勉強仲間と一緒に、著作権が切れた大昔の(だいたい100年くらい前の)作品を訳して冊子を作る、という企画を進めています。あくまで内輪で楽しむための同人誌ですが、訳文を形にするという体験をするのも勉強かなと。なんでも好きな短編を選んで訳すというコンセプトにしたのですが、集まった作品は、絵本あり児童書ありゴシックロマンスありの、バラエティに富んだラインアップになりました。この作品たちが1冊の本になった姿を見るのが、いまから楽しみです(しかし、同人誌のタイトルをどうするか……)。

 

 わたしは、『砂の妖精』で知られるイーディス・ネズビットの作品をチョイス。「猫と犬」のお話をまとめた短篇集から2篇と、怪綺談の短編集から1篇訳しています。児童文学×ホラーというのは、ヴィクトリア朝の女性作家によくある組み合わせのようです。でも昔の児童文学って妙に残酷だったりするので(これでもかと不幸がおそってきたり、結構バイオレンスなシーンがさらっと描かれていたり)、よくよく考えると自然な組み合わせなのかも? いっときエドガー・アラン・ポーとか好きでよく読んでいたのですが、またゴシック熱が再発しそうです。

(『砂の妖精』に登場する妖精のサミアドも、たいがい怖い……子どもが泣きそうなレベル→サミアド

 

 だいたい訳し終わって、お互いの原稿にチェックを入れている段階なのですが、自分ではまったく気づかなかったミスの指摘や、この表現だとわかりづらい、曖昧に感じるといった読者目線のコメントなど、とても勉強になります。完全に第三者の目で訳文を読んでもらい、フィードバックを受ける機会というのは、そうそうありませんしね。他人の訳文をチェックするのも、自分だったらこう訳すかな、とか、この表現は自分の引き出しになかったな、とか、気づきが満載です。

 

 なにより楽しいのは、自分の選んだ作品を訳すということ。実際の出版翻訳では、ご依頼あっての仕事なので、基本的に好きな作品を選べるわけではありません。自分がこれぞと思った作品が訳せるなら、訳者冥利につきます。原書ハンティングと企画の持ち込みをもっと頑張ろうと、気持ちを新たにしました。

 

creepy

(怖い話を怖く訳すのは、本当に難しいです……)

 出版翻訳者として、成功率(自分の訳書として出版にこぎつける確率)は低いものの、積極的に取り組みたいこと、それが「出版社への持ち込み」です。この原書を持ち込むぞ!と決めたからには、「この作品ならではの魅力」や「翻訳書を出す意義」がしっかりと出版社に伝わるような、熱い企画書を完成させなければなりません。

 渾身の企画書(レジュメ)を作成するには、原書を読み込むのはもちろんですが、ジャンルや類書を調べ、作品を相対的に評価する視点も大事。「この本いい!」とどっぷり浸っていると、見えてこないものもあります。レジュメでは、熱く、かつ冷静に、作品を語らないといけない。一歩引くって、言うは易し、なんですよね。

 

 さらに、持ち込みには大きな問題が。そもそも、持ち込みをかけようとしている原書の版権(翻訳権)が空いているのかどうか? これを探るルートは、ゼロではなさそうですが、いち個人には難しいし、時間もかかりそう。版権がすでに動いているかもしれない原書のレジュメを書いても、レジュメを書く練習にはなりますが、出版社に売り込めない。

 そこで、新しい本だけでなく、古い本もターゲットにして原書ハンティングするのがいいわけです。さすがに、出版から5年、10年経っている作品で、まだ翻訳書が出ていないなら、版権が空いている可能性は大きいので(何らかの理由で翻訳書が出版できない、しづらい理由がある本なのかもしれませんが)。テーマが普遍的だったり、時代を感じさせないものだったりと、いま読んでもおもしろいと感じる原書はたくさんありそうです。

 

 それもあって、ここしばらく、出版年のやや古い作品にも注目して、翻訳書が出版されいないかどうかをチェックしていました(もちろん、犬や動物に関する本を中心に!)。そのおかげか、ジャンル全体の雰囲気や傾向みたいなものが少しわかってきたような気がします。

 すべての原書を最後まで読むのは厳しいので、Kindleのサンプルがあるものは読みつつ、著者や作品周辺の情報を収集する、という方法で当たりをつけていたのですが、「これは面白い」「ぜひ持ち込みたい」と感じた作品は、見事に翻訳書が刊行されていました!(単純に読書量が足りなくて、すでに翻訳書がある原書に目をつけてしまっただけかもしれませんけど。)とはいえ、「自分が良いと思う本」と「出版社が出版したいと思う本」にそうズレはないらしいとわかり、ほっとしました。

 1冊の本から、芋づる式にいろんな本が見つかるのは楽しいですが、無限に積読本が増えていくのは困りものです。

 

持ち込みの世界は奥が深い

(持ち込みの世界は、奥が深い)

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