主人公のシリーズで、古典映画が題材となっている)、『月の夜は暗く』(女性捜査官・ザビーネと変わり者の男性分析官・スナイデルのコンビのシリーズで、古典文学が題材)と、複数のシリーズをかき分けているようです。

 個人的には、スナイデルのキャラクターが魅力的(というか個性的)な『月の夜は暗く』が、いまのところシリーズ中いちばんかなと思っています。作中、『もじゃもじゃペーター』という絵本が出てくるのですが、タイトルだけで読みたくなりました(といっても、これを「見立て殺人」に使うくらいなので、子供向け?と思いたくなるような残酷物語のようですが……)。シリーズの続きは本国では刊行されているようなので、翻訳が出るのを楽しみにしています(出てほしい!)。

犬の写真

 

 ここのところ、細切れ読書が続いていて、なかなか長編一冊が読み切れません……。そんな仕事の合間に読むのにぴったりなのが狄浚姚瓩任后

 いま手元に置いてあるのが、こちらの図鑑。

 

 

世界の美しい犬101

写真:レイチェル・ヘイル・マッケナ

出版社の作品紹介ページ→パイ・インターナショナル

 

 マイナーな犬種の写真も多く(キャブードル、スプードル、ゴールデンドゥードルといった、混血種も取りあげられているし)、写真のポーズもちょっと変わっていて、個性的な写真集です。どの写真も絶妙なシャッターチャンスをとらえているので、眺めるだけでほっこり。

 ずいぶん前、ゴールデンレトリバーを飼っていたのですが、あの優し気な表情と立派な毛並みは、ほかの犬種にはない魅力だと、いまでも思います。犬、といえばゴールデンレトリバーを思い浮かべてしまうので。もちろん、雑種だろうが純血種だろうが、犬はみんなかわいい!

 こうした写真集や図鑑など、犬に関係した書籍の翻訳をすることは、わたしにとって大きな目標です。

水滴

 

 ここのところ、意識してノンフィクションを読むようにしています。そして出会った本がこちら。

 

煙が目にしみる

煙が目にしみる:火葬場が教えてくれたこと

ケイトリン・ドーティ:著 池田真紀子:訳

出版社の作品紹介ページ→国書刊行会

 

 夜寝る前に少しずつ読もう、と思って読み始めると、面白くてぐいぐい引き込まれてしまいました。狒魑鍬瓩テーマの本なので、おもしろい、と言っていいのか?ですが、ちょいちょい顔を出す著者の爛屮薀奪すぎる瓮屮薀奪ユーモアに、笑わずにはいられませんでした。

「初めてひげ剃りをした死体のことを、女は死ぬまで忘れない」と、なんだか退廃的なフィクションのような書き出しで始まります。幼いころに目撃した犹爿瓩鬚っかけに、死というものにとらわれてきた著者ケイトリン。大学卒業後(大学では中世史を専攻し、犹狎鹸儉瓩亡悗垢誅席犬鯑匹澣り、猖盻裁判瓩鯊艦世離董璽泙冒んだらしい)、まさに敵陣に乗りこむ意気込みでサンフランシスコの葬儀社に就職し、火葬技師(そんな職業があるとは知りませんでした)として働き始めます。そこでの体験をもとに、ケイトリンが見た死者や家族の姿、アメリカの葬儀の現実、死に対する意識と、ケイトリン自身の葬儀への思いを綴ったのが、この回想録『煙が目にしみる』です。

 この本を読みながら、わたし自身がかかわった葬儀を思い起こし、葬儀というものは、亡くなった人のものである以上に、見送る人のものなのかもしれないなと、あらためて感じました。当然、生前葬でもなければ、実際に葬儀を執り行うのは遺族(もちろん、遺族以外の場合もありますが、どちらにしても亡くなった人以外の誰か)です。昨今、終活やエンディングノートという言葉が聞かれるようになりましたが、自分の葬儀をどうする(どうしてほしい)のか、決めている人は少ないでしょうし、わたしもはっきりと意思表示したことはありません。それをしておくべきかどうか、ということも含めて、いろいろと考えさせられる本でした。

 死というものを研究(追及?)していた著者だけあって、さまざまな文化の葬儀や死生観が紹介されているのも、読みごたえがありました。日本の「イザナギとイザナミの神話」や納棺師の話も登場します。そうした知識と葬儀社での現場体験をもとに、著者ケイトリンは狒魑轡廛薀鵐縫鵐悪瓩硫饉劼鮴瀘し、狒魑靴療粗算姚瓩茲蹐靴、精力的に情報提供などの活動を続けているそうです。

 ここ数年読んだ本のなかに、同じテーマを扱った本はなかったので(葬儀がテーマの本なんて、そうそうないと思いますが……)、貴重な読書体験ができました。翻訳書の存在意義である異文化体験、それもかなり異色の体験を提供してくれて、なおかつおもしろいという、人にすすめたくなる(食わず嫌いせず、ぜひ読んでほしい)一冊でした。

