勉強する犬

 

 犬や動物をテーマとした洋書をたくさん読むようになって、普通の小説では見慣れない単語に出くわしたり、動物に対する概念の文化的違いに触れることも多くなりました。

 犬やコンパニオン・アニマルについての知識を深めつつ、関連する用語(英語)を学ぶことは、原書を読むだけでなく、出版翻訳の仕事をするうえでもプラスになりそうです(犬や動物がテーマの作品を翻訳したいという目標があるので、なおさら)。 

 それで、犬のことを英語で勉強できないかなと、以前から利用していた海外のオンラインコース(Courseraやedxなどの、無料で聴講できる海外のオンラインコース・プラットフォーム)を検索してみると、ありました! さっそくコース登録して、受講を始めました。

 

 いま受講しているのはこちらのコース。

 

◆The Truth About Cats and Dogs (Coursera)

 タイトルの通り、犬と猫について体系的に学べるコース。犬や猫の行動や認知能力を理解し、人間との関係やコミュニケーションをよりよいものにするにはどうすればよいかを考えていくことがテーマ。コンパニオン・アニマルに対して、人間が一方的に期待していることや、ペット観や動物観の文化的・地域的違いなど、興味深い内容がつまっています。

 イギリス・エジンバラ大学で「動物福祉」を専門とする教授陣が中心となり、5週間で修了するようカリキュラムが組まれています。学び方は、映像教材で知識を学び、ミニテストや課題で理解度を確認するという形式です。先生方だけでなく、そのペットも映像のなかにたびたび登場するので、観ていてとても楽しいです!

 ミニテストや課題の提出も含め、すべて無料で学べるところも素晴らしい(修了証の発行は有料)。犬や猫が好きで、英語のリスニング力を鍛えたいという人にはぴったりのコースじゃないかなと思います(わたしはイギリス英語が苦手なのですが、先生の英語は比較的聞き取りやすいです)。

 ◎コースはこちら→The Truth about Cats and Dogs

 

 Courseraであわせて聴講しているのが、こちらのコース。

 

◆Animal Behaviour and Welfare (Coursera)

 犬や猫にかぎらず、動物全般の福祉(Animal Welfare)にフォーカスしたコースです。コンパニオン・アニマル(ウサギやその他のペットも含む)、家畜、動物園で飼育されている動物と、さまざまな立場の生き物の福祉やよりよい狎賢瓩砲弔い童‘い靴泙后F以福祉とは何か、動物福祉について考えることが人間にとってなぜ重要なのか、世界の現状はどうなっているのか、といった、よりシリアスな問題を取り扱ったカリキュラムです。

 上記のコース同様、エジンバラ大学が作成・運営しています。こちらは7週間のコースで、同じく(基本的に)無料。内容は少し難しいかもしれませんが、頑張って聴講していきたいと思います。

 ◎コースはこちら→Animal Behaviour and Welfare

 

 もうひとつ、Courseraで受講できる犬関連のコースを発見。

 

◆Dog Emotion and Cognition (Coursera)

 こちらのコースは、認知科学、認知心理学的アプローチで、犬の行動や感情を読み解こうというもの。犬の能力を理解し、犬との生活や関係を、人間・犬(ペット)双方にとって望ましいものへと改善するヒントが学べます(といっても単にしつけの方法を学ぶのではなく、より学術的な内容になっています)。

 コースを担当するのは、アメリカ・デューク大学のBrian Hare先生(進化人類学が専門)。犬に関する著作もお持ちで(『あなたの犬は天才だ』早川書房)、"Dognition"(DogとCognition、つまり「犬と認知」をかけ合わせた造語)というサイトも運営されています。サイトでは「あなたの犬の賢さを測定」できるとか!

 ◎コースはこちら→Dog Emotion and Cognition

 

 Couseraばっかりですが、オンラインコースを提供しているプラットフォームはほかにもあるので(Future Learnなど)、探せば犬がらみのオンラインコースが見つかるかもしれません。日本でもこういったオンラインコースはあるんでしょうか? 

