本とダガー

(ゴールドじゃないダガー。しおり替わり??)

 

 今年読んだミステリー(犬に関係なく)のなかで、ダントツにおもしろかった作品が、2017年の英国推理作家協会賞(CWA Gold Dagger)を受賞しました!

 

原書はこちら↓

The Dry by Jane Harper

 

翻訳書はこちら↓

渇きと偽り

渇きと偽り 

ジェイン・ハーパー:著 青木創:訳

 

 この作品がデビュー作というのですから、完成度の高さには驚きです! Jane Harperさん、おめでとうございます!

 

 近年、サイコスリラーやダークミステリーといった牋鼎ぁδ砲し廊瓮潺好謄蝓爾鯑匹爐海箸多く、海外ミステリー小説好きですが、ミステリーを読むことにお腹一杯な感じがありました(最近は犬系ミステリーしか読んでいませんが)。ですが、この"The Dry"は、健全なと言ったら変ですが、バイオレンス度・サイコ度・ドロドロ度(?)で勝負するのではない、純粋にストーリーやプロットで読ませるミステリーで、ぐっと引きこまれました。

 ミステリーも、結局は人間性を描いた文学だと思うので、読むにあたっては、登場人物、とくに主人公が丁寧に描かれているかを重視しています(トリックとか、舞台設定も大事ですが)。主人公に感情移入できなければ、読み続けるのが苦痛になってしまいます……。その点、この作品は主人公のアーロン、相棒役のラコのキャラクターにすっと入っていけて、心地よい読後感を味わうことができました。

 

 年々、牋鼎ぁδ砲し廊瓮潺好謄蝓爾読みづらくなってきているので(以前はサイコスリラーとか、大好きだったのに)、こういう安心して読めるけど、骨太・本格派の作品と出会うと、うれしくて小躍りしたくなります!

 

(それにしても、早川書房はカズオ・イシグロをはじめ今年のノーベル賞受賞者の著作も刊行しているし、大当たり!ですね。)

オーストリア

 

 しばらく前に読了した、こちらのミステリー。

 

刺青の殺人者

刺青の殺人者

アンドレアス・グルーバー:著 酒寄進一:訳

 

 作者は、ドイツ語圏で大人気の、オーストリア人作家。前作『夏を殺す少女』もそうでしたが、独特の暗さと、重厚な空気感、かつスピーディーな展開という、読み応え抜群のミステリーでした。とくに終盤は、まさに手に汗握る展開で、はやる気持ちでページをめくりました。

 本作も前作同様、若い女性弁護士・エヴェリーンと、中年シングルファーザー(ちなみに喘息持ち)の刑事・ヴァルターがダブル主役という形です。ふたつの物語が交差し、最後はひとつになって怒涛のクライマックスへ!テンポアップするまでの序盤から中盤、もうちょっとじっくり読みたかったのですが、ここのところゆっくり読書する時間がなく、ちょっと流し読み気味になってしまったのがもったいなかった……。

 グルーバーは、『黒のクイーン』(男性の探偵・ホガートが主人公のシリーズで、古典映画が題材となっている)、『月の夜は暗く』(女性捜査官・ザビーネと変わり者の男性分析官・スナイデルのコンビのシリーズで、古典文学が題材)と、複数のシリーズをかき分けているようです。

 個人的には、スナイデルのキャラクターが魅力的(というか個性的)な『月の夜は暗く』が、いまのところシリーズ中いちばんかなと思っています。作中、『もじゃもじゃペーター』という絵本が出てくるのですが、タイトルだけで読みたくなりました(といっても、これを「見立て殺人」に使うくらいなので、子供向け?と思いたくなるような残酷物語のようですが……)。シリーズの続きは本国では刊行されているようなので、翻訳が出るのを楽しみにしています(出てほしい!)。

青い万年筆

 

