パピー

(ビルバオ グッゲンハイム美術館のパピーちゃん。いつか会いに行きたい!)

 

 積読本をいつまでも積んどくわけにいかないので、仕事の合間に、寝る前に(というか、夜なべして)、少しずつ解消しています。

 とりあえず、以下を読了。翻訳ミステリーばっかりですね。
 

嘘の木

『嘘の木』(フランシス・ハーディング:著、‎児玉 敦子:訳)

 

書店猫ハムレットのうたた寝

『書店猫ハムレットのうたた寝』(アリ・ブランドン:著、越智睦:訳)

 

オリジンオリジン

『オリジン』(ダン・ブラウン:著、越前敏弥:訳)

 

 どの作品もとてもおもしろくて、どっぷり読みふけってしまいました。

 

『嘘の木』は、翻訳ミステリー大賞、翻訳大賞(二次選考対象)の両方にノミネートされている作品です。コスタ賞の大賞&児童文学部門賞を受賞した作品ということで、ファンタジーな児童文学かと思いきや、大人が読んでもじゅうぶん読み応えのある、重厚な人間ドラマでした。ミステリーとしても「この人が!?」という驚きがあり、19世紀後半のイギリスの時代背景、社会、文化といったところもしっかり描かれていて、歴史ものとしても読めると思います。こういうおもしろい翻訳書、どんどん刊行されてほしい!

 

「書店猫ハムレット」のシリーズは、シリーズ通して読んでいますが、アメリカ・ニューヨークの(都会というより、下町という雰囲気の)文化とか生活が味わえて楽しいです。キャラクターも地に足ついた感じで、コージー特有の「わやわや感(?)」が薄めで、安心して読めます。残念なことに、次巻が最終巻なんだとか……。最後まで、ハムレット(ハミー)の活躍に期待しています!

 

『オリジン』は、これぞダン・ブラウンという、壮大な舞台設定に、スピード感あふれる展開で、上下巻を一気読みでした。テーマとなるのが、テクノロジーと宗教という、まさに新・旧ふたつの世界。舞台となるスペインも、暗と明の両面を内包する国だからこそ、ストーリーに何層もの深みが出ているんでしょうね。ついつい時間を忘れて読書に没頭してしまう、「読ませてくれる」作品です。

 

 と、立て続けに「犬」が出てこない作品を読んだので、次は「犬本」かな……。

 

本とダガー

(ゴールドじゃないダガー。しおり替わり??)

 

 今年読んだミステリー(犬に関係なく)のなかで、ダントツにおもしろかった作品が、2017年の英国推理作家協会賞(CWA Gold Dagger)を受賞しました!

 

原書はこちら↓

The Dry by Jane Harper

 

翻訳書はこちら↓

渇きと偽り

渇きと偽り 

ジェイン・ハーパー:著 青木創:訳

 

 この作品がデビュー作というのですから、完成度の高さには驚きです! Jane Harperさん、おめでとうございます!

 

 近年、サイコスリラーやダークミステリーといった牋鼎ぁδ砲し廊瓮潺好謄蝓爾鯑匹爐海箸多く、海外ミステリー小説好きですが、ミステリーを読むことにお腹一杯な感じがありました(最近は犬系ミステリーしか読んでいませんが)。ですが、この"The Dry"は、健全なと言ったら変ですが、バイオレンス度・サイコ度・ドロドロ度(?)で勝負するのではない、純粋にストーリーやプロットで読ませるミステリーで、ぐっと引きこまれました。

 ミステリーも、結局は人間性を描いた文学だと思うので、読むにあたっては、登場人物、とくに主人公が丁寧に描かれているかを重視しています(トリックとか、舞台設定も大事ですが)。主人公に感情移入できなければ、読み続けるのが苦痛になってしまいます……。その点、この作品は主人公のアーロン、相棒役のラコのキャラクターにすっと入っていけて、心地よい読後感を味わうことができました。

 

 年々、牋鼎ぁδ砲し廊瓮潺好謄蝓爾読みづらくなってきているので(以前はサイコスリラーとか、大好きだったのに)、こういう安心して読めるけど、骨太・本格派の作品と出会うと、うれしくて小躍りしたくなります!

 

(それにしても、早川書房はカズオ・イシグロをはじめ今年のノーベル賞受賞者の著作も刊行しているし、大当たり!ですね。)

オーストリア

 

 しばらく前に読了した、こちらのミステリー。

 

刺青の殺人者

刺青の殺人者

アンドレアス・グルーバー:著 酒寄進一:訳

 

 作者は、ドイツ語圏で大人気の、オーストリア人作家。前作『夏を殺す少女』もそうでしたが、独特の暗さと、重厚な空気感、かつスピーディーな展開という、読み応え抜群のミステリーでした。とくに終盤は、まさに手に汗握る展開で、はやる気持ちでページをめくりました。

