クロスジャンルなコンテンポラリー・フィクションを読了。犬もちょこっとだけ出てきます。

 

Where the Forest Meets the Stars  by Glendy Vanderah

 

 主人公のジョアナは、博士課程で鳥類学を研究する、20代半ばの大学院生。幼い頃に父親を、そして最近母親をガンで亡くし、自身も同じ病で数年間、闘病していた。大きな手術を乗り越えたジョアナは、研究の遅れと、自身の人生を取り戻そうと、夏の間、大学が管理する田舎のコテージでひとり暮らしをはじめる。早朝から夕方まで鳥たちを観察し、データを集める日々を送っていたある日、ひとりの少女が姿を現す。「アーサ・メジャー」(Ursa Major=おおぐま座)と名乗った少女は、自分は遠い星からやってきたエイリアンで、「5つの奇跡」を見るまでは星に帰らないという。こうして、ジョアナと不思議な少女は出会い、ひと夏を共に過ごすことになるのだが……。

 

 宇宙からやってきた少女という、SFかファンタジーのような設定で、この物語はいったいどこに行くのだろうと、奇妙な感覚をおぼえながら読み進めました。心身ともに傷ついたジョアナの内面が中心に描かれているのですが、そこにアーサの謎と、同じくアーサと深くかかわることになる、コテージの隣人ゲイブのエピソードが絡んできます。ジョアナの人生に突然現れた「エイリアン」、アーサとは何者なのか? 終盤は完全にサスペンスな展開で、ミステリー、マジックリアリズム、ロマンスと、クロスジャンルな味わいのある作品でした。

 以前、似た雰囲気の作品を読んだことを思い出しました。

 

The Snow Child  by Eowyn Ivey

以前の記事→白銀のアラスカに現れた少女 "The Snow Child"

 

 こちらも、ある日不思議な少女が姿を現す、というストーリー。主人公が夫婦ですし、時代設定など背景はまったく異なりますが、少女の謎が明らかになっていくところや、主人公とのかかわり方などに共通点を感じました。

 

 コンテンポラリー・フィクションは、作品によってはあまりに「現実的」すぎて、読書で非日常体験をしたい気分のときは敬遠してしまうのですが、この作品はかなりファンタジックなので、最後までぐいぐいページが進みました。オーディオブック併用だったのですが、わりと淡々とした声の女性ナレーターで、抑えた語り口が作品にマッチしていてよかったです。あまり仰々しい演技だと、この作品の世界に入っていけなかったと思います。ただ、低い男性の声色にやや違和感が……こればっかりは仕方がないのかもしれません(男性ナレーターが女性を演じるほうが、違和感が少ない気もします)。

 

森と星

アイリッシュウフルハウンド

(左がアイリッシュ・ウルフハウンド)

 

 児童書の「犬本」を読みました。

 

The Poet's Dog  by Patricia MacLachlan

 

 吹雪にあい、迷子になってしまった少年ニッケルと、その妹のフローラ。そんなふたりを助けてくれたのが、人間の言葉を話す犬、テディでした。テディは、ふたりを森の一軒家へと連れていきます。その家で、テディはひとりで暮らしていました。雪に閉ざされた家の中で、助けが来るまでをのりきろうと、ふたりと一匹は力をあわせ、心も通わせていきます。

 なぜテディは人間の言葉を話せるのか。テディの飼い主は詩人というのですが、どうしていまはひとりぼっちなのか。少しずつ語られるテディの過去は、あたたかくも、悲しい物語でした。

 

  原書で100ページほどの短いお話ですが、言葉づかいがとても美しく、心にしみじみと響いてきます。子どもと犬という小さな存在が、身を寄せあい、厳しい状況のなかでもユーモアを忘れずにいる姿にじーんときました。テディという犬の言葉で語られるストーリーは、大人や人間が語り手の作品にはない、不思議な魅力があります(犬好きなら、ますます)。物語のなかでは、テディの言葉は「詩人」と「子ども」にしかわからない、とあるのですが、子どもは誰もが詩人で、子どもの心を持っているのが詩人。ふと、そんなことが頭に浮かびました。