 22日は翻訳ミステリー大賞授賞式が東京で開催されました。地方からえっちらおっちら上京して、こっそり参加してきました。

 今年の大賞は、『その雪と血を』でした! 本賞は授賞式会場での生開票なので、目の前で大賞が決まって大興奮。しかも、自分が読者賞で一票を投じた作品が大賞を受賞したので(読者賞とのダブル受賞)、とてもうれしかったです。『その雪と血を』は、ことあるごとに勉強仲間や読書仲間におすすめしてきた作品なので、なんだか感慨深いものが……

 

その雪と血を

 

 授賞式では、対談あり、出版社対抗のイチオシ本バトルありと、盛りだくさんの内容で、駆け出し翻訳者としては、ひじょうに勉強になりました。一日で一気に「読みたい本」が増えて(増えすぎて)、途方に暮れています。

 

 数日前から読み始めて、東京に着く前に読み終わった本もミステリー。この作品を旅のお供にしました。

 

青鉛筆の女

 

青鉛筆の女』 

ゴードン・マカルパイン:著 古賀 弥生:訳

出版社の作品紹介ページ→東京創元社

 

 「凝りに凝った」という表現がぴったりはまる、説明するのがちょっと難しいミステリーです。ストーリーは、「A:タクミ・サトーという日系アメリカ人の作家による、日系アメリカ人(スミダ)が主人公のミステリー」、「B:その作家がウィリアム・ソーンというペンネームで執筆した、ジミー・パークという朝鮮系アメリカ人を主人公とするミステリー」、そして、「C:その作家とやり取りしていた、出版社の編集者からの手紙」という3つのパーツで成り立っています。章ごとに語り手や時間軸が変わるミステリーは多いですが、本来まったくの別物であるはずのAとBが、リンクしながら進んでいく展開は、なかなかスリリングでした。

 

 作品の時代は戦時中で、真珠湾攻撃以降、厳しい立場に立たされた新人の日系アメリカ人作家タクミは、作品を世に出すために、途中まで執筆が進んでいた、日系アメリカ人スミダを主人公とした作品(Aの元作品)を、朝鮮系のジミー・パークを主人公とする作品(B)へと、大幅に変更することを余儀なくされます。出版社の編集者から手紙(C)を介して様々なダメ出し、要求をつきつけられ、タクミはそれにひとつひとつ応じながら、作品を書いていきます。主人公の人種、キャラクター設定のみならず、作品のジャンル(ハードボイルドから低俗なパルプスリラーへ)も変え、あげくの果てにペンネーム(日系人だということを伏せるため)を使うよう迫られ、もう自分の作品とはとても言えないもの(B)を、ひたすら書き続けていく……そんなタクミの感情を想像すると、背筋が寒くなりました。

 こうして不本意な作品を「書かされて」いたタクミは、出兵後、戦地で「書きたいもの」を書くわけですが、それがAです。彼が主人公に選んだのが、Bを書くために「存在を消された」あの日系アメリカ人、スミダというのですから、作家の心情は推して図るべし、です。中断していたAを再び書き始めたともいえるのですが、最初に書き始めた頃とはタクミ自身を取り巻く状況が大きく変わっている。そこで、作品の世界も、中断したところから再開するにあたり「一瞬世界が暗転したかと思うと、何もかも変わっていた」という設定にします(このあたりはちょっとSF風)。

 当然、スミダにしてみれば、まったく訳がわからない状況に放り込まれてしまうわけで、作家が味わった理不尽な仕打ちが、フィクションという別の形で表現されているといってもいいでしょうか。AもBも、単独の小説としてみれば、ミステリーのジャンルに入ると思いますが、この『青鉛筆の女』という作品全体で考えると、最大のミステリーは「スミダがAで味わっている世界」ではないかと感じました。つまり、スミダにとってのミステリーなのではと。

 

 この作品、あまり複雑に考えて読んだり、深読みすると、逆に作品のいいところが見えなくなってしまう気もします。素直に、3つのパーツが交錯する虚構の世界にひたる、というのが正解なのかもしれません。

 

