アイリッシュウフルハウンド

(左がアイリッシュ・ウルフハウンド)

 

 児童書の「犬本」を読みました。

 

The Poet's Dog  by Patricia MacLachlan

 

 吹雪にあい、迷子になってしまった少年ニッケルと、その妹のフローラ。そんなふたりを助けてくれたのが、人間の言葉を話す犬、テディでした。テディは、ふたりを森の一軒家へと連れていきます。その家で、テディはひとりで暮らしていました。雪に閉ざされた家の中で、助けが来るまでをのりきろうと、ふたりと一匹は力をあわせ、心も通わせていきます。

 なぜテディは人間の言葉を話せるのか。テディの飼い主は詩人というのですが、どうしていまはひとりぼっちなのか。少しずつ語られるテディの過去は、あたたかくも、悲しい物語でした。

 

  原書で100ページほどの短いお話ですが、言葉づかいがとても美しく、心にしみじみと響いてきます。子どもと犬という小さな存在が、身を寄せあい、厳しい状況のなかでもユーモアを忘れずにいる姿にじーんときました。テディという犬の言葉で語られるストーリーは、大人や人間が語り手の作品にはない、不思議な魅力があります(犬好きなら、ますます)。物語のなかでは、テディの言葉は「詩人」と「子ども」にしかわからない、とあるのですが、子どもは誰もが詩人で、子どもの心を持っているのが詩人。ふと、そんなことが頭に浮かびました。

 

 本作の翻訳書が刊行されています。

 

テディが宝石を見つけるまで

『テディが宝石を見つけるまで』

パトリシア・マクラクラン:著 こだまともこ:訳

 

 タイトルの「宝石(Jewel)」という言葉には、実はテディ自身も知らなかったような、大きな意味が隠されています。それがわかったときは、涙がこぼれそうになりました。

 

 テディは「アイリッシュ・ウルフハウンド」。体高が100センチ近くもある、ひじょうに大きな犬です。でも性格は穏やかで、家庭でもじゅうぶん飼える犬だそうです(運動量や食事の量を考えると、そう簡単に飼えないでしょうけど)。大きな犬は大好きで、なかでもアイリッシュ・ウルフハウンドはあこがれの犬。日本ではほとんど飼われていないようですが、いつかどこかで会ってみたい……。

波乗り犬

(このくらい、波に乗りたいもんです)

 

 はい、表紙のわんこにやられました。出版年は2013年と古いですが、Amazon.comでも評判の高い作品です。"Sweet" "Heartwarming" "Touched"と、レビューにも好意的なコメントが多いので、期待しながら読みました。

 

All That Ails You: The Adventures of a Canine Caregiver by Mark J. Asher

 

 捨て犬だったリグリーが見つけた家族&終の棲家は、介護施設。「ハウスドッグ」としてシニアたちと交流しながら、幸せな日々を過ごしていた。ある日、気難しく、怒りっぽいウォルターが入居してきて、施設の雰囲気は一変。ウォルターは何に対しても文句ばかりで、リグリーのことも毛嫌いし、近づけようとしない。でもある日、施設を揺るがす大事件が起こり、ウォルターのリグリーを見る目も変わっていく――。

 

 リグリーが語り手となり、リグリーの過去や、犬としての思い、ハウスドッグとしてのプライド、そして施設で暮らすシニアたちとの交流や、それぞれの人生が語られています。ホロリとさせられる場面がたくさんありました。とくに、気難しかったウォルターが、リグリーとのふれあいを通して、周りの人たちや家族に心を開いていく様子は、お約束な展開とはいえ、じわっときて……。"Heartwarming"な雰囲気が、大好きな作品『幸せなひとりぼっち(A man called Ove)』に似ているなと感じました。

 