 

 本作の翻訳書が刊行されています。

 

テディが宝石を見つけるまで

『テディが宝石を見つけるまで』

パトリシア・マクラクラン:著 こだまともこ:訳

 

 タイトルの「宝石(Jewel)」という言葉には、実はテディ自身も知らなかったような、大きな意味が隠されています。それがわかったときは、涙がこぼれそうになりました。

 

 テディは「アイリッシュ・ウルフハウンド」。体高が100センチ近くもある、ひじょうに大きな犬です。でも性格は穏やかで、家庭でもじゅうぶん飼える犬だそうです(運動量や食事の量を考えると、そう簡単に飼えないでしょうけど)。大きな犬は大好きで、なかでもアイリッシュ・ウルフハウンドはあこがれの犬。日本ではほとんど飼われていないようですが、いつかどこかで会ってみたい……。

雁の群れ

 

 大好きな作品の続編を読みました。

 

"The Wild Robot Escapes" by Peter Brown

 

 第1作はこちら。翻訳書も刊行されています)。

 

"The Wild Robot" by Peter Brown

 

野生のロボット

『野生のロボット』 

ピーター・ブラウン:著 前沢明枝:訳

 

 無人島に流れ着いたロボットが、生存本能を発揮(発動?)して、自然のなかで生き抜くため、「野生のロボット」へと成長していくという、とても風変わりな、でもとても心温まるお話です。ロボットのロズは、ひょんなことで赤ちゃんガンのママになるのですが、それをきっかけに、ロズを警戒していた野生動物たちも心を開き、互いに助け合うように。そうしてなかよく楽しく暮らしていたロズたちですが、1作目の最後で、思わぬ事態が発生し……。

 ロズやロズの息子(りっぱなガンに成長)、動物たちがどうなったのか、それがどうしても知りたくて、次作を手にとりました。オーディオブックと併読したのですが、オーディオブックがもう最高で、聴き終わるのがおしいくらいでした。ナレーションはもちろんですが、効果音やテーマ曲もすばらしく、子どもが聴いたらわくわくすること間違いなし。一度聴いただけではもったいないので、もういっぺん通り、寝る前に少しずつ聴いていこうと思います。

 

 ロボットが主人公の話は、ともすれば、テクノロジーvs自然、みたいな構図になりがちですが、ロズと動物たちはお互いを認めあい、一緒に生きる道を選びます。"The Wild Robot Escapes"では、ロズと人間、社会とのかかわりが多く語られているのですが、ロズは持ち前の「学習能力」と「適応力」で、新しい環境でも奮闘します。でもロズは、人間のために働くことを目的に作られはいても、本当の自分は「野生のロボット」。自分らしく生きるには、といったロズの心(ロボットではありますが)の葛藤も描かれています。いろんなテーマに通じる、なにげに深い作品です。子どもだけでなく、大人も読むべき本じゃないかと強く感じました。

 

 とにかく、ロズがチャーミング。こんな素敵でやさしいキャラクターを生み出せるなんて、著者のお人柄なんでしょうか。洋書で読書会をする機会があったら、いちばんに選びたい作品です。

 鳥の羽がテーマのノンフィクション。

 

The Feather Thief by Kirk Wallace Johnson

 

 "The Feather Thief(羽泥棒)"というタイトルに、「羽を盗むってどういうこと?」と興味をひかれて読み始めました。エドウィン・リストという将来有望なアメリカ人の若きフルート奏者が、子どものころから趣味でやっていたフライタイヤー(フライフィッシング用のルアー)作りに取りつかれてしまい、信じられない行動に出ます。アーティスティックなフライタイヤーを作るため、美しい鳥の羽をどうしても手に入れたいと、ロンドン自然史博物館に侵入し、貴重なコレクションを盗み出したのです。300羽近くもの、大量の剥製をです! この事件を知った著者が、熱心な調査をもとにまとめたのがこの作品。まさに、事実は小説より奇なり、ですね。

