雁の群れ

 

 大好きな作品の続編を読みました。

 

"The Wild Robot Escapes" by Peter Brown

 

 第1作はこちら。翻訳書も刊行されています)。

 

"The Wild Robot" by Peter Brown

 

野生のロボット

『野生のロボット』 

ピーター・ブラウン:著 前沢明枝:訳

 

 無人島に流れ着いたロボットが、生存本能を発揮(発動?)して、自然のなかで生き抜くため、「野生のロボット」へと成長していくという、とても風変わりな、でもとても心温まるお話です。ロボットのロズは、ひょんなことで赤ちゃんガンのママになるのですが、それをきっかけに、ロズを警戒していた野生動物たちも心を開き、互いに助け合うように。そうしてなかよく楽しく暮らしていたロズたちですが、1作目の最後で、思わぬ事態が発生し……。

 ロズやロズの息子(りっぱなガンに成長)、動物たちがどうなったのか、それがどうしても知りたくて、次作を手にとりました。オーディオブックと併読したのですが、オーディオブックがもう最高で、聴き終わるのがおしいくらいでした。ナレーションはもちろんですが、効果音やテーマ曲もすばらしく、子どもが聴いたらわくわくすること間違いなし。一度聴いただけではもったいないので、もういっぺん通り、寝る前に少しずつ聴いていこうと思います。

 

 ロボットが主人公の話は、ともすれば、テクノロジーvs自然、みたいな構図になりがちですが、ロズと動物たちはお互いを認めあい、一緒に生きる道を選びます。"The Wild Robot Escapes"では、ロズと人間、社会とのかかわりが多く語られているのですが、ロズは持ち前の「学習能力」と「適応力」で、新しい環境でも奮闘します。でもロズは、人間のために働くことを目的に作られはいても、本当の自分は「野生のロボット」。自分らしく生きるには、といったロズの心(ロボットではありますが)の葛藤も描かれています。いろんなテーマに通じる、なにげに深い作品です。子どもだけでなく、大人も読むべき本じゃないかと強く感じました。

 

 とにかく、ロズがチャーミング。こんな素敵でやさしいキャラクターを生み出せるなんて、著者のお人柄なんでしょうか。洋書で読書会をする機会があったら、いちばんに選びたい作品です。

天の川と少年

 

 宇宙と犬が大好きな、少年のお話を読みました。

 

See You in the Cosmos by Jack Cheng

 

 11歳のアレックスは、宇宙が大好きな男の子。愛犬にカール・セーガン(『コスモス(Cosmos)』というテレビ番組を監修したことでも知られる、アメリカの著名な天文学者)と名づけているほど。父親を亡くし、コロラド州で母親とふたり暮らしのアレックスは、11歳にしてはずいぶん大人びた少年。L.Aに暮らす年の離れた兄ロニーの仕送りを受けながら、気分のすぐれない(おそらく心の病を患っている)母親の世話を焼き、家事をこなし、アルバイトで稼いだお金を資金に、コツコツと自作のロケットを作っている。

 そのロケットを打ち上げるため、ニューメキシコで開催される宇宙ファンの一大イベントに参加しようと、アレックスはひとりで列車に乗る。それは、さまざまな人と出会い、自分の家族の秘密をも解き明かす、大冒険の始まりだった……。

 

 アレックスが本当にいい子なんです!家族環境のせいか(母親がほとんど何もできない・しない状態)とてもしっかり者なんですが、つらいことがあると大泣きしたり、ちょっと幼いところもあります。宇宙人がいると信じていて、自作のロケットに搭載して宇宙に打ち上げる予定のiPodに、せっせと「地球人のいろんな音声」を録音しています(物語は、アレックスがiPodを通して宇宙人に語りかける、という形で進む)。

 

 舞台はコロラド州からニューメキシコ州(UFOで有名)、ネバダ州、カリフォルニア州へと、めまぐるしく移動。最初はひとり旅だったアレックスですが、道中さまざまな人と出会い、交流し、助けられ、一緒に旅を続けることになります。その仲間のひとり、作家で僧侶みたいな雰囲気のゼッドという男性が、いい味だしてます。最初、ゼッドは「沈黙の行」をしていて、「小さな黒板にチョークで文字を書く」というなんともアナログな筆談でコミュニケーションをとっているのですが、その辺りのやりとりなんかも、絶妙に描かれています。彼とアレックスの凸凹コンビがほほえましくて、でも会話は深かったりして、ぐっときました。

 

 犬……がことさら取りあげられる話ではなかったのですが、愛犬カール・セーガンには一大事が起こります。カール・セーガンは、アレックスの親友で、大切な家族。この「家族」というのが、本作のメインテーマ。その家族をめぐって、アレックスの旅は思わぬ方向へ進んでいきます。

 