 この作品を翻訳するなら、リグリーの一人称は何だろう、と考えてみました。たぶん、「ぼく」ですね。ペットの犬は、体は老いても、精神的には成熟しない(飼い主という親が一生そばにいるから)、と聞いたことがあります。食いしん坊で、散歩と遊びが大好きなリグリーは、スペンサー・クインの「チェット・シリーズ」のチェットっぽい感じ(チェットも、翻訳版での一人称は「ぼく」)。

 大人向けフィクションで、擬人化した動物が語り手の場合、やりすぎると子どもっぽくなってしまって、読みづらくなることもあるので、言葉遣いが難しいんじゃないでしょうか。語りのトーンは、気持ち抑えめにしたほうがよさそう。もちろん、語り手のキャラクター次第でしょうけど。

最後まで読み切れていない本ですが、なかなか興味深かったです。

 

A Good Man with a Dog: A Game Warden's 25 Years in the Maine Woods by Roger Guay

 

 アメリカ・メイン州で長年「猟区管理官(Game Warden)」を務めた著者による自伝です。表紙やタイトルからもわかりますが、K9ハンドラーとしても活躍された方です。猟区管理官と聞いても、日本ではあまりなじみがありませんが、アメリカではれっきとした公職(州や自治体の)で、法に則って様々な権利を行使できる立場なんだそう。管轄領内での密猟者の取り締まりや野生動物の保護だけでなく、行方不明者の捜索や事故・事件の調査など、警察官かCSIのような役目も担っています。犯罪者を相手にする仕事でもあるので、命の危険にさらされたりも。本書では、そんな猟区管理官の仕事に就いた経緯や、職務中の出来事がつづられています。

 メイン州とはちょっと違うかもしれませんが、アニマルプラネットで猟区管理官が登場する番組を放送しているようです。

 

 

テキサス州は広いので、パトロールだけでも大変そう。

 

山岳救助犬

(こっちは山岳救助犬)

 やっぱりコージー・ミステリーは読みやすい! 4日ほどでDeath by Chocolate Lab を読了しました。

 

Death by Chocolate Lab (Lucky Paws Petsitting Mystery Series) by Bethany Blake

 

 読んでいて楽しかったし、犯人も意外性があって、なかなかよくできたコージー・ミステリーでした。

 主人公のダフネは、哲学の博士号を取得しているという設定のわりに、向こう見ずというか、考えるより先に行動するタイプ。いくら姉に容疑がかけられているにしても、犯人かもしれない人物の家にひとりで乗りこんだり、夜中に出歩いたり、大事な証拠品をうっかり持って帰ったりと、もう好き勝手してます。一般市民でなんの権限もない主人公が、事件の調査と称してあちこち鼻をつっこみ、あれこれ動き回るのは、コージー・ミステリーのお約束ですけどね。

 これまたコージー・ミステリーには欠かせない「主人公のロマンス」要素もしっかり入ってました。お相手は、見るからにハンサム、でもめったに笑わない堅物の刑事、ジョナサン。ダフネの自由奔放な行動に振り回されつつ、まんざらでもない様子。ピンチになると颯爽と現れるジョナサンに、ダフネの恋人未満の男友達ディランが、俄然ライバル心を燃やす、というのも、よくある展開。

 

 謎解きという点では、疑わしい人物がどんどん増えていき、そのぶんひとりひとりの「怪しさ」が薄まったかなという印象も受けました。とはいえ、それぞれの人物についての結末はきちんと語られていましたし、サイドストーリーとしておもしろく読めたので、よかったと思います。

 

 何よりも満足したのは、犬たちの描かれ方! これまで読んだコージーの中で、いちばん犬が出てくる作品かもしれません。犬好きには間違いなくおすすめ。総勢6匹の犬たちが、ストーリー上でも重要な立ち回りを見せてくれます。なかでもわたしのお気に入りは、ダフネの愛犬ソクラテス。ほかの犬たちとは別格というか、キャラクター描写がほぼ人間並みです。ソクラテスにまた会いたいから、次作を読もうという気になりました!

