救助犬

(山岳救助犬?)

 

The Darkest Thread by Jen Blood

 

 表紙から想像がつきますが、探索救助犬が登場するミステリーです。アメリカ・バーモント州で少女2人が行方不明になり、ドッグトレーナーで救助犬のハンドラーである主人公ジェイミーと、パートナーのファントム(犬)のところに捜索協力の依頼がきます。この2人の少女の叔母が10年前に殺されていたこともあり、FBIが指揮をとる大掛かりな捜索が行われていました。さらに、ほかの少女行方不明事件と関連している可能性も浮上し……。

 と、背景設定としてはありがちな感じもしますが、主人公とその息子ベアに特殊能力(ほかの人には見えないものが見え、聞こえない声が聞こえる、という霊能力?)があるというところが、この作品のオリジナリティ。著者はベストセラーのシリーズを書いていますが(サイコスリラー系?)微妙に本作とつながっているというか、本作がスピンオフのようです。

 

 前半はなかなか読書エンジンがかからなかったのですが、捜索の場面の描写や、ジェイミーの奮闘する姿にひきこまれて、後半はギアチェンジで一気読みでした。主人公とその息子が持つ特殊能力のインパクトがやや弱い気もしました。もっとぞくっとさせてくれてもよかったのかな?と。まあ、あまりスーパーナチュラルな部分を強調してしまうと、ミステリーじゃなくてホラーになってしまいますが。

 

 ファントムたち探索犬たちの活躍のほうは、しっかりと描かれていました。同じ犬ものミステリーのロバート・クレイスの「マギー」とか、個人的に「推し犬ミステリー」にしているマーガレット・ミズシマの「ロボ」にはまだまだ負けるかな……。

 

 いわゆる使役犬は、犬の鋭い嗅覚を活かして任務にあたることが多いようです。犬の嗅覚や能力がテーマのノンフィクションもたくさん出版されていますが、なかでもベストセラーになった、Inside of a Dog: What Dogs See, Smell, and Know(翻訳版は『犬から見た世界』)の著者アレクサンドラ・ホロウィッツさんが、「嗅覚を活かしてはたらく犬」について語ったラジオ番組を見つけました。

 

NPR:From Fire Hydrants To Rescue Work, Dogs Perceive The World Through Smell

 

 いろんな現場や状況ではたらく犬がいることが、よくわかります。

 ホロウィッツさんの新しい本が出ていました(だいぶ前ですが……)。

 

Being a Dog by Alexandra Horowitz

 

はたらく犬といえば、これもそう?

犬ぞり

ビーグル

(ビーグル。詩集の表紙の犬に似てるかなと。)

 

 年末年始に、こちらの詩集を読み終わりました。

 

Dog Songs by Mary Oliver

 

 タイトル通り、犬について詠った詩(と短いエッセイ)がつまった詩集です。著者のメアリーさんが、いかに犬を愛しているかが伝わってきて、しみじみと共感しながら読みました(メアリーさんは、犬の存在そのものが「詩」だと言ってます)。なかでも、わたしが好きな詩の一節がこちら。

...all of the sights I love in this world―and there are plentyーvery near the top of the list is this one: dogs without leashes. 

("If You Are Holding This Book")

 

(この世界には、愛すべき光景があふれている。そのなかからひとつだけ選ぶとしたら、わたしはこう答えるだろう。それは、リードから解放された犬の姿だと。)

「リードをつけずに走り回る犬の姿」って、たしかに見ているこちらも幸せになる光景ですね。もう、犬のテンションが違うんです!

 

 この詩集の詩はどれも平易な言葉で綴られていて、難解さはまったくありません。メアリーさんは、詩人ならではの観察眼と想像力で、犬のなにげないしぐさ、生活の一場面を切りとり、躍動感とユーモア、命の輝きにあふれる詩へと昇華しています。本のなかで、美しい言葉、心に残る言葉に、いくつも出会うことができました。

Dog is docile, and then forgets. Dog promises then forgets.

("Dog Talk")

 

(犬は従順だけれど、すぐ忘れる。犬は約束するけれど、それもすぐ忘れてしまう。)

「わかった!」「もうしません!」とか言って、すぐ忘れるのはうちの子の得意技です。

 

We would do anything to keep them with us, and to keep them young. The one gift we cannot give.