犬たち

(犬って、大きくても小さくても犬なんですよね……当たり前ですが。)

 

K9ユニット(警察犬チーム)もののミステリーを読了。

 

 

◆Killing Trail: A Timber Creek K9 Mystery by Margaret Mizushima

著者マーガレット・ミズシマさんのウェブサイト→Margaret Mizushima Official Site

 

 K9ユニットが活躍する海外ミステリーといえば、翻訳書ではロバート・クレイスの爛好灰奪函マギー瓮轡蝓璽困頭に思い浮かぶのですが、こちらのシリーズもとてもおもしろく、愛読シリーズに仲間入りしました!

 

 コロラド州ティンバー・クリーク郡のK9ユニットとして活動する、保安官補でハンドラーのマッティと、警察犬(ジャーマン・シェパード)のロボのK9ユニットが活躍するミステリーです。山中で少女の遺体が見つかり、殺人事件として捜査が開始されるのですが、事件には、郡内に密かにはびこる麻薬取引が絡んでいるらしい……という展開。

 

 主人公マッティは、ハンドラーとしても、保安官としてもまだまだこれから、というキャラクター。競争を勝ち抜いてハンドラーに選抜されたこともあり(直属の上司がライバルだった)、いきおい肩に力が入っていますが、自分の弱いところは素直に認め、失敗を活かしつつ、まっすぐに任務に取り組もうとします。その姿に、すっと感情移入できました。マッティが相棒のロボと一緒に成長していく過程も、このシリーズを読む楽しみになりそうです。

 

 このシリーズでは、爛好灰奪函マギー瓮轡蝓璽困離泪ーのような犬視点の章や描写はなく、あくまでマッティから見たロボ、というスタンスで描かれています。「マッティがロボをどこまで信頼できるか」が鍵になるのですが、ロボはそのマッティの信頼に応え、クライマックスでも大活躍!

 

 マッティを取り巻く人たちも、いい味を出しています。ハンドラー選抜試験でライバルだった上司ブロディは、(マッティに負けたことが悔しくて)上司という地位を振りかざしてくるいやな奴という印象だったのですが、実は仕事熱心で、何気にかわいい一面もあったりして、後半は見直しました。

 事件にかかわる犬を治療し、ロボの担当医にもなる獣医のコールは、マッティの次に、内面や人間性が濃く描かれた登場人物です。ふたりの娘(ひとりはまだ幼い)を抱えて奮闘するシングルファーザーでもあり、マッティは彼のことが気になる様子。今後の作品で、マッティとコールの関係が深まっていく可能性がありそうです。

 

 コールが診察にあたるシーンの描写が妙に細かいと思ったら、著者マーガレットさんの配偶者は獣医なんだそう(お名前からして、日系の方でしょうか)。マーガレットさんも、夫のクリニックを手伝っているということなので、どうりで詳しいはずです。

 

 激しいアクションシーンや、度肝を抜くようなどんでん返しはないのですが、そのぶん落ち着いて読める作品だと思います。マッティを取り巻く人間が、基本的には「善良な人」ばかりなので、ドロドロした陰湿なミステリー(笑)に少々嫌気がさしていた私には、ぴったりな一冊でした。

 続編が2冊刊行されているので、続いてそちらを読むつもりです。翻訳書が出版されるといいのですが、原書はシリーズ三作目まで刊行されているのに出ていないということは……あまり期待できないかもしれません。自分が訳したい! とここは言ってしまおう!

 

 ずいぶん昔、コロラド州近隣に数年間住んでいたので、この作品に漂うロッキー山脈地帯の地方色が、読んでいて妙に心地よかったです。わたしが住んでいたのも山の近くで、自然に囲まれた町だったので(人間よりも羊の数が多い、なんてジョークも飛ばしていたほど)、なんだか懐かしい気分になりました。

 

 ロボやマギーのように、K9(警察犬)に選ばれる犬種は、アメリカではジャーマン・シェパードなど大型犬が主流です。シェパード以外だと、ビーグル、バセット・ハウンド、ブラッド・ハウンドといった犬種も活躍しています。小型犬種が警察犬になることは稀ですが、最近では日本でも、プードルやミニチュア・シュナウザー、パピヨンなどが警察犬に倏ぬ伸瓩気譟∀誕蠅砲覆蠅泙靴拭