 

 個人的には、翻訳出版されてほしいシリーズです。理由は、バランスのよさでしょうか。登場人物や伏線、サイドストーリーが多めで、ややごちゃごちゃした感じがコージーの味だと思います。この作品は、その辺のさじ加減がほどよく感じました。4作目が刊行予定らしいので、完成度、安定感なんかも気にしながら(途中でしぼむシリーズもあるので…)フォローしていきたいなと。

 

 ちなみに、コージー・ミステリーといえば最後に「レシピ」が紹介されている作品が多いですが、こちらのシリーズも作中で登場するスナックやスイーツ、そして「わんこのおやつ」のレシピがついてます!

 

Dial Meow for Murder

 

 次作は、猫ちゃんが登場するようです。

 

バセットハウンド

(バセットハウンド。哲学者の風格が漂ってますが、なにも考えてないのかも?)

 ずいぶん昔に、公園でバセットと散歩している方がいて、触らせていただいたことがあります。「耳は汚れているから気をつけて」と言われたのに、触りまくってベトベトになった記憶が……。あれだけ長いと、地面とか、いろんなものに触れちゃいますよね……。

 コージー・ミステリーも、いくつかのジャンルに分類できると思います。わたしのなかでは、

 

・動物もの(犬や猫が登場する、あるいは動物そのものが主人公)

・職業もの(主人公が本屋、カフェ、スイーツのお店、チーズの専門店、スープの専門店(?)、アンティークショップ、ゲストハウス、ペットグッズのお店などを経営していたり、シェフやパティシェ、作家、芸術家だったりする)

・趣味、カルチャーもの(編み物やパッチワーク、お菓子作りなど、主人公や主人公の属するグループの趣味がからんでくる)

・歴史もの(貴族やメイドが登場するような、時代設定が古いもの)

 

といったジャンルが思い浮かびます。ミス・マープルのような、「普通のおばあちゃん」「主婦」が主人公のコージーもありますが、最近の作品では、主人公(女性の場合がほとんど)が何らかの職業を持っている作品が大半を占めている気がします。自分のやりたいことを職業にして奮闘している主人公に励まされることも多く、それがコージーを読む楽しみのひとつです。

 

 さて、その「動物もの」コージー・ミステリーですが、Amazon.comでも、"Cozy Mystery"のサブ・カテゴリーに"Animal"があるくらい、コージーと動物の組み合わせは鉄板です。

 ちょっと検索しただけでも、山ほど(動物がテーマのコージー・ミステリーは、犬ものより猫もののほうが多いようです)作品が出てきました。例によって、Kindleがダウンロードしたサンプルだらけに……。

 

 今後の読書リストがてら、気になったものをまとめました。いずれも、シリーズの第一作です。

(調べていたら、すでに翻訳書が出版されている作品が結構ありました。原題と邦題がぜんぜん違うので、気づかなかったものも。)

 

The Plot Is Murder (Mystery Bookshop Series)  by V.M. Burns

 

 主人公のサマンサは、元英語教師。夫を亡くして半年、ようやく前向きに生きようという気持ちになり、書店を開くという夫の夢と、ミステリー作家になるという自分の夢の両方を追うことに。執筆中の小説の中で、殺人事件を描こうとしていたそのとき、現実の世界でも殺人事件が起こってしまい……。

 

 犬が活躍する気配は、あらすじを読んでもつかめませんが、表紙にいる2匹のプードルがサマンサの愛犬として登場する模様。主人公が作家(の卵)兼書店オーナー(の予定)というところに心ひかれました。

 

 

Death by Chocolate Lab (Lucky Paws Petsitting Mystery Series) by Bethany Blake

 

 ペットシッターのダフネが主人公のシリーズ。アジリティ大会の会場で、警察犬訓練所のオーナー、スティーブの遺体が発見される。疑いの目が向けられたのは、スティーブの元恋人で、ダフネの姉のパイパーだった。ダフネは、スティーブご自慢のチャンピオン犬アクシスが、事件以来、行方不明になっていることに気づく。パイパーにかけられた疑いを晴らし、アクシスを見つけるべく、ダフネは愛犬のソクラテス、アーティーとともに奮闘する!