("Dog Talk")

 

(犬とずっと一緒にいるためなら、この子たちを若い姿のままとどめておけるなら、なんだってするだろう。でもそれは、決して与えることのできない贈り物なのだ。)

 犬好きだけでなく、動物や自然を愛する人にぜひ読んでほしい詩集です。

 

 *残念ながら、2019年1月、詩人Mary Oliverさんはお亡くなりになりました。83歳だったそうです。

 

 そういえば、去年購読手続きをした雑誌が、ようやく届きました。

 

Bark 2017 winter

(写真はBark Magazineのサイトからお借りしました。)

 

 届いたのは、刊行20周年の記念号でした。日本にも犬やペットの雑誌はたくさんありますが、Barkは結構社会派な記事が多いようです。薄い雑誌ですが、中身もペットフードなどの広告ばかりじゃなくて、記事満載で読み応えがあります。日本のペット雑誌や会報誌(日本動物愛玩協会)も愛読しているので、読み比べると、日米のペット事情の違いなどがわかって勉強になりそうです。

robin

(鳥って、正面から見ると愛嬌ありますね。)

 

 クリスマスは終わりましたが、「自分へのクリスマスプレゼント」という名目(言い訳)で取り寄せた本を、次は読みたいと思います。

 まずはこちら。

 

Dog Songs by Mary Oliver

 

 ピューリッツァー賞も受賞した詩人による、「犬」がテーマの詩集です。挿絵に登場する犬がどの子も愛らしくて、思わずほほえんでしまいます。味のある、繊細なタッチで描かれていて(表紙の犬もそのひとつ)、部屋に飾りたいくらい。

 普段から詩をたしなむわけではないので、解釈に難ありですが、どの詩も「犬」を詠ったものなので、感覚で理解できるかな?と。

 

 メアリーさんご本人が、Dog Songsの一編を朗読している映像を見つけました!

 

 

*2019年1月、詩人メアリー・オリバーさんは死去されました。ご冥福をお祈りいたします。

 参考記事:ピューリッツァー賞受賞の詩人メアリー・オリヴァーさんが死去(@niftyニュース)

 

 

 もう一冊、クリスマスの日に届きました。こちらの作品、とても大きな本で、届いたときは、いったい何が来たのか?とあせったほど。

 

The Lost Words by Robert Macfarlane Illustrated by Jackie Morris

 

 本を注文するとき、寸法などは基本チェックしないのですが、この本の大きさにはびっくりでした。縦が40cmくらいあります。著名な作家とイラストレーターがコラボレーションした、とても美しい作品です。「Aは〜のA、Bは〜のB……」と続く、いわゆるABCブック(スペルブック)ですが、詩のような言葉と、自然をありのままに描いたイラストは、まさしく「大人の絵本」と呼ぶのにふさわしいと思います。イラストのタッチが少しワイルドで、それもナチュラルな雰囲気を演出しています。

 タイトルの"The Lost Words"は、さまざまな言葉が時代の流れのなかで失われていく(使われなくなっていく、自然から姿を消していく)ことに、警鐘を鳴らす意味もあるようです。「失われし言葉を探して」という日本語のタイトルが頭に浮かびました。

 

 こちらも、著者自ら朗読している映像を見つけました。インタビューのようですが、「言葉」「意味」「名前」といったことに対する著者の思いが語られています。

 

 

どちらも、年末年始にゆっくり楽しみたいと思います!

 ホリデーシーズンにぴったりの読み物をと思い、読み始めたこちらの作品。なんとかクリスマスの日に読了しました。

 

Not a Creature was Purring by Krista Davis

 

 シリーズものの、最新作(第5作)で、第1作しか読んでいませんでしたが、話についていけない、ということはなかったです。むしろ、間に3作あるのか?というくらい、登場人物の関係や物語の背景に変化が見られず……。

 

 このシリーズは雰囲気の良さが好きなのですが、本作もピクチャレスクな町ワグテイル(アメリカのバージニア州)のリゾートホテルを舞台に、ペット(犬&猫)が山盛り登場するという、読んでいて楽しいお話でした。主人公ホリーは、第1作で都会での仕事を辞め、ワグテイルに戻り、実家のホテルの共同経営者(ホリーの祖母が経営しているホテル)になります。このホテルがペットに至れり尽くせりと、夢のようなホテル。ワグテイル自体、ペットで町おこしをしている、完全ペットフレンドリーな町です。