 

 盗んだのが博物館の所蔵品ですから、当然、歴史的・科学的価値があります。コレクションがいかにして集められたかを明らかにするため、鳥の羽がいかに人々を魅了してきたか、文化や歴史、博物学者やコレクターの生涯といった「鳥の羽」にまつわるエピソードも紹介されています。極楽鳥(フウチョウ)やカザリドリなど、南国の美しい鳥の羽は、古くは女性用の帽子飾りとして、ヨーロッパで熱狂的な人気があったそうです。高値で取引されるため、危険を冒してでも標本を採りにジャングルへと旅立つ冒険家も多く、乱獲のせいで、絶滅の危機に瀕した鳥も……。

 

 著者はふとしたきっかけで事件のことを知り、それこそ取りつかれたように何年も調査と取材を続け、ついにはリスト本人にインタビューするところまでこぎつけます。犯行の様子や犯行後の行動、後日談など、リストの視点で臨場感たっぷりに描かれているのも、著者がリスト本人と直接(何時間も)話をしたからこそ。警察の捜査や博物館員の思い、フライタイヤ―界の反応などもサイトストーリー的に盛り込みつつ、事件はその後、意外な結末を迎えるのですが……と、クライム・ノベルを読んでいるようなドキドキ感もありました。読み物としてもじゅうぶん楽しめる一冊です。

 

 この事件を取りあげた、ナショナルジオグラフィックの記事がありました。

 →日本語版

 →英語版

 

 鳥の名前や学名など、専門用語もたくさん出てくるので苦労しますが、オーディオブック併用でなんとか読み進めています。なじみのない単語も、発音を聞くととっつきやすくなりますね。

 

ルリイロコンゴウインコ

(フライタイヤ―には、こういうきれいな鳥の羽を使うんでしょうか?)

 

 最近、オーディオブックにはまっています。洋書は「聴きながら読む」スタイルが定着しつつあるのですが、そのきっかけとなったのがこちらの作品。

 

◆Sadie by Courtney Summers

 

 犬も動物もまったく出てこない本ですが、検索でひっかかって妙に読みたくなり、オーディオブックをダウンロード。一気に読んで(聴いて)しまいました。

 セイディという、10代後半の少女が主人公。父親が誰かも知らず、母親は薬物中毒という、家庭に恵まれなかったセイディは、年の離れた妹マッティを親代わりに育てることが生きがいでした。でも、そのマッティが何者かに殺されてしまい……。犯人を見つけ、自ら裁きを下そうと心に決めたセイディは、ひとり町を離れます。

 一方、ニューヨークの放送局のプロデューサー、ウェストは、事件とセイディのことを知り、追跡調査を開始。セイディの足跡を追い、出会った人たちにインタビューし、リアルストーリーとしてポッドキャスト番組にまとめて放送していきます。果たして、ウェストはセイディを見つけることができるのか……。と、セイディとウェストの視点が交錯しながらストーリーが展開。ジャンルとしては、YAミステリーといったらいいのでしょうか。

 

 唯一心の支えだった妹を亡くし、ひとり犯人を追うセイディは、もろいナイフのよう。自ら危険に飛び込んでいき、出会った相手を、そして自分をも傷つけてしまう。物語が進むにつれ、セイディがなぜ犯人を追うのか(もちろんマッティのためでもありますが)、本当の理由が明らかになっていきます。読み終わったあとも尾を引くというか、いろいろ考えさせられる作品でした。

 

 この作品のオーディオブック版、なんといってもキャスティングと構成がすばらしい! セイディは生まれつき吃音症なのですが、そのセイディを担当したナレーターの熱演には心を打たれます。また、ウェストが語りの章では、オリジナルのポッドキャスト番組を仕立てていて、オープニング曲まで流れるという、力の入れようです。誰かにインタビューしている場面は、ちゃんと「インタビューしている雰囲気」になっていたりと、随所凝った構成で、本物のポッドキャストを聞いているようでした。オーディオブックは、ひとりのナレーターがすべて読み上げる場合と、複数のナレーターがキャラクターを演じ分ける場合とありますが、この作品は後者です。

 専門家からの評価も高いようで、Audie Awards(アウディ賞:優れたオーディオブックに授与される賞)のYA部門等のファイナリストになっています。作品自体も評価されていて、Edgar Awards(エドガー賞)のベストYA部門にもノミネート。ぜひ、受賞してほしいと思います!