 ところで、アメリカでは、編集者が原稿に「青」を入れる(青いペンでコメントを書く)ので、「青鉛筆」になるようです。これが日本だと「赤」になるわけで、タイトルも「赤鉛筆の女」……なんだか「赤ペン先生」みたいでしまらない感じ。原題がWoman with a Blue Pencilなので、翻訳版のタイトルは直訳なんですね。今年の翻訳ミステリー大賞に選ばれた『その雪と血を』(原題はBlood on Snow)もそうですが、翻訳書を出版するうえで、タイトルの「引き寄せ力」は大きいなと思いました。

コーヒーと本

 

 先日、出版翻訳を勉強している仲間に声をかけて、リーディング勉強会を開催しました。講師をお招きするコネもないので、参加者がめいめいレジュメを作成し、そのレジュメをたたき台に、各自プレゼン、コメントしあうという形式でした。

 やってみて感じたのは、とても勉強になった!!ということ。これまで、リーディングの通信講座なども受講してきましたが、やっぱり「リーディングは原書を読んでなんぼ、レジュメは書いてなんぼ」なんだなと実感。

 こうした勉強会という形で、締め切りを作ってリーディングをするというのは、実際の仕事に向けての予行演習にもなりますし、モチベーションの面でも大きな刺激になります。そして、自分のレジュメを誰かに実際に読んでもらうという行為は、いい意味でプレッシャーになります。さらに、ほかの人が書いたレジュメを読むと、「こういう風に表現すればいいのか」「こんな工夫もできるんだ」といういろんな発見があります。お互いのレジュメの良いところを真似しあって、次の自分のレジュメに活かしていく。本当に有意義な勉強会でした。

 今回の勉強会用に、わたしはこちらの作品でリーディングしました。

 

The Buried Book  by D. M. Pulley

 

<ストーリー概要>

 1952年夏。デトロイトに暮らす9歳の少年ジャスパーは、ある日突然、母アルシアに田舎の伯父の農場へと連れていかれる。「伯父さんの言うことをよく聞いて、いい子にしているのよ」そんな言葉と、着替えと聖書の入ったトランクひとつを残して、母はどこかへ姿を消した。

 いい子にしていれば、きっとお母さんは帰ってくる。そう信じるジャスパーだったが、アルシアはいっこうに姿を現さない。なぜか警察も、その行方を追っている。実はアルシアには人に言えない過去があり、その過去が、いままた暗い影を落としていた。

 ジャスパーは、偶然見つけた母の古い日記を頼りに、母親の過去をたどりはじめる。そして、悲しみと汚れに満ちた大人の世界へと足を踏み入れる。違法行為、スキャンダル、殺人……。アルシアの身に何が起こったのか? ジャスパーは、母アルシアと再会することができるのか?

 

<感想>

 1950年代のアメリカ・ミシガン州の田舎を舞台にしたクライム・サスペンス。犯罪に巻きこまれた母を探す主人公の少年が、悲しみと困難に立ち向かっていく様子が描かれていて、少年の成長物語としても読むことができるなと思いました。長めの作品ではありますが、テンポよく話が進むので、最後までページをめくる手が止まることはなかったです。

 本作の最大の特徴は、アメリカの農村の暮らしや先住民との関係など、時代的、文化的な背景が色濃く表現されているところ。とくにジャスパーが預けられた農場でのエピソードは、物語の強いアクセントとなっています。

 ストーリーの軸となる母アルシアの過去や、現在軸で起こっている犯罪事件に、居留区や先住民といった存在がからむという構図。白人に搾取される先住民という構図を下敷きに、先住民たちのやるせなさや憤りも描かれていて、物語としての深みも感じられました。

 主人公ジャスパーには、過酷な現実が突きつけられます。都会の生活からある日突然農場に放りこまれるという設定もそうですし、肉体的、精神的に傷つく場面がこれでもかと用意されていて、若干九歳の少年が受ける仕打ちにしては、ひどすぎるような気も……ですが、ジャスパーがあらゆる困難を持ち前の賢さと機転、そして農場での生活で培われていく逞しさで乗り越えていく姿には感動を覚えました!

