鳥の羽がテーマのノンフィクション。

 

The Feather Thief by Kirk Wallace Johnson

 

 "The Feather Thief(羽泥棒)"というタイトルに、「羽を盗むってどういうこと?」と興味をひかれて読み始めました。エドウィン・リストという将来有望なアメリカ人の若きフルート奏者が、子どものころから趣味でやっていたフライタイヤー(フライフィッシング用のルアー)作りに取りつかれてしまい、信じられない行動に出ます。アーティスティックなフライタイヤーを作るため、美しい鳥の羽をどうしても手に入れたいと、ロンドン自然史博物館に侵入し、貴重なコレクションを盗み出したのです。300羽近くもの、大量の剥製をです! この事件を知った著者が、熱心な調査をもとにまとめたのがこの作品。まさに、事実は小説より奇なり、ですね。

 

 盗んだのが博物館の所蔵品ですから、当然、歴史的・科学的価値があります。コレクションがいかにして集められたかを明らかにするため、鳥の羽がいかに人々を魅了してきたか、文化や歴史、博物学者やコレクターの生涯といった「鳥の羽」にまつわるエピソードも紹介されています。極楽鳥(フウチョウ)やカザリドリなど、南国の美しい鳥の羽は、古くは女性用の帽子飾りとして、ヨーロッパで熱狂的な人気があったそうです。高値で取引されるため、危険を冒してでも標本を採りにジャングルへと旅立つ冒険家も多く、乱獲のせいで、絶滅の危機に瀕した鳥も……。

 

 著者はふとしたきっかけで事件のことを知り、それこそ取りつかれたように何年も調査と取材を続け、ついにはリスト本人にインタビューするところまでこぎつけます。犯行の様子や犯行後の行動、後日談など、リストの視点で臨場感たっぷりに描かれているのも、著者がリスト本人と直接(何時間も)話をしたからこそ。警察の捜査や博物館員の思い、フライタイヤ―界の反応などもサイトストーリー的に盛り込みつつ、事件はその後、意外な結末を迎えるのですが……と、クライム・ノベルを読んでいるようなドキドキ感もありました。読み物としてもじゅうぶん楽しめる一冊です。

 

 この事件を取りあげた、ナショナルジオグラフィックの記事がありました。

 →日本語版

 →英語版

 

 鳥の名前や学名など、専門用語もたくさん出てくるので苦労しますが、オーディオブック併用でなんとか読み進めています。なじみのない単語も、発音を聞くととっつきやすくなりますね。

 

ルリイロコンゴウインコ

(フライタイヤ―には、こういうきれいな鳥の羽を使うんでしょうか?)

 

 子どものころの愛読書といえば、加古里子さんの『海』とか『地球』でした。あのびっしり描きこまれた絵本に、本当にわくわくしたものです(「ことばのべんきょう」シリーズも大好きでした)。いまでも本棚の一員で、ふとしたときにページをめくるのですが、あのときと同じ感覚が味わえるんですよね。わたしの一部は、確実に「加古先生が彩った世界」でできているんだな、とあらためて感じています(加古先生、ありがとうございました。心から、ご冥福をお祈りいたします)。

 

 そういうわけで、イラスト図鑑には目がありません。こちらは、最近手に入れた一冊。

 

Nature Anatomy by Julia Rothman

 

 この手のイラストは好みが分かれるところだと思いますが、わたしはほっこりしていて好きです。頭から順番に読んでいくのではなく、ぱらぱらめくって、気になったページを読むのが楽しい。地球の内部、鉱物、自然現象、昆虫、野草、生き物と、「自然」にまつわるいろいろなものが紹介されています。煮詰まったときの、気分転換にぴったりです。

 いつか、こういう図鑑の翻訳もしてみたい。そのためには、もっと動物や自然に興味をもって、語彙や知識も増やさないといけませんね。

 著者のJulia Rothmanさんのインタビュー映像がありました。

 

 

パターンデザイナーとして世に出た方のようです。デザインしたパターンは、バスや建物のような大きなスペースも飾っているとか。

 

 最近は、動物ものが流行っていますし、図鑑や写真集の翻訳書もたくさん出版されています。書店やAmazonで見つけてしまうと、ついつい買ってしまいそうになります……。

 

ムース

(ヘラジカ。鼻に愛嬌があります。)

カタツムリ

(ナメクジは苦手なのに、カタツムリはかわいく見えるのは、背中にしょってる貝があるから?)