 本作も前作同様、若い女性弁護士・エヴェリーンと、中年シングルファーザー(ちなみに喘息持ち)の刑事・ヴァルターがダブル主役という形です。ふたつの物語が交差し、最後はひとつになって怒涛のクライマックスへ!テンポアップするまでの序盤から中盤、もうちょっとじっくり読みたかったのですが、ここのところゆっくり読書する時間がなく、ちょっと流し読み気味になってしまったのがもったいなかった……。

 グルーバーは、『黒のクイーン』(男性の探偵・ホガートが主人公のシリーズで、古典映画が題材となっている)、『月の夜は暗く』(女性捜査官・ザビーネと変わり者の男性分析官・スナイデルのコンビのシリーズで、古典文学が題材)と、複数のシリーズをかき分けているようです。

 個人的には、スナイデルのキャラクターが魅力的(というか個性的)な『月の夜は暗く』が、いまのところシリーズ中いちばんかなと思っています。作中、『もじゃもじゃペーター』という絵本が出てくるのですが、タイトルだけで読みたくなりました(といっても、これを「見立て殺人」に使うくらいなので、子供向け?と思いたくなるような残酷物語のようですが……)。シリーズの続きは本国では刊行されているようなので、翻訳が出るのを楽しみにしています(出てほしい!)。

青い万年筆

 

 22日は翻訳ミステリー大賞授賞式が東京で開催されました。地方からえっちらおっちら上京して、こっそり参加してきました。

 今年の大賞は、『その雪と血を』でした! 本賞は授賞式会場での生開票なので、目の前で大賞が決まって大興奮。しかも、自分が読者賞で一票を投じた作品が大賞を受賞したので(読者賞とのダブル受賞)、とてもうれしかったです。『その雪と血を』は、ことあるごとに勉強仲間や読書仲間におすすめしてきた作品なので、なんだか感慨深いものが……

 

その雪と血を

 

 授賞式では、対談あり、出版社対抗のイチオシ本バトルありと、盛りだくさんの内容で、駆け出し翻訳者としては、ひじょうに勉強になりました。一日で一気に「読みたい本」が増えて(増えすぎて)、途方に暮れています。

 

 数日前から読み始めて、東京に着く前に読み終わった本もミステリー。この作品を旅のお供にしました。

 

青鉛筆の女

 

青鉛筆の女』 

ゴードン・マカルパイン:著 古賀 弥生:訳

出版社の作品紹介ページ→東京創元社

 

 「凝りに凝った」という表現がぴったりはまる、説明するのがちょっと難しいミステリーです。ストーリーは、「A:タクミ・サトーという日系アメリカ人の作家による、日系アメリカ人(スミダ)が主人公のミステリー」、「B:その作家がウィリアム・ソーンというペンネームで執筆した、ジミー・パークという朝鮮系アメリカ人を主人公とするミステリー」、そして、「C:その作家とやり取りしていた、出版社の編集者からの手紙」という3つのパーツで成り立っています。章ごとに語り手や時間軸が変わるミステリーは多いですが、本来まったくの別物であるはずのAとBが、リンクしながら進んでいく展開は、なかなかスリリングでした。

 

 作品の時代は戦時中で、真珠湾攻撃以降、厳しい立場に立たされた新人の日系アメリカ人作家タクミは、作品を世に出すために、途中まで執筆が進んでいた、日系アメリカ人スミダを主人公とした作品(Aの元作品)を、朝鮮系のジミー・パークを主人公とする作品(B)へと、大幅に変更することを余儀なくされます。出版社の編集者から手紙(C)を介して様々なダメ出し、要求をつきつけられ、タクミはそれにひとつひとつ応じながら、作品を書いていきます。主人公の人種、キャラクター設定のみならず、作品のジャンル(ハードボイルドから低俗なパルプスリラーへ)も変え、あげくの果てにペンネーム(日系人だということを伏せるため)を使うよう迫られ、もう自分の作品とはとても言えないもの(B)を、ひたすら書き続けていく……そんなタクミの感情を想像すると、背筋が寒くなりました。

 こうして不本意な作品を「書かされて」いたタクミは、出兵後、戦地で「書きたいもの」を書くわけですが、それがAです。彼が主人公に選んだのが、Bを書くために「存在を消された」あの日系アメリカ人、スミダというのですから、作家の心情は推して図るべし、です。中断していたAを再び書き始めたともいえるのですが、最初に書き始めた頃とはタクミ自身を取り巻く状況が大きく変わっている。そこで、作品の世界も、中断したところから再開するにあたり「一瞬世界が暗転したかと思うと、何もかも変わっていた」という設定にします(このあたりはちょっとSF風)。

 当然、スミダにしてみれば、まったく訳がわからない状況に放り込まれてしまうわけで、作家が味わった理不尽な仕打ちが、フィクションという別の形で表現されているといってもいいでしょうか。AもBも、単独の小説としてみれば、ミステリーのジャンルに入ると思いますが、この『青鉛筆の女』という作品全体で考えると、最大のミステリーは「スミダがAで味わっている世界」ではないかと感じました。つまり、スミダにとってのミステリーなのではと。

 