 ハッピーエンドというよりも、せつないラストなので、読者の好みも分かれそうです。でも、悲しみやせつなさという余韻を残すところも、この作品のひとつの魅力といえるかもしれません。ミステリー好きにはもちろんのこと、ヤングアダルト小説の愛読者にもお勧めしたい作品です。

 Amazon.comでも800件以上のレビューが寄せられているベストセラーなので(本作著者のデビュー作"The Dead Key"(2015)は、レビュー8000件以上で、星の平均4以上という高評価)、翻訳書が刊行されないかと、密かに楽しみにしているのですが、テーマ的に難しいかもしれません……。

 

<個人的な評価>星4

本と花

 

 先日読んで、あまりにおもしろかったので、リーディングの練習にとレジュメを書き始めた作品。とっくに版権が動いていて、翻訳版が出版されるようです!

 

渇きと偽り

 

渇きと偽り 

ジェイン・ハーパー:著 青木創:訳

出版社の作品紹介ページ→早川書房

 

↓原書はこちら。

 

The Dry by Jane Harper

 

 自分が目をつけた作品の翻訳版が出版されるのは、とてもうれしいのですが、レジュメを書いていたところなので、ちょっとせつない感じも……。別に持ちこもうとか考えていたわけではないのですが。

 こちらの作品も、原書が気になっていたところ(結局、通しで読めていないですが)、翻訳版が出ました!

 

 

完璧な家』 

B・A・パリス:著 富永和子:訳

出版社の作品紹介ページ→ハーパーコリンズ・ジャパン

 

 

Behind Closed Doors  by B.A. Paris

 

 こういうふうに、本国でベストセラーになっていたり、評判の良い作品が、翻訳されて日本でも出版されていくのを見ると、出版翻訳者としてやっていきたいと考えている者としては、とてもうれしい気持ちです。出版業界(とくに翻訳もの)は厳しい、と常々耳にしていますが、捨てたもんじゃないですね! 2作とも、読むのが楽しみです! 心して読みます!

(とりあえず、リーディングは別の作品を選びなおそう……。)

荒野 

 

 数日前に読んだ"Silent Child"はほぼ一気読みでしたが、こちらも面白かった!数日で読み切ってしまいました。

 

 

The Dry by Jane Harper

 

 オーストラリアを舞台とした、クライムサスペンス。"The Dry"というタイトルにひかれ、Amazon.comやGoodreadsのレビューで高評価だったこともあり、手をつけました。

 

<ストーリー概要>

 連邦捜査官のアーロン・フォークは、少年時代の親友ルークが亡くなったという知らせを受け、20年ぶりに故郷に戻っていた。ルークだけでなく、ルークの妻と幼い息子までもが亡くなっていた。ルークが生活苦から妻と息子を手にかけ、自らも命を絶った心中事件だという。干ばつが引き起こした悲劇。誰もがそう信じていた。

 再び故郷の土を踏んだアーロンの胸には、苦い記憶がよみがえっていた。20年前、アーロンはこの町で起こったある事件の犯人として疑われたのだった。その過去の事件と、ルークの死の謎に、否応なく巻きこまれていくアーロン。

 アーロンは地元警察のラコと協力して、捜査を開始する。ルークは本当に家族を殺したのか? 20年前の事件の真相は? 焼けるような暑さと渇いた空気が、アーロンの思考を阻む……。

 

<感想>

 プロットと伏線の張り方が絶妙で、とてもデビュー作とは思えない完成度の高い作品でした。関係なさそうに見えるエピソードが、実は大きな意味を持つ。ミステリーにはよくある設定ですが、さりげなく、かつきちんと、推理に必要な事実が提示されています。読者に対する、作者のフェアな姿勢がうかがえます。謎解き部分で「あれって、これの伏線だったのね!」とわかったとき、爽快感をおぼえました。

 主人公アーロンのキャラクターもよかった。連邦捜査官ですが、主に「お金」がらみの事件を担当しているようで、タフガイという雰囲気ではありません。といって、クールというわけでもない。強さよりも、やさしさ、誠実さが前に出ている、そんな人物です。捜査中も、結構ひどい目にあうのですが、感情をあらわにすることはほとんどなく、淡々と捜査を進めていきます。作中、アーロンの性格が「安定している(stable)」と表現されていましたが、まさにそうだと思いました。

 ただ、過去の事件のこともあり、他人に心をさらけ出せない、そんな暗い一面もあり、明るくわかりやすい主人公が好きな読者なら、ちょっといらいらするかも? 