 そのクリスマスムード一色のワグテイルで、殺人事件が起こります。ホリーが思いを寄せる幼馴染のホームズが、婚約者とその家族を連れて、ワグテイルでクリスマスを過ごすことになり、ホリーもやりきれない感じだったのですが、殺人事件でそれどころじゃなくなり……と、事件×人間関係×ロマンスという、これぞコージーミステリーな展開。

 コージーの割に(?)、どたばたしすぎない、落ち着いた雰囲気があるシリーズですが、今回は少々読みづらかったです。とにかく、登場人物が多い&複雑すぎる!ホームズの婚約者の家族というのが「曾祖母、その息子(祖父)、その再婚した妻(祖母)、息子の娘(母)、その夫(父)、その娘(これが婚約者)、祖父が再婚した妻の息子(父)、その妻(母)、その息子&娘」という、書いていてもよくわからなくなる、4世代、実・義理家族入り乱れての構成。こんがらがって仕方ありませんでした。さらに、ホリーやホームズの家族、ホテルの従業員、町の人たちも登場し、サイドストーリー(本筋とちゃんとつながります)も進行していくので収集が……。

 

 とはいえ、こういう盛りだくさんなところがコージーミステリーの醍醐味ですし、そのぶん読み応えは抜群です。なにより、ホリーの愛犬トリクシーと愛猫ティンクルトゥが活躍する場面が多かったのが◎でした!

 

サンタクロース

 

 季節はクリスマス! ホリデーシーズンの読み物といえば、コージー・ミステリーで決まりです(?)。

 いろいろ魅力的なクリスマス・コージーがあって悩んでしまいますが、こちらを選びました。

 

Not a Creature was Purring by Krista Davis

 

 A Paws & Claws Mysteryシリーズの第5作。第1作を読んで、好きになったシリーズです。第2〜4作は読んでませんが、スタンドアローンとして読んでも大丈夫、というレビューがあったので、問題なさそうだと判断。表紙のトリクシー(犬)とティンクルトゥ(猫)のイラストに、やられてしまいました!

 

 こっちも気になったのですが……。

 

Rest Ye Murdered Gentlemen by Vicky Delany

 

 年中クリスマス一色、というニューヨークのルドルフという町が舞台の、こちらもシリーズもののコージー・ミステリーです。翻訳版が、なんと先月出版されていました!

 

『クリスマスも営業中?』

ヴィッキ・ディレイニー:著、‎ 寺尾 まち子:訳

 

 出版社はもちろんコージーブックスさん。さすが、このシーズンどんぴしゃなコージーを翻訳出版されています!

 

 気になる作品、まだまだあります……。

 

A Cajun Christmas Killing by Ellen Byron

 

 こちらのシリーズ、第1作のBody on the Bayouが2016年のアガサ賞のショートリストにノミネートされていました。Cajunというのは、「北米にあるフランスのアカディア植民地に居住していたフランス系カナダ人の人々のうち現在の米国ルイジアナ州に移住した人々とその子孫」(Wikipediaからの引用)を指す言葉で、シリーズの舞台もルイジアナ州。アメリカ南部の雰囲気が味わえる、個性的なコージーミステリーのようです。アガサ賞ノミネ作家だけあって、レビューサイトでの評価も高いので、ぜひ読みたいシリーズです。これまた、表紙の犬がなんとも……

 

 もうひとつ、日本でもかつて翻訳書が刊行されていたシリーズの1作。

 

◆Twelve Dogs of Christmas by David Rosenfelt

 

 アンディ・カーペンターという弁護士が主人公のシリーズで、全16作品というロングラン。著者が無類の犬好き(犬の救済団体を主催しているほど)で、主人公も「犬」がらみの事件を担当し、毎作「犬」が表紙になっています。こちらは15番目の作品ですが、翻訳書は10年以上前に出版された2作のみ。コージーミステリーじゃなくて、クライムサスペンスのジャンルに入るみたいなので(表紙の犬はいかにもコージーっぽいですが……)、ほっこりはしなさそう?