 アメリカのオハイオ州でも、2006年、ミッジという、とても小さな犬(チワワとラット・テリアのミックスで、わずか3kgという小ささ!)が警察犬となり、その年のギネスブックに「世界最小の警察犬」として掲載されています。

 これがそのミッジちゃん。

 

サービス犬

 

「聴導犬」(Hearing Dog)が出てくるミステリー(原書)を読みました。

 

 

Not A Sound by Heather Gudenkauf

 

 主人公のアメリアはある事故が原因で聴覚を失い、生活が一変。アルコールに溺れ、家族(夫と夫の連れ子である娘)との関係もうまくいかなくなり、小さなコテージで一人暮らしています。そんなアメリアの支えとなっているのが、聴導犬のステッチ(Stitch)です(爛好謄奪銑瓩浪我の傷跡からついた名前)。

 アメリアは殺人事件の第一発見者となるのですが、事件の裏にある秘密を知り、独自に調査を開始します。それに気づいた犯人から、姑息な手段で追いつめられていく……という、ちょっとイヤミス的な展開もあります。アメリアが元看護師、夫も医師、再就職した職場も病院、事件の謎も医療にからんでいて、「医療」や「医師の倫理」がテーマにもなっています。

 

 聴導犬のステッチ、きりっとした「お仕事犬」を想像していたんですが、読んでみると、ちょっと違いました。アメリアの命令を聞かなかったり、落ち着きがなかったりと、半人(犬)前?なところも。でも、アメリアのために最後は大活躍します!

 

 すでに何作かサスペンス系の作品を発表している作家だけあって、ストーリーの展開がスムーズで、なかなか読みやすい作品でした。ややパンチというか、強烈なインパクトに欠ける印象もありますが、主人公が「音のない世界」に住んでいることも、静寂な雰囲気に影響しているのかもしれません。

 本作はGoodreadsやAmazon.comではそれなりにレビューがつき、評価も割と高めのようです。

 

 ステッチのような聴導犬、そして盲導犬(Guide Dog)といった「補助犬(Service Dogs)」が出てくるミステリーは、初めて読みました。

 "Not A Sound"の舞台はアメリカのアイオワ州。アメリカでは、たくさんの補助犬が活躍しています。

 American Kennel Clubサイトで補助犬のことを調べてみると、興味深い記事を見つけました。

 

”Service Dogs Have Emotional and Psychological Benefits, Researchers Say”

 

補助犬は、身体機能面(視覚や聴覚)で使用者を助けるだけでなく、使用者の精神面にも良い効果を与える」ことが、アメリカのパデュー大学が行った調査により明らかになったという記事です。

 調査は4年間かけて実施されたもので、1500人以上の補助犬使用者・順番待ちの希望者に対するインタビューも含まれています。

 調査の結果、補助犬使用者は、順番待ちの希望者に比べて、より精神的に安定しており、社会適応性が高く、職場や学校でもうまくやっているということが判明したのだとか(使用者本人だけでなく、その家族にも良い影響が見られるそうです)。

 こうした補助犬の精神面での効果は大きく、アメリカでは実際に、退役軍人の方など、トラウマ症状に苦しむ人のための補助犬(精神科補助犬・Psychiatric Service Dog)も活動しています。

 

 補助犬についてまとめたページもありました。

 

”Service, Therapy, and Working Dogs”

 

 補助犬だけではなく、「使役犬(Working Dog)」の情報も。「トコジラミ探知犬(Bed bug-detector dog)」なんていう使役犬もいるとは知りませんでした!