 アーロンの相棒となるラコもいい味だしています。人物を見抜く目を持っているようで、アーロンを信用に足りる人物と瞬時に判断し、友情を築いていきます。そんなふたりが、なかなか見抜けなかった真犯人。わたしは完全にノーマークでした……。作者に完敗!です。

 

 "The Dry"というタイトル通り、町も人も渇ききり、むき出しになる欲望や感情。この「干ばつ」という自然災害はストーリーに彩を添えているだけでなく、クライマックスで重要な意味を持ちます。こういう舞台設定のうまさも、評価が高いポイントではないかと思いました。

 

<個人的な評価>☆5

川と町

 

 受講中のリーディング課題用にと、Goodreadsで評判のよさそうだったこちらを読了しました。

 

 

Silent Child  by Sarah A. Denzil

 

 いわゆる「サイコ・スリラー」ものです。サイコ・スリラーといえば、『ゴーン・ガール』や『ガール・オン・ザ・トレイン』のイメージですが、こちらもやはり女性が主人公(『ゴーン・ガール』は夫婦ですが)です。イギリスのアマゾンでベストセラーリスト("Crime、Thriller and Mystery"カテゴリー)のトップにあがっているということで、期待して読んでみました。

 

<ストーリー概要>

 エマは10代で母親となり、生まれた息子エイデンと、夫ロブと幸せに暮らしていた。だがエイデンが6歳のとき、悲劇が起こる。大雨で近所の河川が氾濫し、エイデンが流されて行方不明になってしまったのだ……。それから10年。つらい日々を乗り越え、新たな人生を歩みはじめたエマ。離婚、再婚を経て、出産を数週間後に控えた彼女のもとに、驚愕の知らせが入る。エイデンが見つかったというのだ。駆けつけたエマが見たのは、16歳になった息子の姿だった……。

 10年もの間、誰かに監禁されていたエイデンは、言葉を失っていた。警察は犯人を捜すが、捜査は難航する。現在の夫のジェイクや、元夫ロブまでもが疑われ、マスコミも騒ぎはじめる。いったい誰が、エイデンをこんな目にあわせたのか? 犯人は、エマの身近な人間なのか?

 

<感想>

 読み終わったあと、率直に「よくできたサイコ・スリラー」という印象を受けました。まず、舞台背景やキャラクター設定が明確で、登場人物の人数も多すぎるということもなく(翻訳ものにありがちな、この人だれだっけ?ということもなく)、すんなり読めました。

 読みやすいというのもよかったのですが、何といってもこの作品のおすすめポイントは、肝となる爐劼佑雖瓩旅みさです。思わず「おおっ」と声が出たくらい。話が7〜8割くらい来たところで、真相に迫る山場が設けられているのですが、そこで1回ひねりがあって、さらにもう1回、そして最後にもう1回ひねってくるという、隙のない展開です。最初のひねりは、そこまでの流れで「やっぱりこいつが犯人か〜」と落ち着きそうになるのですが、そう話は簡単に終わらないよというわけです。

 その山場に来るまでの狎り瓠淵┘泙隆蕎陲瞭阿とか、エイデンの行動描写とか)も、これでもかというくらい緻密に描かれています。中間部の展開がやや遅い・重たい感じも受けましたが、終盤のテンポアップを際立たせるための爐犬蕕鍬瓩塙佑┐襪噺果はあったと思います。わたしはまんまと引っかかり、ギアチェンジしてからは怒涛の一気読みでした。

 