青い万年筆

 

 22日は翻訳ミステリー大賞授賞式が東京で開催されました。地方からえっちらおっちら上京して、こっそり参加してきました。

 今年の大賞は、『その雪と血を』でした! 本賞は授賞式会場での生開票なので、目の前で大賞が決まって大興奮。しかも、自分が読者賞で一票を投じた作品が大賞を受賞したので(読者賞とのダブル受賞)、とてもうれしかったです。『その雪と血を』は、ことあるごとに勉強仲間や読書仲間におすすめしてきた作品なので、なんだか感慨深いものが……

 

その雪と血を

 

 授賞式では、対談あり、出版社対抗のイチオシ本バトルありと、盛りだくさんの内容で、駆け出し翻訳者としては、ひじょうに勉強になりました。一日で一気に「読みたい本」が増えて(増えすぎて)、途方に暮れています。

 

 数日前から読み始めて、東京に着く前に読み終わった本もミステリー。この作品を旅のお供にしました。

 

青鉛筆の女

 

青鉛筆の女』 

ゴードン・マカルパイン:著 古賀 弥生:訳

出版社の作品紹介ページ→東京創元社

 

 「凝りに凝った」という表現がぴったりはまる、説明するのがちょっと難しいミステリーです。ストーリーは、「A:タクミ・サトーという日系アメリカ人の作家による、日系アメリカ人(スミダ)が主人公のミステリー」、「B:その作家がウィリアム・ソーンというペンネームで執筆した、ジミー・パークという朝鮮系アメリカ人を主人公とするミステリー」、そして、「C:その作家とやり取りしていた、出版社の編集者からの手紙」という3つのパーツで成り立っています。章ごとに語り手や時間軸が変わるミステリーは多いですが、本来まったくの別物であるはずのAとBが、リンクしながら進んでいく展開は、なかなかスリリングでした。

 

 作品の時代は戦時中で、真珠湾攻撃以降、厳しい立場に立たされた新人の日系アメリカ人作家タクミは、作品を世に出すために、途中まで執筆が進んでいた、日系アメリカ人スミダを主人公とした作品(Aの元作品)を、朝鮮系のジミー・パークを主人公とする作品(B)へと、大幅に変更することを余儀なくされます。出版社の編集者から手紙(C)を介して様々なダメ出し、要求をつきつけられ、タクミはそれにひとつひとつ応じながら、作品を書いていきます。主人公の人種、キャラクター設定のみならず、作品のジャンル(ハードボイルドから低俗なパルプスリラーへ)も変え、あげくの果てにペンネーム(日系人だということを伏せるため)を使うよう迫られ、もう自分の作品とはとても言えないもの(B)を、ひたすら書き続けていく……そんなタクミの感情を想像すると、背筋が寒くなりました。

 こうして不本意な作品を「書かされて」いたタクミは、出兵後、戦地で「書きたいもの」を書くわけですが、それがAです。彼が主人公に選んだのが、Bを書くために「存在を消された」あの日系アメリカ人、スミダというのですから、作家の心情は推して図るべし、です。中断していたAを再び書き始めたともいえるのですが、最初に書き始めた頃とはタクミ自身を取り巻く状況が大きく変わっている。そこで、作品の世界も、中断したところから再開するにあたり「一瞬世界が暗転したかと思うと、何もかも変わっていた」という設定にします(このあたりはちょっとSF風)。

 当然、スミダにしてみれば、まったく訳がわからない状況に放り込まれてしまうわけで、作家が味わった理不尽な仕打ちが、フィクションという別の形で表現されているといってもいいでしょうか。AもBも、単独の小説としてみれば、ミステリーのジャンルに入ると思いますが、この『青鉛筆の女』という作品全体で考えると、最大のミステリーは「スミダがAで味わっている世界」ではないかと感じました。つまり、スミダにとってのミステリーなのではと。

 

 この作品、あまり複雑に考えて読んだり、深読みすると、逆に作品のいいところが見えなくなってしまう気もします。素直に、3つのパーツが交錯する虚構の世界にひたる、というのが正解なのかもしれません。

 

 ところで、アメリカでは、編集者が原稿に「青」を入れる(青いペンでコメントを書く)ので、「青鉛筆」になるようです。これが日本だと「赤」になるわけで、タイトルも「赤鉛筆の女」……なんだか「赤ペン先生」みたいでしまらない感じ。原題がWoman with a Blue Pencilなので、翻訳版のタイトルは直訳なんですね。今年の翻訳ミステリー大賞に選ばれた『その雪と血を』(原題はBlood on Snow)もそうですが、翻訳書を出版するうえで、タイトルの「引き寄せ力」は大きいなと思いました。

春の花

 