 

 クリスマスまで2週間くらいなので、全部読むのは明らかに無理……なので、とりあえず、大好きなKrista Davisの作品を読もうと思います。

 

クリスマス

 

 第1作がおもしろかったので、同じシリーズの2作目を読みました。

 

Stalking Ground by Margaret Mizushima

 

 アメリカ・コロラド州ティンバー・クリークのK9ユニット、マッティ&ロボシリーズの第2弾です。本作は、冬の雪山が舞台です。被害者は、マッティの上司ブロディの恋人(前作にもちらっと登場してました)。行方不明になった彼女を、マッティたちは必死に捜索しますが、ときすでに遅し。険しい山の上で、遺体が発見されます。折り悪く天候は崩れ、辺りには雪が降りはじめ、マッティは現場保存のためにロボと山に残るのですが……。

 

 前作ではちょっと嫌な上司みたいな雰囲気だったブロディに、マッティも同情していろいろ気を回す場面もあり、人間関係が苦手だったマッティの成長もうかがえます。捜査面でマッティとコンビを組むのは、州警察の女性刑事ステラ。彼女がいい味出してました(第1作でも登場)。マッティの家族は一家離散状態で(父親は刑務所で死亡、母親は失踪。兄も音信不通)、そのつらい過去が前作以上に描かれているのですが、ステラとの友情が、今後の支えになっていきそうな感じでした。

 

 コロラドの厳しい冬と山の風景も、臨場感たっぷりに描かれています。隣州に住んでいたので想像がつきますが、雪の量は半端ない。10月に雪が降ることもしばしば。そして山は険しく、野生動物もいます。マッティとロボも、山でMountain Lion(クーガー)に遭遇したり。そこでロボが大活躍! クーガーとやりあい、終盤は本領発揮の追跡劇。プライベートでも、ロボはマッティのなくてはならない家族としてマッティを支えます。がんばれ、ロボ! と応援しながら読みました。

 

 本作では、捜査協力もしている獣医のコールが主人公に近い存在で、最初から最後まで出ずっぱりでした。離婚して自分も娘ふたりも精神的に落ち着かない状態になっているところに、患者(馬)がらみで事件に巻き込まれ、自身も命の危険にさらされます。獣医さんも大変……。

 

 

コロラドの山

(コロラドの山は、こんな感じ。ロッキー山脈の頂には、夏でも万年雪が見られます。)

ハロウィン 

(犬のハロウィーン。終わっちゃいましたが……)

 

 しばらく前から読みはじめた、動物行動学者でドッグトレーナーである著者の自伝(The Education of Will: A Mutual Memoir of A Woman and Her Dog by Patricia B. McConnell)、やっと8割程度まで読めました。内容が想像以上に重く、少し読みあぐねています。

 

 この自伝の半分は、自分の愛犬Willと、トレーナーとしてかかわっている犬たちの攻撃的行動(aggressive behavior problem)の改善という、ドッグ・トレーニングについて書かれています。Willを含め、登場する犬たちの問題はかなり深刻です。

 Patriciaさんは、飼い主として、プロのトレーナーとして犬たちに向きあうのですが、トレーニングがうまくいくこともあれば、一進一退、なかなか状況が改善しないこともあります。

 

 実際のトレーニングの様子も書かれていて、とても興味深いのですが、そのぶん読んでいてつらいところも。犬たちは何も好きで攻撃的になっているわけじゃない。恐怖やトラウマ(トラウマの原因が不明の場合もあるし、飼い主が思いこんでいる場合もある)が要因の反射的、自己防衛的な行動なので……。

 恐怖にうまく対処できない犬たちは、やむにやまれず、「こっちに来ないで!」という威嚇行動、つまり吠えたり、歯をむいたり(最終段階は「咬む(bite)」)という行動に出る。それを考えると、つらくなってきます。人間だって、そんなふうにしか生きられなかったとしたら、まちがいなくつらいはずです。

 

 Willくんは、内科的な問題も抱えていたうえ(食事とかもかなり気をつかう)、大きな怪我をして長期のリハビリが必要になるなど、「つらい」の一言では片づけられない、満身創痍の状態。愛犬家の読者としては、読んでいてつい力が入ってしまいます(そしてどんどん、読むスピードが遅くなる……)。

 

 本書のもう半分は、著者自身が抱える心的外傷後ストレス障害(PTSD)と、その原因となった過去の複数の体験について語られています。こうした自分の体験を、本という形でオープンにするというのは、勇気を総動員しなければできなかったはず。