→Audie Awardsの2019年の受賞作品が発表され、"Sadie"がYA部門の最優秀作品に選ばれたようです!

 

sad girl

(本の表紙の女の子には顔がありません。顔がないのが、ストーリーを暗示しているように感じました。)

 

 オーディオブックは出版翻訳のお仕事をするときにも、名前とか固有名詞の発音など参考になることが多く、欠かせない存在になりました。わたしはAudible.com(アメリカ版)を利用しています。日本版(Audible.co.jp)を使ったことがないので、違いはよくわかりませんが、洋書のラインアップはやっぱりアメリカ版のほうが豊富な気がします。アメリカ版はメンバーになると、Audibleオリジナル・オーディオブックが毎月2本、プラスでダウンロードできる(その月のリストから2本まで選べる)というサービスがありますが、日本版はどうなんでしょうか?

 子どものころの愛読書といえば、加古里子さんの『海』とか『地球』でした。あのびっしり描きこまれた絵本に、本当にわくわくしたものです(「ことばのべんきょう」シリーズも大好きでした)。いまでも本棚の一員で、ふとしたときにページをめくるのですが、あのときと同じ感覚が味わえるんですよね。わたしの一部は、確実に「加古先生が彩った世界」でできているんだな、とあらためて感じています(加古先生、ありがとうございました。心から、ご冥福をお祈りいたします)。

 

 そういうわけで、イラスト図鑑には目がありません。こちらは、最近手に入れた一冊。

 

Nature Anatomy by Julia Rothman

 

 この手のイラストは好みが分かれるところだと思いますが、わたしはほっこりしていて好きです。頭から順番に読んでいくのではなく、ぱらぱらめくって、気になったページを読むのが楽しい。地球の内部、鉱物、自然現象、昆虫、野草、生き物と、「自然」にまつわるいろいろなものが紹介されています。煮詰まったときの、気分転換にぴったりです。

 いつか、こういう図鑑の翻訳もしてみたい。そのためには、もっと動物や自然に興味をもって、語彙や知識も増やさないといけませんね。

 著者のJulia Rothmanさんのインタビュー映像がありました。

 

 

パターンデザイナーとして世に出た方のようです。デザインしたパターンは、バスや建物のような大きなスペースも飾っているとか。

 

 最近は、動物ものが流行っていますし、図鑑や写真集の翻訳書もたくさん出版されています。書店やAmazonで見つけてしまうと、ついつい買ってしまいそうになります……。

 

ムース

(ヘラジカ。鼻に愛嬌があります。)

波乗り犬

(このくらい、波に乗りたいもんです)

 

 はい、表紙のわんこにやられました。出版年は2013年と古いですが、Amazon.comでも評判の高い作品です。"Sweet" "Heartwarming" "Touched"と、レビューにも好意的なコメントが多いので、期待しながら読みました。

 

All That Ails You: The Adventures of a Canine Caregiver by Mark J. Asher

 

 捨て犬だったリグリーが見つけた家族&終の棲家は、介護施設。「ハウスドッグ」としてシニアたちと交流しながら、幸せな日々を過ごしていた。ある日、気難しく、怒りっぽいウォルターが入居してきて、施設の雰囲気は一変。ウォルターは何に対しても文句ばかりで、リグリーのことも毛嫌いし、近づけようとしない。でもある日、施設を揺るがす大事件が起こり、ウォルターのリグリーを見る目も変わっていく――。