 マイナス点をあげるとすると、エマの人生が盛りだくさんすぎる点? 子供だけでなく、その直後に両親まで亡くし(両親についてはひねりに絡んでくるわけなのですが)、やっと立ち直って、再婚して、もうすぐ出産、というときに、死んだと思った子どもが現れて、身重の体でものすごいストレスにさらされるという……。最後なんて、陣痛が始まった体で格闘し、走り回ってるんですよ!? ちょっと無理があるような……(母は強しなのか?)。

 それと、真相に関わる重要な人物の影が薄かった点も気になりました。犯人が中盤以降にやっと出てくる(厳密には狹仂讚瓩靴燭箸聾世い鼎蕕し舛如某擁で、キャラクターや内面描写がほとんどされておらず、ちょっとインパクトが弱かったかなと。あと、個人的に読んでいて一番「感じ悪い」と感じた人物が、最後のひねりのところで一応の制裁を受けるのですが、いまいち釈然としない感も残りました(わたしはもうちょっと別の解決方法もあるんじゃないかと感じました)。

 

 余談ですが、暴力シーン(ほとんどなく、終盤に突然出てくる)が結構生々しかったのも印象的でした。エグイとかではなく、冷静に淡々と描写されているので、かえって怖かった……。まあ、それだけ作者の描写力が優れているという証拠なんでしょう。これが女性作家ならではなのかはわかりませんが、いままで読んだ女性作家のミステリーには、少なからず同じ傾向が見られたように思います。

 

<個人的な評価>☆4.5

ランタン

 

 年末からこっち、ほぼ休みなしで取り組んできたお仕事がひと段落しました。ノンフィクション、フィクションと、続けて訳す機会をいただき、今後に弾みが(気持ち的に)つきました。

 とにかく、いろいろと滞っていることがあるので、そちらを片付けていこうと思います。ということで手始めに、積読本の山に手をつけました。

 まず、読みかけだったこちらを読了。

二人のウィリング

二人のウィリング』 

ヘレン・マクロイ:著 渕上 痩平:訳

 

 最近、テンポの速いミステリーを読むことが多いので、安心して読めました。いわゆる「フーダニット」のおもしろさが味わえる作品で、劇的なエピソードや場面展開は少ないものの、そのぶんクライマックス(犯人がわかるところ)で大きな衝撃が来るという、読み応えという点でも満足のいく作品かと思います。

 こういう本格ミステリーはじっくりと腰を据えて読まないと、流れがうまくつながらず、?になってしまいますね。あまり注意せずに読んでいた部分が、あとの伏線になっていて、「どこに書いてたっけ?」と何度かページを戻りました…

 

 残念ながら、こちらは中断……

 

 

His Bloody Project 

by Graeme Macrae Burnet

 

 どうもこの作品の持つ「人生・将来への行き詰まり感」「暗さ」に入っていけませんでした……。半分も読めていないので、おもしろいのはこれからなんでしょうけど……。でも読みづらい、重い、ということは、それだけ作者が「情景や心理を書きこめている」からこそなんでしょう。わたしが「ミステリー」として読もうとしていたことにも、原因があるのかもしれません。

 

 こちらは一気読みでした!

 

その雪と血を

 

その雪と血を

ジョー・ネスボ:著 鈴木恵:訳

出版社の作品紹介ページ→ハヤカワ・ミステリ

 

 まず驚いたのは、その(本の)薄さです。しかも、ハヤカワのポケミスなのに、2段組みじゃなくて1段組みです。ちょうど(?)眼精疲労からくる体調不良でダウン(仕事が終わってどっと来たのか……)していたので、横になりながら読みましたが、具合の悪いときに読んでもこの作品の良さは存分に伝わってきました(ってそんなときに読むのもなんですが)。

 主人公が殺し屋で、暴力シーンも結構あるのですが、それを包み込むようなぬくもりがストーリーから感じられます。バイオレンスとロマンティック、パルプ・ノワールの低俗さと詩的な文学性が両立しているという、ちょっとほかのミステリー小説にはない雰囲気が味わえる作品です。本作、「翻訳ミステリー大賞」の候補作になっています。「読者賞」に一票投じようと思っていますが、締め切りまでにほかの作品が読めなければ(読めても)、こちらで投票しようかな……。