 この作品、あまり複雑に考えて読んだり、深読みすると、逆に作品のいいところが見えなくなってしまう気もします。素直に、3つのパーツが交錯する虚構の世界にひたる、というのが正解なのかもしれません。

 

 ところで、アメリカでは、編集者が原稿に「青」を入れる(青いペンでコメントを書く)ので、「青鉛筆」になるようです。これが日本だと「赤」になるわけで、タイトルも「赤鉛筆の女」……なんだか「赤ペン先生」みたいでしまらない感じ。原題がWoman with a Blue Pencilなので、翻訳版のタイトルは直訳なんですね。今年の翻訳ミステリー大賞に選ばれた『その雪と血を』(原題はBlood on Snow)もそうですが、翻訳書を出版するうえで、タイトルの「引き寄せ力」は大きいなと思いました。

コーヒーと本

 

 先日、出版翻訳を勉強している仲間に声をかけて、リーディング勉強会を開催しました。講師をお招きするコネもないので、参加者がめいめいレジュメを作成し、そのレジュメをたたき台に、各自プレゼン、コメントしあうという形式でした。

 やってみて感じたのは、とても勉強になった!!ということ。これまで、リーディングの通信講座なども受講してきましたが、やっぱり「リーディングは原書を読んでなんぼ、レジュメは書いてなんぼ」なんだなと実感。

 こうした勉強会という形で、締め切りを作ってリーディングをするというのは、実際の仕事に向けての予行演習にもなりますし、モチベーションの面でも大きな刺激になります。そして、自分のレジュメを誰かに実際に読んでもらうという行為は、いい意味でプレッシャーになります。さらに、ほかの人が書いたレジュメを読むと、「こういう風に表現すればいいのか」「こんな工夫もできるんだ」といういろんな発見があります。お互いのレジュメの良いところを真似しあって、次の自分のレジュメに活かしていく。本当に有意義な勉強会でした。

 今回の勉強会用に、わたしはこちらの作品でリーディングしました。

 

The Buried Book  by D. M. Pulley

 

<ストーリー概要>

 1952年夏。デトロイトに暮らす9歳の少年ジャスパーは、ある日突然、母アルシアに田舎の伯父の農場へと連れていかれる。「伯父さんの言うことをよく聞いて、いい子にしているのよ」そんな言葉と、着替えと聖書の入ったトランクひとつを残して、母はどこかへ姿を消した。

 いい子にしていれば、きっとお母さんは帰ってくる。そう信じるジャスパーだったが、アルシアはいっこうに姿を現さない。なぜか警察も、その行方を追っている。実はアルシアには人に言えない過去があり、その過去が、いままた暗い影を落としていた。

 ジャスパーは、偶然見つけた母の古い日記を頼りに、母親の過去をたどりはじめる。そして、悲しみと汚れに満ちた大人の世界へと足を踏み入れる。違法行為、スキャンダル、殺人……。アルシアの身に何が起こったのか? ジャスパーは、母アルシアと再会することができるのか?

 

<感想>

 1950年代のアメリカ・ミシガン州の田舎を舞台にしたクライム・サスペンス。犯罪に巻きこまれた母を探す主人公の少年が、悲しみと困難に立ち向かっていく様子が描かれていて、少年の成長物語としても読むことができるなと思いました。長めの作品ではありますが、テンポよく話が進むので、最後までページをめくる手が止まることはなかったです。

 本作の最大の特徴は、アメリカの農村の暮らしや先住民との関係など、時代的、文化的な背景が色濃く表現されているところ。とくにジャスパーが預けられた農場でのエピソードは、物語の強いアクセントとなっています。

 ストーリーの軸となる母アルシアの過去や、現在軸で起こっている犯罪事件に、居留区や先住民といった存在がからむという構図。白人に搾取される先住民という構図を下敷きに、先住民たちのやるせなさや憤りも描かれていて、物語としての深みも感じられました。

 主人公ジャスパーには、過酷な現実が突きつけられます。都会の生活からある日突然農場に放りこまれるという設定もそうですし、肉体的、精神的に傷つく場面がこれでもかと用意されていて、若干九歳の少年が受ける仕打ちにしては、ひどすぎるような気も……ですが、ジャスパーがあらゆる困難を持ち前の賢さと機転、そして農場での生活で培われていく逞しさで乗り越えていく姿には感動を覚えました!

 ハッピーエンドというよりも、せつないラストなので、読者の好みも分かれそうです。でも、悲しみやせつなさという余韻を残すところも、この作品のひとつの魅力といえるかもしれません。ミステリー好きにはもちろんのこと、ヤングアダルト小説の愛読者にもお勧めしたい作品です。

 Amazon.comでも800件以上のレビューが寄せられているベストセラーなので(本作著者のデビュー作"The Dead Key"(2015)は、レビュー8000件以上で、星の平均4以上という高評価)、翻訳書が刊行されないかと、密かに楽しみにしているのですが、テーマ的に難しいかもしれません……。

 

<個人的な評価>星4


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