 気づけば、日本翻訳大賞が決定していました!!(詳細はこちら

 わたしは、大賞に選ばれた2作品とはまったく異なる作品に投票したのですが(残念ながら最終候補にもノミネートされず)、『すべての見えない光』を読んだとき(その感想はこちら)、長い長い話なのにどんどん読み続けられるということは、やはり言葉(翻訳)の力なのかなと感じました。この作品が日本翻訳大賞に選ばれて、とてもうれしいです。ほかの最終候補作は読んでいないのですが、いずれも素晴らしい翻訳作品だと思うので、機会があったら読みたいと思います(とくに『堆塵館』が気になります……こうして積読本が増えていく……)。

 ともかく、日本翻訳大賞受賞、おめでとうございます!

all_the_light

 

コーヒーと本

 

 先日、出版翻訳を勉強している仲間に声をかけて、リーディング勉強会を開催しました。講師をお招きするコネもないので、参加者がめいめいレジュメを作成し、そのレジュメをたたき台に、各自プレゼン、コメントしあうという形式でした。

 やってみて感じたのは、とても勉強になった!!ということ。これまで、リーディングの通信講座なども受講してきましたが、やっぱり「リーディングは原書を読んでなんぼ、レジュメは書いてなんぼ」なんだなと実感。

 こうした勉強会という形で、締め切りを作ってリーディングをするというのは、実際の仕事に向けての予行演習にもなりますし、モチベーションの面でも大きな刺激になります。そして、自分のレジュメを誰かに実際に読んでもらうという行為は、いい意味でプレッシャーになります。さらに、ほかの人が書いたレジュメを読むと、「こういう風に表現すればいいのか」「こんな工夫もできるんだ」といういろんな発見があります。お互いのレジュメの良いところを真似しあって、次の自分のレジュメに活かしていく。本当に有意義な勉強会でした。

 今回の勉強会用に、わたしはこちらの作品でリーディングしました。

 

The Buried Book  by D. M. Pulley

 

<ストーリー概要>

 1952年夏。デトロイトに暮らす9歳の少年ジャスパーは、ある日突然、母アルシアに田舎の伯父の農場へと連れていかれる。「伯父さんの言うことをよく聞いて、いい子にしているのよ」そんな言葉と、着替えと聖書の入ったトランクひとつを残して、母はどこかへ姿を消した。

 いい子にしていれば、きっとお母さんは帰ってくる。そう信じるジャスパーだったが、アルシアはいっこうに姿を現さない。なぜか警察も、その行方を追っている。実はアルシアには人に言えない過去があり、その過去が、いままた暗い影を落としていた。

 ジャスパーは、偶然見つけた母の古い日記を頼りに、母親の過去をたどりはじめる。そして、悲しみと汚れに満ちた大人の世界へと足を踏み入れる。違法行為、スキャンダル、殺人……。アルシアの身に何が起こったのか? ジャスパーは、母アルシアと再会することができるのか?

 

<感想>

 1950年代のアメリカ・ミシガン州の田舎を舞台にしたクライム・サスペンス。犯罪に巻きこまれた母を探す主人公の少年が、悲しみと困難に立ち向かっていく様子が描かれていて、少年の成長物語としても読むことができるなと思いました。長めの作品ではありますが、テンポよく話が進むので、最後までページをめくる手が止まることはなかったです。

 本作の最大の特徴は、アメリカの農村の暮らしや先住民との関係など、時代的、文化的な背景が色濃く表現されているところ。とくにジャスパーが預けられた農場でのエピソードは、物語の強いアクセントとなっています。

 ストーリーの軸となる母アルシアの過去や、現在軸で起こっている犯罪事件に、居留区や先住民といった存在がからむという構図。白人に搾取される先住民という構図を下敷きに、先住民たちのやるせなさや憤りも描かれていて、物語としての深みも感じられました。

 主人公ジャスパーには、過酷な現実が突きつけられます。都会の生活からある日突然農場に放りこまれるという設定もそうですし、肉体的、精神的に傷つく場面がこれでもかと用意されていて、若干九歳の少年が受ける仕打ちにしては、ひどすぎるような気も……ですが、ジャスパーがあらゆる困難を持ち前の賢さと機転、そして農場での生活で培われていく逞しさで乗り越えていく姿には感動を覚えました!

 ハッピーエンドというよりも、せつないラストなので、読者の好みも分かれそうです。でも、悲しみやせつなさという余韻を残すところも、この作品のひとつの魅力といえるかもしれません。ミステリー好きにはもちろんのこと、ヤングアダルト小説の愛読者にもお勧めしたい作品です。

 Amazon.comでも800件以上のレビューが寄せられているベストセラーなので(本作著者のデビュー作"The Dead Key"(2015)は、レビュー8000件以上で、星の平均4以上という高評価)、翻訳書が刊行されないかと、密かに楽しみにしているのですが、テーマ的に難しいかもしれません……。

 

<個人的な評価>星4


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