 

 リグリーが語り手となり、リグリーの過去や、犬としての思い、ハウスドッグとしてのプライド、そして施設で暮らすシニアたちとの交流や、それぞれの人生が語られています。ホロリとさせられる場面がたくさんありました。とくに、気難しかったウォルターが、リグリーとのふれあいを通して、周りの人たちや家族に心を開いていく様子は、お約束な展開とはいえ、じわっときて……。"Heartwarming"な雰囲気が、大好きな作品『幸せなひとりぼっち(A man called Ove)』に似ているなと感じました。

 

 この作品を翻訳するなら、リグリーの一人称は何だろう、と考えてみました。たぶん、「ぼく」ですね。ペットの犬は、体は老いても、精神的には成熟しない(飼い主という親が一生そばにいるから)、と聞いたことがあります。食いしん坊で、散歩と遊びが大好きなリグリーは、スペンサー・クインの「チェット・シリーズ」のチェットっぽい感じ(チェットも、翻訳版での一人称は「ぼく」)。

 大人向けフィクションで、擬人化した動物が語り手の場合、やりすぎると子どもっぽくなってしまって、読みづらくなることもあるので、言葉遣いが難しいんじゃないでしょうか。語りのトーンは、気持ち抑えめにしたほうがよさそう。もちろん、語り手のキャラクター次第でしょうけど。

最後まで読み切れていない本ですが、なかなか興味深かったです。

 

A Good Man with a Dog: A Game Warden's 25 Years in the Maine Woods by Roger Guay

 

 アメリカ・メイン州で長年「猟区管理官(Game Warden)」を務めた著者による自伝です。表紙やタイトルからもわかりますが、K9ハンドラーとしても活躍された方です。猟区管理官と聞いても、日本ではあまりなじみがありませんが、アメリカではれっきとした公職(州や自治体の)で、法に則って様々な権利を行使できる立場なんだそう。管轄領内での密猟者の取り締まりや野生動物の保護だけでなく、行方不明者の捜索や事故・事件の調査など、警察官かCSIのような役目も担っています。犯罪者を相手にする仕事でもあるので、命の危険にさらされたりも。本書では、そんな猟区管理官の仕事に就いた経緯や、職務中の出来事がつづられています。

 メイン州とはちょっと違うかもしれませんが、アニマルプラネットで猟区管理官が登場する番組を放送しているようです。

 

 

テキサス州は広いので、パトロールだけでも大変そう。

 

山岳救助犬

(こっちは山岳救助犬)

カタツムリ

(ナメクジは苦手なのに、カタツムリはかわいく見えるのは、背中にしょってる貝があるから?)

 

 いつだったか、原書ハンティングをしていたときに出会って以来、ずっと気になっていた作品を読み終えました。読んだのは翻訳書のほうですが、その翻訳が「こんな風に訳したい」と思う、まさに自分がめざす訳文で、心が震えました。

 

カタツムリが食べる音

『カタツムリが食べる音』

エリザベス・トーヴァ・ベイリー:著 高見浩:訳

 

The Sound of a Wild Snail Eating by Elisabeth Toa Bailey

 

 ある日突然、難病に侵された著者と、一匹のカタツムリとの不思議な絆を描いた自伝的ノンフィクションです。ほとんど体を動かすことができない著者は、ひょんなことからベッドサイドにやってきたカタツムリの観察を通して、この世に存在するということ、生きるということを見つめなおし、ふたたび前を向いて生きる勇気を取り戻していきます。

 カタツムリは「のんびりした生き物」というイメージでしたが、この本を読むと、なんて魅力的な生き物なんだろうと驚かされます。冒険心にあふれ、行動的で、食欲旺盛(ネットで「カタツムリの食べる音」を聞いてみましたが、なんともいえない音でした)。小さな体に生命力がみなぎっている感じ。もうじき梅雨入りですが、カタツムリたちに会えるのがなんだか楽しみになってきました。

 