 

 主人公の職業柄、犬がたくさん登場するのは間違いなさそうです(序盤だけで6匹も!)。表紙のバセットハウンドがソクラテス。名前がソクラテスなのは、いつもなにかを思案しているような顔つきだから?と思ったら、ダフネが哲学の博士号を持っているからという絡みも。ドクターの学位を持つペットシッターとは、かなり異色(パイパーも獣医なので、ドクター姉妹ですね)。

 

 

Plantation Shudders (Cajun Country Mystery Series) by Ellen Byron

 

 アメリカ南部のプランテーション・ホテルが舞台のミステリー。主人公マギーは、いろいろあってニューヨークから故郷ルイジアナに戻ってきた。町ではフードフェスティバルが開催されていて、ホテルも宿泊客で大賑わい。そんななか、老死の状況に不審な点があったため、マギーと宿泊客が容疑者として疑われるはめに。ホテルの命運をも左右する事件に巻き込まれたマギーは、独自に捜査に乗り出すのだが……。

 

 と、あらすじに犬のいの字も出てきませんが、表紙を見ると、どうやらバセットハウンドが出てくるようです(コージー・ミステリーのバセットハウンド率高し!)。著者のEllen Byronとこのシリーズは、2016年、2017年と、Agatha AwardのBest Contemporary Novel部門にノミネートされているので(Agatha Award常連のLouise Penny&ガマシュ警部シリーズが立ちはだかり、惜しくも受賞ならず)、ミステリー小説としても、完成度には定評のある作品といえます。

 

 表紙に犬やら猫やらのイラストがあるからといって、動物が活躍する話とはかぎらないのが、コージー・ミステリーのにくいところ。何度だまされた(?)ことか……でもかわいいから、ついつい目が行っちゃうんですよね。

 とりあえず、三つの作品の中では、いちばん「犬度」が高そうなDeath by Chocolate Labから手をつけました。ミステリーとして期待できそうなのは、Plantation Shuddersでしょうか?

 

チョコラブの子犬

(チョコ・ラブの子犬。かわいい!)

 Kindleのサンプルをダウンロードしてから、しばらく放置状態だった犬ものミステリー。

 

Blood on the Tracks by Barbara Nickless

 

 サスペンス感漂う表紙とタイトル(訳すと、「血の轍」)から想像はできたのですが、内容はかなりシリアスです。

 主人公は、鉄道警察官でK9ユニットのハンドラーであるシドニー・ローズ。彼女と相棒のクライド(シェパード)は、かつて軍に属し、駐留先のイラクで壮絶な体験をしたことから、帰国後はPTSDに苦しんでいます。同じ鉄道警察官のニック(シドニー・ローズの育ての親でもある)の姪が惨殺される事件が起こり、シドニー・ローズとクライド、そしてニックも捜査に加わることに。容疑者とされているのは、元軍人の男。任務中、顔や身体に大きなやけどを負い、爛弌璽鵐鼻Ε泪鶚瓩噺討个譴討い襪海涼砲肇轡疋法次Ε蹇璽困蓮偶然にもイラクで同じ極秘作戦にかかわっていました。

 忘れたい過去と、イラクで失った恋人や仲間たちの亡霊に悩まされながら、シドニー・ローズとクライドは事件の真相に迫っていく……というストーリー。1/3ほど読んだところで、読む手がストップしてしまいました。シドニー・ローズのイラクでの任務は、仲間の遺体の回収。それだけに、生々しい描写も多く、先に進むのが辛く……。文体そのものは読みやすいですし、テンポもいいので、クライドの活躍の場面が増えれば、なんとか読み切れるかも?と思ったのですが、K9の活躍よりも、主人公の心の闇と戦争体験がテーマのようでした。