 主人公アレックスの話し方が、文体のなかににうまく表現されていて、それが読んでいて楽しかったです。子どもにとって、要点をまとめて話したり、話の途中で適度に間を取ったりするのは難しいことなので、アレックスも、「○○だったんだけど、△△になって、そしたら□□で、それで◎◎が××して……」と、話はじめるとノンストップ。本のなかから、アレックスのはずむ声、息づかいが聞こえてきそうでした。

 頭のいい子なので、ちゃんと順序立てて話してはいるのですが、とにかく全部言いたい!という感じ。アレックスは狄深足瓠扮海鬚弔ないこと、本当のことを話すこと)をとても大切にしている少年。だから、起こったこと、感じたことをすべて、彼なりの言葉で一生懸命表現しようとする。話し方にも、アレックスのキャラクターがちゃんと反映されています。

 

 終盤、アレックスには危機が訪れます。アレックスを守ろうと、彼を取りまく大人たちが奮闘します。ある事情で、家じゅうを掃除する場面があるのですが、「この掃除にアレックスの命運がかかっている」とみんな真剣そのもの。でもやっていることはただの掃除。それが妙におかしくて、久しぶりに本を読みながら声をあげて笑ってしまいました。

 

 この作品には、"You already have it."(「もうちゃんと持ってるじゃないか」)というフレーズが出てくるのですが、それがとても心に響きました。最初は理解できなかったアレックスも、さまざまなことを経験し、言葉の本当の意味がわかるようになります。探しているもの、大切なものは、もうちゃんと持ってる。見えなくても、そこにある。そんな風にわたしは解釈しました。

 

 大人とアレックスのときに軽快な、ときに真剣なやりとりが味わい深く、心に感じるものがありました。それなりにボリュームのある本ですが、文章は平易(たまに宇宙用語とか出てきますが)なので、すらすら読めますし、カテゴリーとしては児童書ですが、"Wishtree"と同じく、大人が読んでもじゅうぶん楽しめる作品です。

 木が主人公の、心温まるお話を読み終えました。

 

Wishtree by Katharine Applegate◆

 

 Amazon.comなどでは児童書のカテゴリーに入っていますが、大人が読んでも楽しめる作品だと思います。

 

 *この作品の紹介動画を発見しました*

 

 

 木(レッドという名前の、オークの古木)が語り手で主人公の物語です。親友であるカラスのボンゴや、レッドを住処にしているオポッサム、スカンク、フクロウ、アライグマといった動物たちが登場するので、動物好きにはたまらない一冊です。

 Wishtree(願い事を叶える木:お願い事を書いた布やリボンを枝に巻きつけて、願掛けをする)として愛され、何世代にもわたって、町を静かに見守ってきたレッド。ある少女が引っ越してきたのをきっかけに、平穏な日々に変化が起こり、レッドの木としての人生もゆるがす事態へと発展していきます。レッドは古木ということもあり、語り口は淡々としているのですが、その言葉はやさしさに満ちていて、しみじみ、じんわり心にしみてきます。

 

 この本、文章もとてもよかったのですが、挿絵がまた素敵でした。オポッサムとかカラスとか、ちょっと強面(?)の動物も、愛嬌たっぷりに描かれているので、思わずほほが緩みます。最後のほうで動物勢ぞろいの場面が出てくるのですが(動画で見れます)、そのイラストが本当に素敵なんです。 

 挿絵を描いたのは、イラストレーターのCharles Santosoさん。この作品以外にも、たくさんの児童書の挿絵を担当されているので、動物ものの作品があったら、ぜひ読みたいと思います。

 

 木は動けないので、流れに自身の運命をゆだねるしかない(レッドいわく、passiveな)存在ですが、目には見えない形で、生き物や人間に働きかけ、さまざまな影響を与えている。1本の木が、町のシンボルになったり、忘れられない思い出になったりする。自然ってそういうものなんでしょうね。読み終わって、そんなことを考えました。

 

 *期待通り、翻訳書が出版されました!

 

『願いごとの樹』

キャサリン・アップルゲイト:著 尾高 薫:訳

 

 タイトルにあるように、「木」じゃなくて「樹」としたほうがしっくりくるので、なぜだろうと調べてみました。どうやら「樹」という字は、「生きている木」にしか使わないようです。レッドは物語のなかで、しっかり生きている木ですからね。

 

冬の木

 

 動物がたくさん登場して、挿絵もツボ、という本に出会うとうれしくなります。手元にあるものだと、こちらもおすすめです。

 

The Illustrated Compendium of Amazing Animal Facts by Maja Saefstroem

 

 この本については、以前に一度アップしているのですが(過去記事)、Majaさんのほんわかした、ちょっと不思議なテイストのイラストがなんともいえません。

 シリーズ2冊目が出版されていました! ほしい!

 

Animals of a Bygone Era: An Illustrated Compendium

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