 子供のころから、大きな犬を飼うのが夢でした。10代の頃に、ゴールデン・レトリバーを家族に迎えて、夢は叶ったのですが(うちの子はちょっと小ぶりでしたが)、とことん大きな犬を飼いたいという気持ちは今もあります。

 大型犬のなかでも、わたしの憧れは、アイリッシュ・ウルフハウンド(全犬種の中で、体高が最大の犬)、そしてなんといっても、ニューファンドランドです。あの"droopy"(垂れ下がった)目と、堂々たる体躯に、なんとも言えないやさしい雰囲気……最高です。

 

 そのニューファンドランドが登場するノンフィクションを読みました。飼い主に捨てられたニューファンドランドを、シェルターから引き取った男性の自伝です。

 

 

Free Days with George by Colin Campell

 

 

表紙のニューファンドランド・ランドシーア(白黒のニューファンドランド)が、著者コリンさんの愛犬ジョージ君。いろいろあって、人生のどん底にいたコリンさん。広い家にひとり暮らしだったコリンさんを心配した友人が、犬を飼うことをすすめます。シェルターから引き取ってはというアドバイスにしたがって、見つけたのがこのジョージ君でした。

 ジョージ君も、飼い主に飼育放棄され(番犬にと飼ったけれど、番犬にならなかった、という理由で……ニューファンドランドは性格的に、そもそも番犬向きではありません)、心に傷を負っていました。こうして、ひとりと一匹は一緒に暮らすことになったのです。ともに立ち直るために。

 

 コリンさんはカナダからアメリカに転勤となり、引っ越したのは目の前が海岸!というロケーション。そこでジョージ君の血が騒ぎます。ニューファンドランドは、カナダのニューファンドランド島原産の犬種で、水の大好きな犬(足にはなんと、水かきがある!)。泳ぎが得意で、海難救助犬としても活躍しています。海に本能をかき立てられたジョージ君は、コリンさんとサーフィンを始め(教えてもいないのに、ボードの上に乗ってきたとか)、たちまちビーチの人気者に。

 

 と、ジョージ君のサーフィンの話が出てきますが、それがメインではなく、ジョージ君がいかに傷ついた犬だったか、ふたりがどうやって信頼を築いていったかということが、大げさではない、誠実な言葉で綴られています。

 

 タイトルの"Free Day"というのは、コリンさんのおじいちゃんの言葉で、「一日中、大好きな人と一緒に、何でも好きなことをする日」で、その日は「決して年を取らない」と。素敵な言葉だなと思いました。

 

 コリンさんの気取らない語り口がとても読みやすく、ノンフィクションですが小説のように楽しく読めました。犬好き、とくに大きな犬が好きという人や、保護犬に興味がある人に、ぜひ読んでいただきたい作品です。

 

ニューファンドランド

(ニューファンドランド。もふもふです。)

 海外の犬情報を集めるのに、信頼できるサイトとしてよくチェックしているのが、American Kennel Clubのサイト。とてもおしゃれで、情報の見やすいサイトです。興味深い記事がたくさん掲載されていて、会報誌のデジタル版も閲覧できるので、見始めるとついつい長居してしまいます。

 

 そのAKCのサイトで、おもしろいクイズを見つけました。「わんことおうちのマッチングをしよう」というもの。家の写真が出てくるので、その家で暮らすのにぴったりなわんこを4択で選んでいきます。日本ではあまりなじみのない犬種も登場するので、答え合わせが楽しいです!

 

 クイズはこちら→Quiz: Can You Match the Dog to His Home?

 トライしたら、8割がた正解でした。

 

 イギリスのとある宮殿に住む犬と言えば……?

 

コーギー

天使

 

 書評サイトGoodreadsの"Dog"カテゴリーで、つねに"Most Read This Week"に表示されている作品があり、ずっと気になっていたのですが、お盆に読了しました。

 

Faithful  by Alice Hoffman

 

  ロングアイランドに住む女子高生のシェルビーは、ある冬の日、車の事故を起こし、一命はとりとめたものの、助手席に乗っていたヘレネは昏睡状態となってしまいます。シェルビーは罪悪感にさいなまれ、心に深い傷を負うのですが、そんなシェルビーが前を向いて生きていけるようになるまでを描いた物語です。

 