夜の読書

 

 寝る前のお楽しみに、この本を読みはじめました。

 

二人のウィリング

二人のウィリング

ヘレン・マクロイ:著 渕上 痩平:訳

出版社の作品紹介ページ→筑摩書房

 

 ヘレン・マクロイ、大昔に読んだことがあるのですが、最近邦訳が刊行された作品もあるんですね。IN POCKETの「文庫翻訳ミステリベスト10」にも選ばれていたので(総合ベスト10)、気になっていた作品でした。

 まだ序盤ですが、ページターナーなミステリーです。自分(ウィリング博士)の名を名乗る男と遭遇し、その男を追ってとあるパーティーへ潜入、そして殺人事件が起こる…という展開。まず、冒頭でぐっとつかまれました。長さもほどほどですし、苦手な「バイオレンス色・陰鬱ムード強め」の作品でもないので、かなり読みやすいです。

 

 一方、いまいち波に乗れないのがこちら……

 

 

◆His Bloody Project

by Graeme Macrae Burnet

 

 舞台となる時代や土地、文化的背景(19世紀スコットランドの寒村が舞台)になじみがないので戸惑うことが多く、辞書を引いても?が残ってしまったりと、かなりてごわい作品です。

 それと、かなり暗い……主人公が貧しい農民(小作人)の息子で、生活も苦しく……となるといきおい暗くなるわけですが、いまの気分としてはちょっと重たすぎるのかもしれません。

 いま3分の1あたりなので、事件(主人公が起こした殺人事件)の部分に近づいてくれば、読書のテンポアップもできるかも?と期待しつつ、もう少し辛抱して読んでみようかと思います(お蔵入りしないことを祈りつつ…)。

 

 原書を読むときは、自分がリーダーとしてレジュメを書く・訳す立場だったらということを意識するようにしていますが、こういう「読者に少々我慢を強いる作品」は、どう評価するか(アピールするか)が難しいです。「最後まで読めばおもしろい!」と紹介するのでは、最初から「前半読みづらい・おもしろくない」と言っているようですし……(それが正直な感想なら、そう評価することになるとは思いますが)。

観覧車

 

昨日から、こちらを読みはじめました。

 

Joyland

ジョイランド

スティーヴン・キング:著 土屋晃:訳

出版社の作品紹介ページ→文藝春秋BOOKS

 

 スティーヴン・キングの作品って、よく考えたらまともに読んだことはありません(映画はそこそこ観ているのに)。

 普段翻訳物を読まない家族が、『11/22/63』を読んで「おもしろかった、白石朗さんの訳文がとても読みやすかった」と言っていたので、そっちも気になるところですが……。

 こちらは、解説によると「感涙必至の青春ミステリー」とのことなので、かの「スタンド・バイ・ミー」を彷彿とさせます。出だしを読んだところなのですが、さすがキング、ぐっと読者を物語に引きこむ舞台設定。先が楽しみです。

 

 それと、微妙にこちらにも手をつけています。一日数ページも読めていませんが・・・

 

His Bloody Project

by Graeme Macrae Burnet

2016年のマンブッカー賞・ショートリストにノミネートされた作品です→Man Booker Prizes

 

 1800年代後半、スコットランドである凶悪な殺人事件が起こり、その犯人である少年(当時17歳)が手記を残していた。この手記を著者が偶然発見、当時の証言や精神科医、裁判の記録とあわせて、事件の真相に迫っていく……という設定なのですが、もちろんフィクション。作中には、手記、証言、記録が(その体裁を保ったまま)掲載され、実際にあった事件のリポート、研究書を読んでいる気分になります。

 ブッカー賞に詳しくはないのですが、こういった異色作がノミネートされること(そして受賞に迫ったこと)はかなり異例だったのではないでしょうか。

 プロローグを経て、「手記」の部分を読んでいるところですが、いったいどんな展開になるのか?


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