 ちなみに、著者のプロフィールを見ると、「日本で生まれて、グアムで育った」とあるので、ご家族が軍関係?と勝手に想像しています(それなら、軍関係の描写が細かいのも頷けます)。

 

 挑戦してみたものの、やっぱり、硬派でシリアスなミステリー(スパイもの、戦争もの、ハードボイルドなど)は苦手です。「女性K9ハンドラー」が主人公の海外ミステリーは何シリーズか読んでいますが、K9ものにもいろいろあるんですね。

 シドニー・ローズと同じ「女性で帰還兵でK9ハンドラー」が主人公の作品がもう1冊、積読リストに入っていますが、この調子だと、当分寝かしたままになりそうです……。

 

シェパード

(がんばれ、警察犬!)

花と犬

 

 去年から、アメリカの犬雑誌Barkを購読しています。最初に届いたときは、薄い雑誌だと思ったのですが、記事がとても充実していて、なかなか読み切れないほど。

 

Bark Spring 2018

 

 今月号は、なんと「戌年」記念号!紙面のいたるところに、中国や日本の「戌」にちなんだ絵画や工芸品の写真が掲載されています。さらに、日米合作のストップモーション・アニメーション映画『Isle of Dogs(犬ヶ島)』を特集。いつになく、日本色の濃い内容です!

 

(とってもシュールな、でも犬好きは泣けそうな映画。)

 

 日本人イラストレーターの木内達朗さんの作品も紹介されていました。

(アメリカでも、柴犬が人気だとか。)

http://tatsurokiuchi.com/a-shibainu-in-central-park

 

 Barkにはブックレビューのコーナーがあるのが、本好きにはたまりません。今月号で気になったのは、こちらの一冊。

 

Have Dog, Will Travel: A Poet's Journey by Stephen Kuusisto

 

 盲目の詩人による自伝。タイトルと表紙にもあるように、盲導犬の存在が、生活や行動範囲、そして創作に大きな変化や影響を与えたということが綴られているようです。

(この著者は以前にも自伝を出版していて、そちらは翻訳書が出ていました。翻訳書は『わたしは、目が見えない。』というタイトルで、出版は1999年とかなり古いです。)

 これ以上積読本を増やしても、と思いつつ、Kindleのサンプルをダウンロードしてしまいました……。

 

 Barkとともに、犬情報のソースとして利用しているのが、American Kennel Clubのウェブサイト。勉強になる記事・おもしろクイズ満載なので、気晴らしに、とか思って見てしまうとえらい目にあいます(いつの間にか1時間くらい経ってたり……)。

 

 わんこのシルエットクイズを見つけました→QUIZ: Can You Guess The Dog Breed By The Silhouette?

 Round2もありますが、難しかった……秋田犬と柴犬のシルエットなんて、見分けられない……

マスティフの子犬

(マスティフの子犬。貫禄じゅうぶんです。)

 

 大きな(というか巨大な)犬が出てくる自伝を読みました。

 

愛犬ジゼルとの最後の約束

◆『愛犬ジゼルとの最後の約束』

ローレン・ファーン・ワット:著 三橋智子:訳

 

 マスティフという大きな犬と暮らした日々をつづった、著者の回想録です。毎日少しずつ読んでいましたが、もう序盤からうるうるときてしまいました……。別れという結末はわかっていても、著者のローレンさんの成長ぶりや、彼女の愛犬ジゼルが生きた日々をしっかりと見届けるんだという気持ちで、最後のページまで読み進めることができました。

 この本のポイントは、ローレンさんの語り口だと思います。20代前半という若さがあふれる文体ですが、全体的に、一歩引いたようなところもあります。冷静に過去を振り返り、自分を見つめ直しているような視線も感じられました。悲しみを受け入れて、前に進んでいこうという強さは、ジゼルがくれたものでしょうね、きっと。

