模型の家

 

 原書を読みかけて、あまりの長さに挫折したこちらの作品、翻訳書で読了しました。

 

すべての見えない光

 

 最後のページを読み終わったとき、こう思いました。わたしは本を読むとき、物語のなかに「救い」を求めているのかなと。少なくとも、フィクションを読むときは、そこになにがしかの「救い」を感じることができれば、いい読書だったな、と振り返ることができる気がします。そしてこの作品もそうでした。戦争。早く大人にならざるを得なかった子どもたち。善人が善人のままでいられない時代。登場するすべての人物が、痛みとつらさを味わっています。その状況で、少女と少年が出会ったこと、少女が少年に助けられたこと、少年が少女を助けることができたこと、そのひとつひとつのエピソードが救いでした。とてつもなく悲しいけれど、ただ悲しいだけではない。ハッピーエンドではないけれど、主人公や登場人物たちが前を向いて終わる。わたしはそんな物語が好きです。

 

 これだけの長編なのに、無駄だと思える文章が一文もないのには驚きました。訳者の藤井光さんがあとがきで語られていますが、ひじょうに「磨きこまれた」作品です。執筆に十年を要したといいますが、言葉、文章、章立てのどれをとっても、作者のまなざしが行き届いている。物語には「炎の海」と呼ばれるダイヤモンドが登場しますが、ダイヤモンドの原石を切り出して、最も美しく見えるカットに仕上げるように、この作品も書かれた、そんな印象です。

 原書を読み切ることはできなかったのですが、翻訳書を読んでみて、原文の良さを余すところなく表現した、磨きに磨いた訳文だと感じました。原書、翻訳書ともに名作だと思います。


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