 

 いつだったか、原書ハンティングをしていたときに出会って以来、ずっと気になっていた作品を読み終えました。読んだのは翻訳書のほうですが、その翻訳が「こんな風に訳したい」と思う、まさに自分がめざす訳文で、心が震えました。

 

カタツムリが食べる音

『カタツムリが食べる音』

エリザベス・トーヴァ・ベイリー:著 高見浩:訳

 

The Sound of a Wild Snail Eating by Elisabeth Toa Bailey

 

 ある日突然、難病に侵された著者と、一匹のカタツムリとの不思議な絆を描いた自伝的ノンフィクションです。ほとんど体を動かすことができない著者は、ひょんなことからベッドサイドにやってきたカタツムリの観察を通して、この世に存在するということ、生きるということを見つめなおし、ふたたび前を向いて生きる勇気を取り戻していきます。

 カタツムリは「のんびりした生き物」というイメージでしたが、この本を読むと、なんて魅力的な生き物なんだろうと驚かされます。冒険心にあふれ、行動的で、食欲旺盛(ネットで「カタツムリの食べる音」を聞いてみましたが、なんともいえない音でした)。小さな体に生命力がみなぎっている感じ。もうじき梅雨入りですが、カタツムリたちに会えるのがなんだか楽しみになってきました。

 

 翻訳は、ヘミングウェイの新訳でも知られる高見浩さん。流れるような、語りかけるような、読んでいて心地よい、とても美しい訳文です。音読してみると、その美しさがよくわかります。これをお手本にしない手はないので、原書を取り寄せて、翻訳と読み比べてみるつもりです。

 伝記や回顧録って、ノンフィクションとフィクションの中間にあるジャンルじゃないかなと。どちらに寄せるかで、作品の印象がまったくちがってくる。もちろん、原文の雰囲気や文体次第ですが、あまり「読み物」っぽく訳してしまうと、実話の重みが感じられなくなるでしょうし。著者の「生の声」を壊すことなく読者に伝えられるような、そんな翻訳ができるようになりたいと強く思いました。

 今月は、仕事やらトークイベントやら、ミステリーの読書会やらで、犬本以外の本を久しぶりにまとめて読みました。積読本も(一部を残して)解消、ということで、ついつい新しい本に手が伸び……調子にのって、何冊かポチってしまいました。

 

I Could Chew on This : And Other Poems by Dogs  by Francesco Marciuliano

 

 これでもかというくらい、犬本な本です。愛犬家のみなさんなら、「なんでそこ、かじっちゃうかな」という思いをしたことは一度や二度ではないはず。うちの子が子犬のとき、買ったばかりの本とか、革のペンケースとか、もうかじられまくってました。タイトルに「犬によるポエム」とありますが、写真と詩(犬の「内なる声」だとか)がペアになった構成で、犬好き必笑、という紹介文にひかれてお取り寄せ。

 

 同じ著者の、こちらも合わせ買い。

 

You Need More Sleep: Advice from Cats by Francesco Marciuliano

 

 こっちは猫本です。わたしは人生で1匹しか猫を飼ったことがないのですが、ペットの猫の頭数がついに犬の頭数を上回り、猫人気に拍車がかかっているので、猫本が勢力を拡大しているようです。「猫から人間へのアドバイス」ということで、単なる「かわいい猫ちゃんの写真集」を超えた、意外に深い内容? プレゼントにもよさそうな本です。

 

 

犬と猫

(にゃんことわんこ)

雨降り

(ずーっと雨です。散歩に行けなくて、人間も犬もうんざりです……)

 

 Courseraでペット関連のコース(The Truth About Cats and DogsAnimal Welfare)を受講しています。第3週のカリキュラムまで進みましたが、どちらのコースも内容が充実していて、とても興味深いです。映像教材に登場する農場の風景や動物にも癒されています。

 動物に関する学問といえば、これまで獣医学や畜産学、生物学といった理系の分野(Animal Science)を連想していたのですが、社会学、哲学、文化、芸術の観点から動物を研究する分野(Animal Studies)もあるんですね。動物福祉学(Animal Welfare)や動物とヒトとの関係学(Anthrozoology)といった言葉は、コースを受講していて知りました。

 動物と文学やアート、映画の関係をテーマとする分野もあるんだとか。そういえば、古典の名作のなかにも、犬や動物は頻繁に登場しています。それで検索していると、「文学のなかの動物」を時系列にまとめたインフォグラフィックを見つけました。

 

画像をクリック(参照元:www.helpucover.co.uk/)

 

 やっぱり、動物文学の古典として一番に頭に思い浮かぶのは、メルヴィルの『白鯨』でしょうか。犬の小説といえば、ジャック・ロンドンですね。「ピーターラビット」のシリーズは、よくよく考えると、子供のころに初めて読んだ「海外の動物小説」かもしれません。そうか、「プーさん」も「動物小説」なのか? などと考えていると、大学院でアメリカ文学を研究していたとき、このテーマに出会っていればよかったと思ったりしました(ちなみに、修士論文のテーマは、ホーソーンの『紐文字』でした)。

 

 こんなのも見つけました。

 ◆The 10 Most Beloved Dogs in Literature

 

 このなかでは、「クリフォード」が好きです!

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