 

 我が家にも17歳のシニア犬がいるので、「その日」が近づいていることを頭では理解しながら、ときに考えないようにしながら、毎日を過ごしています。別れの悲しみから逃げることがないよう、精一杯受け止められるよう、背中を押してもらいたくて、こういうテーマの本を読んでいるのかもしれません。

 

 じんわり心が温かくなる犬本(ノンフィクション)としては、去年読んだこちらの本と同じくらいよかったです。

 

Free Days with George by Colin Campell

(感想はこちら。)

 

 残念なことに、このジョージ君、昨年末に亡くなっています。癌だったそうです。イングリッシュ・マスティフのジゼルちゃんと、ニューファンドランド・ランドシーアのジョージ君、同じ"Gentle Giant"どうし、天国で出会って友達になっているかもしれませんね。

 

 こちらの犬本も、近いうちに読みたいと思います。

 

アティカス

◆『アティカス、冒険と人生をくれた犬』

トム ライアン:著 金原 瑞人、井上 里:訳

 

 一昨年くらいだったか、この本の原書と出会い、途中まで読んでストップしていました。表紙のアティカス君(ミニチュア・シュナウザー)と、北米の冬山をチャリティ登山で踏破(なんと147峰!)する著者の実話です。おもしろかったのですが、厳しい自然の描写にやられてしまい……どうにもこうにも読みあぐねていたのですが、翻訳書が出て、しかも金原瑞人先生の訳とは感激です。

『おやすみ、リリー』も越前敏弥先生の訳で読めたし、気になっている犬本がすばらしい訳で読めるというのが続いていて、とてもうれしいです。

 

◆Finding Gobi: The True Story of a Little Dog and an Incredible Journey 

by Dion Leonard

 

 こちらは、テレビや新聞記事でも取り上げられていた、砂漠のレース犬「ゴビ」の本です。

 日経新聞電子版の記事→NIKKEI STYLE

 こちらも、翻訳書が出るのではないかと楽しみにしています!(記事にもありましたが、今年は「戌年」ですから!)

 

→期待どおり、翻訳書が刊行されました。しかも、翻訳は夏目大先生です。

 

◆『ゴビ 僕と125キロを走った、奇跡の犬』

ディオン・レナード:著 夏目大:訳

救助犬

(山岳救助犬?)

 

The Darkest Thread by Jen Blood

 

 表紙から想像がつきますが、探索救助犬が登場するミステリーです。アメリカ・バーモント州で少女2人が行方不明になり、ドッグトレーナーで救助犬のハンドラーである主人公ジェイミーと、パートナーのファントム(犬)のところに捜索協力の依頼がきます。この2人の少女の叔母が10年前に殺されていたこともあり、FBIが指揮をとる大掛かりな捜索が行われていました。さらに、ほかの少女行方不明事件と関連している可能性も浮上し……。

 と、背景設定としてはありがちな感じもしますが、主人公とその息子ベアに特殊能力(ほかの人には見えないものが見え、聞こえない声が聞こえる、という霊能力?)があるというところが、この作品のオリジナリティ。著者はベストセラーのシリーズを書いていますが(サイコスリラー系?)微妙に本作とつながっているというか、本作がスピンオフのようです。

 

 前半はなかなか読書エンジンがかからなかったのですが、捜索の場面の描写や、ジェイミーの奮闘する姿にひきこまれて、後半はギアチェンジで一気読みでした。主人公とその息子が持つ特殊能力のインパクトがやや弱い気もしました。もっとぞくっとさせてくれてもよかったのかな?と。まあ、あまりスーパーナチュラルな部分を強調してしまうと、ミステリーじゃなくてホラーになってしまいますが。

 