 事故のとき、シェルビーは「天使」の姿を見ます。自分は、天使に助けられた。でもどうして、ヘレンを助けてくれなかったのか。そんなシェルビーの心の叫びに答えるように、シェルビーのもとに、天使からメッセージが届くようになります。差出人不明の絵葉書が、一枚、また一枚と舞い込むのです。書かれているのは、いつも一言だけ。「気持ちを声に出すんだ(Say something)」というような。

 シェルビーは、思い切って家を出て、大都会のペットショップで働き始めます。シェルビーに人間らしい、温かい感情をよみがえらせたのは、犬であり、人でした。そして、絵葉書のメッセージに導かれるように、前へと進んでいきます。

 

 シェルビーが犬や猫を助ける場面が何度か出てきます。助け方はちょっと(というかかなり)強引。助けた犬の世話をし、命に責任を持つということが、シェルビーを立ち直らせるきっかけになったのでしょう。

 

 「奇跡」「天使」といったスピリチュアルな要素もありますが、あくまで、シェルビーというひとりの少女の再生と成長がテーマです。ヤング・アダルトのカテゴリーに入れてもよさそう。文体も平易で読みやすく、ストーリーはこびも安定しているので、少し長めの洋書にチャレンジしたい、一冊読み切ってみたい、という人におすすめしたい作品です。

セキレイ

(Wagtail:セキレイ)

 

「犬&猫もの」のコージー・ミステリー・シリーズの第一弾を読みました。

 

 

Murder, She Barked by Krista Davis

 

 ワシントンD.C.で暮らす主人公ホリーが、愛するオーマ(オーマ(Oma)はドイツ語で「おばあちゃん」。オーマはドイツ出身で、アメリカに移住しているという設定)から急な電話で呼び出され、故郷のヴァージニア州ワグテイルまで車を飛ばす、というところから物語がスタート。その道中、犬(ジャックラッセル・テリア。これが表紙の犬で、名前は「トリクシー」)を拾ったり、炎上する車を目撃したりと、序盤から盛りだくさんな感じでワグテイルに到着。

 ワグテイルは「ペット・フレンドリー」をうりにしている保養地で、オーマはペット・オーナーに大人気のホテル経営者です。オーマが誰かに命を狙われているらしいので、オーマを守るため、ホリーはワグテイルに留まることにするのですが……。

 その後、ホリーの恋人ベンと、ベンの昔の彼女キムが現れてやきもきし、幼馴染のホームズに思わずときめき、殺人事件が起こり(これがメイン)、トリクシーが行方不明になり、ホリーが素人探偵をはじめ……と、コージーお約束の畳みかける展開が続きます。少し話が掴みにくいところもありましたが、プロットはしっかりしていて、いろいろと張られた伏線も最後にきちんと回収され、「あの話は何だったのか?」ということもなかったです。

 

 コージー・ミステリーといえば、「絵はがきのような田舎の村」が舞台になることも多いですが、本作の舞台のワグテイルも、自然あふれる美しい村です。ペットで町おこしをしているという設定で、ホテルもレストランもショップも、町中どこでもペットOKの、まさにペット・パラダイス。オーマのホテルの部屋も、ペットのおやつやおもちゃが用意され、至れり尽くせりです。レディースフロアならぬ、猫専用フロアみたいなのもある! 宿泊ペットには、GPSつきの首輪をつけることになっていて、万一迷子になっても探せるようになっていたり(このGPS首輪が事件解決に一役買うことに)となかなかに細かい!

 

 トリクシーと、トゥインクルトウ(表紙の三毛猫)が、いちおうメインの動物キャラクターで、そのほかにも、ジンジャースナップ(オーマの飼っているゴールデンレトリバー)などなど、犬や猫がたくさん登場します。本作はPaws and Claws Mystery瓠米球と爪、つまり犬と猫?)というシリーズの第1作で、トリクシーたちも、これからだんだんと活躍の場が増えていくのかもしれません。

 

 書評サイトGoodreadsでは、5作ともそれなりの数のレビューがついていて、評価もすべて星4以上なので、完成度やおもしろさも安定しているシリーズのようです。

 