 Patriciaさんは、自分自身が心に傷を負い、日常生活に支障が出るほどの症状(不安障害)と長年つきあってきたからこそ、恐怖に極端な形でしか対峙できない犬たちの気持ちが理解できるのでしょう。

 

 読みあぐねているのは、Patriciaさんの物語があまりに深刻で、あまりに個人的だから。1章1章、山を越えるように読んでいます。気楽に読める本でないことはたしかです。終盤になって、やっと光が見えてきたようなところもあります。

「新しいライフ・ストーリーを描くためには、今自分が生きているストーリーを知らなければならない」とPatriciaさんは言います。たとえそれがつらく、痛みを伴うものであっても、いままで目を背けてきた過去と向きあうことが、問題解決への一歩なんだと。この本に書かれていることをうまく消化できるかわかりませんが、時間がかかっても、最後まで読みきりたいと思います。

 

 犬の「恐怖を表現する行動」をまとめたポスターを見つけました。

Body Language of Fear in Dogs

 

 最近、Courseraのコースなどで、あらためて犬のことを勉強しているのですが、愛犬家と言いながら、犬たちのことをちゃんと理解できていないかもしれないな、と痛感しています。こんな飼い主を愛して(たぶん)くれる犬たちには、感謝しないと……。

 

ビーグル

(ビーグル。元気ハツラツなイメージ。)

 

 著名な動物行動学者で、訓練士でもある著者の自伝を読みはじめました。

 

 

The Education of Will: A Mutual Memoir of A Woman and Her Dog

by Patricia B. McConnell

 

 こちらの本、Barkというアメリカの犬雑誌のサイトで出会いました。書評のコーナーがあるのですが、そこで"artfully written"な本だと紹介されていて、読んでみたくなりました。(ちなみに、Barkをアメリカから取り寄せ購読することにしました! まだ届いてませんが、どんな雑誌なのかわくわくしています。)

 

 著者は動物学の博士号を持ち(博士論文のテーマは「牧羊犬とハンドラーのコミュニケーション」だったとか)、大学で教鞭をとる傍ら、攻撃的な態度や過剰な恐怖反応といった犬の問題行動を専門に扱う訓練士としても活動しています。Patriciaさんはこれまでに、犬の行動やしつけに関する多数の著作を発表していますが、本作は自分の過去と、問題を抱えた愛犬に向き合った日々を綴った自伝的ノンフィクションです。

 タイトルのWillは、Patriciaさんの愛犬、オスのボーダー・コリーです。Willは過剰なまでにほかの犬や物音におびえ、恐怖というスイッチが入ると、それこそ「犬」が変わったように攻撃的な態度をとってしまう、難しい問題を抱えた犬でした。それは子犬のときから、というか生まれ持った性質だったようです。人間が大好きで、ふだんは本当に愛すべき犬であるWillの問題をなんとか改善しようと、Patriciaさんは奮闘します。

 一方で、Patriciaさん自身の過去のトラウマも明かされます。彼女自身、コントロールできないほどの強迫性観念(突然、見知らぬ誰かに襲われる、といった)に日常的に襲われていました。まだ途中までしか読んでいないのですが、どうやら子供の頃のつらい体験が関係しているようです。タイトルに"facing my fears"とありますが、Willを訓練することで、自分のなかの恐怖にも対峙していくという部分は、胸に迫るものがあります。

 

 Willのような、いわゆる問題行動を示す犬は、問題の程度こそあれ、決して少なくないと思います。そもそも「問題」という定義は人間側からの見方なので、問題行動のなかには犬(動物)としての自然な行動も含まれるわけです。

 いま受講しているCourseraのコース(The Truth About Cats and Dogs)に、受講生からの質問に講師が答えるというコーナーがあり、そこで先生が印象的なコメントをされていました。

 

「犬の(人間から見て)望ましくない行動(undesirable vehaviors)は、その犬にとって『大切なもの(important resource)』を失うことへの恐怖が原因になっていることが多い」

 

 犬にとっての「大切なもの」は、食べ物、お気に入りのおもちゃやお気に入りの場所といった物理的なものもあれば、安全や(飼い主の)愛情といった目に見えないものの場合もあります。どちらにせよ、それがなくなることへの恐怖が引き金となって犬が過剰反応を示したときは、一方的に叱るのではなく、「大丈夫だよ」と犬を落ち着かせることが第一に取るべき行動。

