Snow Maiden

 

 The Snow Childを読了しました。50章以上という長さに読み切れるのか心配でしたが、読んでいくうちに先が気になって、気づいたら数日で読み切っていました。

 

 舞台は1920年代のアラスカ。子どものいない夫婦、JackとMabelは、アラスカの開拓地に移住します。Mabelはかつて死産を経験し、わが子を亡くした悲しみを乗り越えられないまま、長い年月を過ごしていました。そこで、新天地で心機一転、人生を再スタートするつもりでアラスカに移住したのですが、過酷な自然や開拓の厳しさのなかで、交わす言葉も少なくなり、夫婦の心はますます離れていきます。

 そんな重苦しい空気がただようアラスカでの生活でしたが、初雪が降ったある日、童心に返ったふたりは、Snow Childを作ります。この子は女の子だと、Snow Childに赤いミトンとマフラーを着せてやるMabel。すると、不思議なことが起こりました。森の中に、赤いミトンとマフラーをまとい、透き通るような肌と青い目をした、金髪の少女が現れたのです。少女は、おとぎ話に出てくるSnow Maiden(ゆきむすめ)のように冬の寒さを気にすることもなく、野生の生き物のようにしなやかに、風のように森の中を駆け巡ります。

 少女はFainaと名乗り、しだいにJackとMabelと一緒に過ごすようになります。ふたりは自分の娘のようにかわいがるのですが、春が来ると、雪の残る深い山奥へと、Fainaは姿を消します。悲しみとさみしさに包まれる夫婦でしたが、季節がめぐり、再び冬がやってきたとき、Fainaはまた、ふたりの元に戻ってきます……。

 

 白銀のアラスカが舞台ということもあり、幻想的な雰囲気ではあるのですが、ファンタジーというよりもヒューマンドラマとして読みました。Mabelの心境の変化や成長を軸に、過酷な環境で生きる人々の人生が丁寧に描かれています。また、Fainaがいったい何者なのか、どうして春になると姿を消してしまうのか、といったミステリーな部分もあります。自然描写も緻密で生き生きとしていて、とくにその野生動物の描写には心奪われました。キツネ、オコジョ、ライチョウ、グズリといった、アラスカならではの生き物たちも登場します。

 

 本作の翻訳書が見つからないので、日本で出版するとどうだろう……と考えてみました。とても美しい話ですが、それを日本語に翻訳して表現するのは難しいかなと(そのぶん、訳しがいはありそうですが)。家族や親子のあり方、生きるうえでの選択、何を大切にするかといった、根底にあるテーマはひじょうに普遍的なのですが、「アラスカの地」に日本の読者がなじめるかどうか……。ラストも、余韻を残す終わり方で、好みが分かれそうです。登場人物は少なく(ここはポイント!)、それぞれがしっかりと描きこまれています。そのなかでも、Mabelをどう訳すか、表現するかで、読者の共感、感情移入のしやすさが変わってきそうです。いろんな角度から読めるので、精読や読書会に向いている作品だと思いました。

 

(こちらの表紙も素敵です)

 

 もう一冊、洋書で読書会をやるならこれ!と思った作品があります。以前読んだ、こちらの作品です。

 

Faithful  by Alice Hoffman

(作品については、こちらの記事で書きました。)

 

 こちらも翻訳書が見当たらないのですが、日本の読者のとっつきやすさからいうと、Snow ChildよりはFaithfulかもしれません。


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