 翻訳は、ヘミングウェイの新訳でも知られる高見浩さん。流れるような、語りかけるような、読んでいて心地よい、とても美しい訳文です。音読してみると、その美しさがよくわかります。これをお手本にしない手はないので、原書を取り寄せて、翻訳と読み比べてみるつもりです。

 伝記や回顧録って、ノンフィクションとフィクションの中間にあるジャンルじゃないかなと。どちらに寄せるかで、作品の印象がまったくちがってくる。もちろん、原文の雰囲気や文体次第ですが、あまり「読み物」っぽく訳してしまうと、実話の重みが感じられなくなるでしょうし。著者の「生の声」を壊すことなく読者に伝えられるような、そんな翻訳ができるようになりたいと強く思いました。

 やっぱりコージー・ミステリーは読みやすい! 4日ほどでDeath by Chocolate Lab を読了しました。

 

Death by Chocolate Lab (Lucky Paws Petsitting Mystery Series) by Bethany Blake

 

 読んでいて楽しかったし、犯人も意外性があって、なかなかよくできたコージー・ミステリーでした。

 主人公のダフネは、哲学の博士号を取得しているという設定のわりに、向こう見ずというか、考えるより先に行動するタイプ。いくら姉に容疑がかけられているにしても、犯人かもしれない人物の家にひとりで乗りこんだり、夜中に出歩いたり、大事な証拠品をうっかり持って帰ったりと、もう好き勝手してます。一般市民でなんの権限もない主人公が、事件の調査と称してあちこち鼻をつっこみ、あれこれ動き回るのは、コージー・ミステリーのお約束ですけどね。

 これまたコージー・ミステリーには欠かせない「主人公のロマンス」要素もしっかり入ってました。お相手は、見るからにハンサム、でもめったに笑わない堅物の刑事、ジョナサン。ダフネの自由奔放な行動に振り回されつつ、まんざらでもない様子。ピンチになると颯爽と現れるジョナサンに、ダフネの恋人未満の男友達ディランが、俄然ライバル心を燃やす、というのも、よくある展開。

 

 謎解きという点では、疑わしい人物がどんどん増えていき、そのぶんひとりひとりの「怪しさ」が薄まったかなという印象も受けました。とはいえ、それぞれの人物についての結末はきちんと語られていましたし、サイドストーリーとしておもしろく読めたので、よかったと思います。

 

 何よりも満足したのは、犬たちの描かれ方! これまで読んだコージーの中で、いちばん犬が出てくる作品かもしれません。犬好きには間違いなくおすすめ。総勢6匹の犬たちが、ストーリー上でも重要な立ち回りを見せてくれます。なかでもわたしのお気に入りは、ダフネの愛犬ソクラテス。ほかの犬たちとは別格というか、キャラクター描写がほぼ人間並みです。ソクラテスにまた会いたいから、次作を読もうという気になりました!

 

 個人的には、翻訳出版されてほしいシリーズです。理由は、バランスのよさでしょうか。登場人物や伏線、サイドストーリーが多めで、ややごちゃごちゃした感じがコージーの味だと思います。この作品は、その辺のさじ加減がほどよく感じました。4作目が刊行予定らしいので、完成度、安定感なんかも気にしながら(途中でしぼむシリーズもあるので…)フォローしていきたいなと。

 

 ちなみに、コージー・ミステリーといえば最後に「レシピ」が紹介されている作品が多いですが、こちらのシリーズも作中で登場するスナックやスイーツ、そして「わんこのおやつ」のレシピがついてます!

 

Dial Meow for Murder

 

 次作は、猫ちゃんが登場するようです。

 

バセットハウンド

(バセットハウンド。哲学者の風格が漂ってますが、なにも考えてないのかも?)

 ずいぶん昔に、公園でバセットと散歩している方がいて、触らせていただいたことがあります。「耳は汚れているから気をつけて」と言われたのに、触りまくってベトベトになった記憶が……。あれだけ長いと、地面とか、いろんなものに触れちゃいますよね……。


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