 とはいっても、簡単にできることではありません……。うちの子も、玄関チャイムが鳴ったりしたら、無駄吠えすることが多いのですが、犬からしたら、無駄じゃなくて理由があって吠えているんですよね。ついつい静かにさせようと大きな声で叱ってしまいますが、逆効果なんでしょうね、きっと……。頭ごなしに叱るのではなく、なだめる、落ち着かせる、を心がけようと思います。

 Courseraの先生も、「ふだん、愛犬をどのくらい褒めてますか? しつけには、叱るよりも褒めるほうが大事です」とおっしゃってました。

 

 PatriciaさんがWillとどう向き合い、お互いに抱えている問題を解決していくのか。それを知るために、読み進めていきたいと思います。

犬たち

(犬って、大きくても小さくても犬なんですよね……当たり前ですが。)

 

K9ユニット(警察犬チーム)もののミステリーを読了。

 

 

◆Killing Trail: A Timber Creek K9 Mystery by Margaret Mizushima

著者マーガレット・ミズシマさんのウェブサイト→Margaret Mizushima Official Site

 

 K9ユニットが活躍する海外ミステリーといえば、翻訳書ではロバート・クレイスの爛好灰奪函マギー瓮轡蝓璽困頭に思い浮かぶのですが、こちらのシリーズもとてもおもしろく、愛読シリーズに仲間入りしました!

 

 コロラド州ティンバー・クリーク郡のK9ユニットとして活動する、保安官補でハンドラーのマッティと、警察犬(ジャーマン・シェパード)のロボのK9ユニットが活躍するミステリーです。山中で少女の遺体が見つかり、殺人事件として捜査が開始されるのですが、事件には、郡内に密かにはびこる麻薬取引が絡んでいるらしい……という展開。

 

 主人公マッティは、ハンドラーとしても、保安官としてもまだまだこれから、というキャラクター。競争を勝ち抜いてハンドラーに選抜されたこともあり(直属の上司がライバルだった)、いきおい肩に力が入っていますが、自分の弱いところは素直に認め、失敗を活かしつつ、まっすぐに任務に取り組もうとします。その姿に、すっと感情移入できました。マッティが相棒のロボと一緒に成長していく過程も、このシリーズを読む楽しみになりそうです。

 

 このシリーズでは、爛好灰奪函マギー瓮轡蝓璽困離泪ーのような犬視点の章や描写はなく、あくまでマッティから見たロボ、というスタンスで描かれています。「マッティがロボをどこまで信頼できるか」が鍵になるのですが、ロボはそのマッティの信頼に応え、クライマックスでも大活躍!

 

 マッティを取り巻く人たちも、いい味を出しています。ハンドラー選抜試験でライバルだった上司ブロディは、(マッティに負けたことが悔しくて)上司という地位を振りかざしてくるいやな奴という印象だったのですが、実は仕事熱心で、何気にかわいい一面もあったりして、後半は見直しました。

 事件にかかわる犬を治療し、ロボの担当医にもなる獣医のコールは、マッティの次に、内面や人間性が濃く描かれた登場人物です。ふたりの娘(ひとりはまだ幼い)を抱えて奮闘するシングルファーザーでもあり、マッティは彼のことが気になる様子。今後の作品で、マッティとコールの関係が深まっていく可能性がありそうです。

 

 コールが診察にあたるシーンの描写が妙に細かいと思ったら、著者マーガレットさんの配偶者は獣医なんだそう(お名前からして、日系の方でしょうか)。マーガレットさんも、夫のクリニックを手伝っているということなので、どうりで詳しいはずです。

 

 激しいアクションシーンや、度肝を抜くようなどんでん返しはないのですが、そのぶん落ち着いて読める作品だと思います。マッティを取り巻く人間が、基本的には「善良な人」ばかりなので、ドロドロした陰湿なミステリー(笑)に少々嫌気がさしていた私には、ぴったりな一冊でした。

 続編が2冊刊行されているので、続いてそちらを読むつもりです。翻訳書が出版されるといいのですが、原書はシリーズ三作目まで刊行されているのに出ていないということは……あまり期待できないかもしれません。自分が訳したい! とここは言ってしまおう!