 この作家さん、別のコージー・シリーズも発表していて、そちらは翻訳版が出版されています。主人公が「家事アドバイザー」というちょっと変わった設定で、愛読していました。翻訳版の続きが出ないか楽しみにしているのですが……。

 

 

感謝祭は邪魔だらけ

クリスタ・デイヴィス:著、島村浩子:訳

シェパード

 

 世の中には犬好きも多いので(最近は猫人気に押され気味ですが)、犬が主人公の本・犬が登場する本には一定の需要がある気がします。ということで、海外のすばらしい「犬本」(勝手にジャンル化)との出会いを楽しみに、読書に励んでいます。

 前に「名犬チェットシリーズ」のことを書きましたが、「犬ミステリーといえば、忘れちゃいけない」という作品があります。それがこちら。

 

 容疑者

◆『容疑者』 

ロバート・クレイス:著 高橋恭美子:訳

 

 刑事スコット&シェパート犬・マギーのコンビのシリーズ第一作。警察もの(K9、つまり警察犬をパートナーとする部隊)で、語り口もストーリーもやや硬派ですが、犬の描写になると、なんだかぐっと柔らかくなる気がします。作者の犬への愛情?でしょうか。

 マギーの視点で書かれた章は、犬派の人間にはたまりません。マギーは軍用犬で、戦争でパートナーを失い、心身ともに大きな傷を負います。そのマギーが、同じように傷ついたスコットと出会い、一緒に再生していく様子が描かれていて、「マギー、がんばって!」(スコットは?)と、読みながら心の中で応援していました。マギーにとって、スコットは家族であり、ボスであり、生きる理由であり……とにかく、すべてなんです。そんなマギーのひたむきさが、シリアスでハードボイルドな内容に人間らしい(犬だけど)ぬくもりを添えてくれています。

 

 この作品、犬の行動、とくに嗅覚の描写がすばらしいです。この作品を読めば、犬がどんなふうに「におい」を嗅いでいるのか疑似体験できます。うちの子たちと散歩に出たときに、飽きもせずにおいをかぎまわる姿をしげしげ眺めてしまいました(人間が臭いと感じるにおいが、この子たちにはいい匂いだったりするんですよね……)。うちには超シニア犬もいるのですが、においだけは敏感、というか健在です。床に落っこちたフード一粒、見逃し(嗅ぎ残し)ません。

 

 チェット・シリーズのチェットは、「ぼく」と一人称ですが、こちらのマギーは三人称で語られています。どちらの作品も、犬については「本気かつ真面目」に描いているので、犬好きさんも納得・満足できると思います。個人的には、チェットの「ちょっとぬけてる感じ」が好きなんですが、マギーも大好きです。

馬

 

 犬ミステリー、猫ミステリーときて、馬ミステリーを立て続けに読みました。

 

 犬ミステリーはこちら。

 

その犬の歩むところ

その犬の歩むところ』 

ボストン・テラン:著、田口俊樹:訳


 

 猫ミステリーはこれ。

 

書店猫ハムレットの休日

書店猫ハムレットの休日

アリ・ブランドン:著、越智睦:訳

 

 コージー・ミステリーはシリーズものが多いですが、読み続けていたシリーズでも、途中で読まなくなってしまうこともあります。こちらの「書店猫シリーズ」は、この作品で三作目ですが、いまのところ第1作目から続けて読んでいます。

 主人公が経営しているのが書店というところもツボですし、120パーセント犬派のわたしも、クールな黒猫ハムレットにはやられっぱなしです。今回は「全米キャット・ショー」にハムレットがゲストとして参加する、というストーリーでした。「ドッグ・ショー」が舞台のミステリーは読んだことがありますが、「キャットショー」ははじめてです。

 コージーお約束のドタバタ感がほどよいところがお気に入りのシリーズです。

 

 そして馬が出てくるミステリー。

 

とろとろチーズ工房の目撃者

とろとろチーズ工房の目撃者

ローラ・チャイルズ:著、東野さやか:訳

 

