荒野 

(渇いてますね……。)

 

 数日前に読んだ"Silent Child"はほぼ一気読みでしたが、こちらも面白かった!数日で読み切ってしまいました。オーストラリアを舞台とした、クライムサスペンスです。

 

The Dry by Jane Harper

 

 連邦捜査官のアーロン・フォークは、少年時代の親友ルークが亡くなったという知らせを受け、20年ぶりに故郷に戻る。ルークだけでなく、ルークの妻と幼い息子までもが亡くなっていた。再び故郷の土を踏んだアーロンの胸に、苦い記憶がよみがる。20年前、アーロンはこの町で起こったある事件の犯人として疑われたのだった。その過去の事件と、ルークの死の謎に、否応なく巻きこまれていくアーロン。焼けるような暑さと渇いた空気が、アーロンの思考を阻む……。

 

 プロットと伏線の張り方が絶妙で、完成度の高い作品でした。これがデビュー作というのはおどろきです。関係なさそうに見えるエピソードが、実は大きな意味を持つ。ミステリーにはよくある設定ですが、さりげなく、かつきちんと、推理に必要な事実が提示されています。読者に対する、作者のフェアな姿勢がうかがえます。謎解き部分で「あれって、これの伏線だったのね!」とわかったときは爽快感をおぼえました。

 主人公アーロンのキャラクターもよかった。連邦捜査官ですが、主に「お金」がらみの事件を担当しているようで、タフガイという雰囲気ではありません。といって、クールというわけでもない。強さよりも、やさしさ、誠実さが前に出ている、そんな人物です。捜査中も、結構ひどい目にあうのですが、感情をあらわにすることはほとんどなく、淡々と捜査を進めていきます。作中、アーロンの性格が「安定している(stable)」と表現されていましたが、まさにそうだと思いました。

 ただ、過去の事件のこともあり、他人に心をさらけ出せない、そんな暗い一面もあり、明るくわかりやすい主人公が好きな読者なら、ちょっといらいらするかも? アーロンの相棒となるラコというキャラクターもいい味だしています。人物を見抜く目を持っているようで、アーロンを信用に足りる人物と瞬時に判断し、友情を築いていきます。そんなふたりが、なかなか見抜けなかった真犯人。わたしは完全にノーマークでした……。作者に完敗!です。

 

 "The Dry"というタイトル通り、町も人も渇ききり、むき出しになる欲望や感情。この「干ばつ」という自然災害はストーリーに彩を添えているだけでなく、クライマックスで重要な意味を持ちます。こういう舞台設定のうまさも、評価が高いポイントではないかと思いました。

 

 

 本作の翻訳版が出版されました!

 

渇きと偽り

 

渇きと偽り 

ジェイン・ハーパー:著 青木創:訳

出版社の作品紹介ページ→早川書房


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