 ファントムたち探索犬たちの活躍のほうは、しっかりと描かれていました。同じ犬ものミステリーのロバート・クレイスの「マギー」とか、個人的に「推し犬ミステリー」にしているマーガレット・ミズシマの「ロボ」にはまだまだ負けるかな……。

 

 いわゆる使役犬は、犬の鋭い嗅覚を活かして任務にあたることが多いようです。犬の嗅覚や能力がテーマのノンフィクションもたくさん出版されていますが、なかでもベストセラーになった、Inside of a Dog: What Dogs See, Smell, and Know(翻訳版は『犬から見た世界』)の著者アレクサンドラ・ホロウィッツさんが、「嗅覚を活かしてはたらく犬」について語ったラジオ番組を見つけました。

 

NPR:From Fire Hydrants To Rescue Work, Dogs Perceive The World Through Smell

 

 いろんな現場や状況ではたらく犬がいることが、よくわかります。

 ホロウィッツさんの新しい本が出ていました(だいぶ前ですが……)。

 

Being a Dog by Alexandra Horowitz

 

はたらく犬といえば、これもそう?

犬ぞり

ビーグル

(ビーグル。詩集の表紙の犬に似てるかなと。)

 

 年末年始に、こちらの詩集を読み終わりました。

 

Dog Songs by Mary Oliver

 

 タイトル通り、犬について詠った詩(と短いエッセイ)がつまった詩集です。著者のメアリーさんが、いかに犬を愛しているかが伝わってきて、しみじみと共感しながら読みました(メアリーさんは、犬の存在そのものが「詩」だと言ってます)。なかでも、わたしが好きな詩の一節がこちら。

...all of the sights I love in this world―and there are plentyーvery near the top of the list is this one: dogs without leashes. 

("If You Are Holding This Book")

 

(この世界には、愛すべき光景があふれている。そのなかからひとつだけ選ぶとしたら、わたしはこう答えるだろう。それは、リードから解放された犬の姿だと。)

「リードをつけずに走り回る犬の姿」って、たしかに見ているこちらも幸せになる光景ですね。もう、犬のテンションが違うんです!

 

 この詩集の詩はどれも平易な言葉で綴られていて、難解さはまったくありません。メアリーさんは、詩人ならではの観察眼と想像力で、犬のなにげないしぐさ、生活の一場面を切りとり、躍動感とユーモア、命の輝きにあふれる詩へと昇華しています。本のなかで、美しい言葉、心に残る言葉に、いくつも出会うことができました。

Dog is docile, and then forgets. Dog promises then forgets.

("Dog Talk")

 

(犬は従順だけれど、すぐ忘れる。犬は約束するけれど、それもすぐ忘れてしまう。)

「わかった!」「もうしません!」とか言って、すぐ忘れるのはうちの子の得意技です。

 

We would do anything to keep them with us, and to keep them young. The one gift we cannot give.

("Dog Talk")

 

(犬とずっと一緒にいるためなら、この子たちを若い姿のままとどめておけるなら、なんだってするだろう。でもそれは、決して与えることのできない贈り物なのだ。)

 犬好きだけでなく、動物や自然を愛する人にぜひ読んでほしい詩集です。

 

 *残念ながら、2019年1月、詩人Mary Oliverさんはお亡くなりになりました。83歳だったそうです。

 

 そういえば、去年購読手続きをした雑誌が、ようやく届きました。

 

Bark 2017 winter

(写真はBark Magazineのサイトからお借りしました。)

 

 届いたのは、刊行20周年の記念号でした。日本にも犬やペットの雑誌はたくさんありますが、Barkは結構社会派な記事が多いようです。薄い雑誌ですが、中身もペットフードなどの広告ばかりじゃなくて、記事満載で読み応えがあります。日本のペット雑誌や会報誌(日本動物愛玩協会)も愛読しているので、読み比べると、日米のペット事情の違いなどがわかって勉強になりそうです。


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