 こちらも、第1作目からシリーズ通しで読んでいるコージー・ミステリー(前作はこちらで紹介しています)。

 いつもながら、主人公(探偵役)スザンヌが経営するカフェ「カックルベリー・クラブ」は大繁盛。ハロウィンのイベントがあったり、毛糸売りのトラックが登場したり(読んで字の通り、トラックを店舗に移動販売をしている毛糸屋さん)と、ミステリー以外のカルチャー要素が満載で、そこがこのシリーズのいちばんの魅力かなと思っています。

 スザンヌは愛馬家(&愛犬家)なのですが、本作では馬がらみの事件が発生。表紙にもいますが、牛も出てきます! スザンヌは前作で医師のサムと婚約し、結婚を控えているのに、殺人が起こったらその準備にも身が入らない……というのがスザンヌらしくもあるのですが、ちょっと婚約者がかわいそう? ロマンスも入れつつ、ちょっとしたアクションもあって、でも全体的に落ち着いた雰囲気で、本作も安定感抜群の「大人のコージー・ミステリー」でした!

 

 コージー・ミステリーはいくつかのジャンルに分類できると思うのですが、わたしのなかでは、

 

・動物もの(犬や猫が登場する、あるいは主人公)

・職業もの(主人公が本屋、カフェ、スイーツのお店、チーズの専門店、スープの専門店(?)、アンティークショップ、ゲストハウス、ペットグッズのお店などを経営していたり、シェフやパティシェ、作家、芸術家だったりする)

・趣味、カルチャーもの(編み物やパッチワーク、お菓子作りなど、主人公の趣味がストーリーにからんでくる)

・歴史もの(貴族やメイドが登場するような、時代設定が古いもの)

 

といったジャンルが思い浮かびます。ミス・マープルのような、いわゆる普通のおばあちゃんが主人公のコージーもありますが、最近の作品では、主人公(女性の場合がほとんど)が何らかの職業を持っている作品が大半を占めている気がします。自分のやりたいことを職業にして奮闘している主人公に励まされることも多く、それがコージーを読む楽しみのひとつになっています。

 翻訳されてほしいシリーズや、続きが読みたいのに翻訳書が出なくなったシリーズもあるので、いちコージーファンとして、いろんなシリーズを読み続けることで、このジャンルを応援していきたいです。

オオカミ

(オオカミ。凛々しい立ち姿。)

 

 

Say Goodbye For Now by Catherine Ryan Hyde

 

 テキサス州の小さな町のはずれで、傷ついた動物を保護し、世話をすることを生きがいに、ひっそりと暮らす女医ルーシー。傷ついた一匹の犬(プリンス)と出会った少年ピート。この三者の不思議な縁が、厳しい現実のなかで育まれていく様が描かれています。

 プリンスはハーフ・ウルフ(犬とオオカミのハイブリッド)で、ピートが名づけました。残念ながら、期待していたよりもプリンスの存在感が薄かったのですが、ピートがプリンスと出会ったことで運命の輪が回りはじめるので、プリンスあっての物語だと思います。なにより、ピートとプリンスの絆には心温まるものがありました。プリンスは半分犬といってもほぼ野生なので、飼いならすことはできず、傷が癒えたら野に帰る存在。でも、それでピートとプリンスの関係が終わったわけではなく……というところに、ぐっときました。

 

 タイトル通り、ルーシーやピートはいくつかの爐靴个靴諒未譟goodbye for now)瓩魴亳海靴泙后J語の背景となる時代設定が現代よりも少し古く、人種差別や親子の関係など、決して明るくはないテーマがからんでくるのですが、ルーシーとピートが互いにはげまし、支え合い、希望をもって力強く生きていく姿にはすがすがしさを感じました。

 

 数十冊のベストセラー(しかも、どの作品もレビューでひじょうに高い評価を獲得しています)を世に送り出している作家さんだけあって、ストーリー運びが安定しているところも、読みやすさにつながっているでしょうか。まさに王道のFeel-good storyで、読後感はとてもよかったです。

 

 この作家さん、動物が登場する作品を多数発表しています。こちらもそのひとつ。

 

(こういう表紙に、犬好きはやられてしまうんですよね……)


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