 

 ずいぶん昔、コロラド州近隣に数年間住んでいたので、この作品に漂うロッキー山脈地帯の地方色が、読んでいて妙に心地よかったです。わたしが住んでいたのも山の近くで、自然に囲まれた町だったので(人間よりも羊の数が多い、なんてジョークも飛ばしていたほど)、なんだか懐かしい気分になりました。

 

 ロボやマギーのように、K9(警察犬)に選ばれる犬種は、アメリカではジャーマン・シェパードなど大型犬が主流です。シェパード以外だと、ビーグル、バセット・ハウンド、ブラッド・ハウンドといった犬種も活躍しています。小型犬種が警察犬になることは稀ですが、最近では日本でも、プードルやミニチュア・シュナウザー、パピヨンなどが警察犬に倏ぬ伸瓩気譟∀誕蠅砲覆蠅泙靴拭

 アメリカのオハイオ州でも、2006年、ミッジという、とても小さな犬(チワワとラット・テリアのミックスで、わずか3kgという小ささ!)が警察犬となり、その年のギネスブックに「世界最小の警察犬」として掲載されています。

 これがそのミッジちゃん。

 

サービス犬

 

「聴導犬」(Hearing Dog)が出てくるミステリー(原書)を読みました。

 

 

Not A Sound by Heather Gudenkauf

 

 主人公のアメリアはある事故が原因で聴覚を失い、生活が一変。アルコールに溺れ、家族(夫と夫の連れ子である娘)との関係もうまくいかなくなり、小さなコテージで一人暮らしています。そんなアメリアの支えとなっているのが、聴導犬のステッチ(Stitch)です(爛好謄奪銑瓩浪我の傷跡からついた名前)。

 アメリアは殺人事件の第一発見者となるのですが、事件の裏にある秘密を知り、独自に調査を開始します。それに気づいた犯人から、姑息な手段で追いつめられていく……という、ちょっとイヤミス的な展開もあります。アメリアが元看護師、夫も医師、再就職した職場も病院、事件の謎も医療にからんでいて、「医療」や「医師の倫理」がテーマにもなっています。

 

 聴導犬のステッチ、きりっとした「お仕事犬」を想像していたんですが、読んでみると、ちょっと違いました。アメリアの命令を聞かなかったり、落ち着きがなかったりと、半人(犬)前?なところも。でも、アメリアのために最後は大活躍します!

 

 すでに何作かサスペンス系の作品を発表している作家だけあって、ストーリーの展開がスムーズで、なかなか読みやすい作品でした。ややパンチというか、強烈なインパクトに欠ける印象もありますが、主人公が「音のない世界」に住んでいることも、静寂な雰囲気に影響しているのかもしれません。

 本作はGoodreadsやAmazon.comではそれなりにレビューがつき、評価も割と高めのようです。

 

 ステッチのような聴導犬、そして盲導犬(Guide Dog)といった「補助犬(Service Dogs)」が出てくるミステリーは、初めて読みました。

 "Not A Sound"の舞台はアメリカのアイオワ州。アメリカでは、たくさんの補助犬が活躍しています。

 American Kennel Clubサイトで補助犬のことを調べてみると、興味深い記事を見つけました。

 

”Service Dogs Have Emotional and Psychological Benefits, Researchers Say”

 

補助犬は、身体機能面(視覚や聴覚)で使用者を助けるだけでなく、使用者の精神面にも良い効果を与える」ことが、アメリカのパデュー大学が行った調査により明らかになったという記事です。

 調査は4年間かけて実施されたもので、1500人以上の補助犬使用者・順番待ちの希望者に対するインタビューも含まれています。

 調査の結果、補助犬使用者は、順番待ちの希望者に比べて、より精神的に安定しており、社会適応性が高く、職場や学校でもうまくやっているということが判明したのだとか(使用者本人だけでなく、その家族にも良い影響が見られるそうです)。

 こうした補助犬の精神面での効果は大きく、アメリカでは実際に、退役軍人の方など、トラウマ症状に苦しむ人のための補助犬(精神科補助犬・Psychiatric Service Dog)も活動しています。

 

 補助犬についてまとめたページもありました。

 

”Service, Therapy, and Working Dogs”

 

 補助犬だけではなく、「使役犬(Working Dog)」の情報も。「トコジラミ探知犬(Bed bug-detector dog)」なんていう使役犬もいるとは知りませんでした!


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