今月も、といってももう中旬ですが、犬本に手をつけました。

 Kindleのサンプルをダウンロードしてから、しばらく放置状態だったこの作品。

 

Blood on the Tracks by Barbara Nickless

 

 なんだかドロドロ感漂う表紙とタイトルですが、内容も硬派&シリアスです。

 主人公は、鉄道警察官でK9ユニットのハンドラーであるシドニー・ローズ。彼女と相棒のクライド(シェパード)は、イラクで壮絶な体験をし、帰国後はPTSDに苦しんでいます。同じ鉄道警察官で、自身の育ての親でもあるニックの姪が惨殺される事件が起こり、シドニー・ローズとクライド、そしてニックも捜査に加わることに。容疑者とされているのは、殺害された姪の恋人で、イラク帰還兵の男。任務中、顔や身体に大きなやけどを負い、爛弌璽鵐鼻Ε泪鶚瓩噺討个譴討い襪海涼砲肇轡疋法次Ε蹇璽困蓮偶然にもイラクで同じ極秘作戦にかかわっていました。

 忘れたい過去と、イラクで失った恋人や仲間たちの亡霊に悩まされながら、シドニー・ローズとクライドは事件の真相に迫っていくのですが……と、読んだのは序盤まで。想像以上に、バイオレンス色の強い内容でした。シドニー・ローズのイラクでの任務は、仲間の遺体の回収。生々しい描写も多く、最後まで読めるかな……という不安もありますが、文体は読みやすいですし、テンポもいいので、クライドの活躍の場面が増えれば、なんとか読み切れるかも?

 ちなみに、著者のプロフィールを見ると、「日本で生まれて、グアムで育った」とあるので、ご家族が軍関係?と勝手に想像しています(それなら、軍関係の描写が細かいのも頷けます)。

 

「女性K9ハンドラー」が主人公の海外ミステリー(原書)は、これまでに2シリーズ読んでいて、シドニー・ローズと同じ「女性で帰還兵でK9ハンドラー」が主人公の作品がもう1冊、積読リストに入っています。全部読めたら、比べてみるのも楽しいかもしれません。

 

 昨年からとりかかっていた翻訳案件、先月でほぼ作業が終了し、今月は出版社への「翻訳書企画の持ち込み」に取り組むぞ!と決めていたのですが、なんだかんだで手つかずのまま中旬まできてしまいました。これぞという原書はあるのですが、レジュメを書くにあたって売り込み材料が足りないな……とも感じています。「この作品ならではの魅力」を伝えるには、作品の読み込みはもちろんですが、類書との比較や差別化も必要です。

 そもそも、その作品の版権(翻訳権)が空いているのか……これを探るルートは、ゼロではないのですが、相当な時間がかかります。この「版権問題」にも関連して、持ち込みをされている翻訳者の方々からよく聞くのは、「古い作品に目をつけること」。さすがに、出版から5年(5年じゃたいして古くないのかもしれませんが)とか10年経っている作品で、まだ翻訳書が出ていないなら、版権が空いている可能性は大きいからです。それだけ前に出版された作品でも、普遍的なテーマや、いま読んでも古さを感じない作品はたくさんありますし、いまだからこそ出版する意義のある作品もあるでしょう。

 わたしがレジュメに手をつけようとしている作品は、わずか2年前に出版されたもの。しかも、それなりに著名な作家で、過去に翻訳書の出版実績があり、版権がすでに動いている可能性大です。それでも、レジュメを書いて売り込む、という経験が無駄になるわけではないのですが、どうしたものか……。

 

シェパード

花と犬

 

 去年から、アメリカの犬雑誌Barkを購読しています。最初に届いたときは、薄い雑誌だと思ったのですが、記事がとても充実していて、なかなか読み切れないほど。

 

Bark Spring 2018

 

 今月号は、なんと「戌年」記念号!紙面のいたるところに、中国や日本の「戌」にちなんだ絵画や工芸品の写真が掲載されています。さらに、日米合作のストップモーション・アニメーション映画『Isle of Dogs(犬ヶ島)』を特集。いつになく、日本色の濃い内容です!

 

(とってもシュールな、でも犬好きは泣けそうな映画。)

 

 日本人イラストレーターの木内達朗さんの作品も紹介されていました。

(アメリカでも、柴犬が人気だとか。)

http://tatsurokiuchi.com/a-shibainu-in-central-park

 

 Barkにはブックレビューのコーナーがあるのが、本好きにはたまりません。今月号で気になったのは、こちらの一冊。

 

Have Dog, Will Travel: A Poet's Journey by Stephen Kuusisto

 

 盲目の詩人による自伝。タイトルと表紙にもあるように、盲導犬の存在が、生活や行動範囲、そして創作に大きな変化や影響を与えたということが綴られているようです。

(この著者は以前にも自伝を出版していて、そちらは翻訳書が出ていました。翻訳書は『わたしは、目が見えない。』というタイトルで、出版は1999年とかなり古いです。)

 これ以上積読本を増やしても、と思いつつ、Kindleのサンプルをダウンロードしてしまいました……。

 

Snow Maiden

 

 The Snow Childを読了しました。50章以上という長さに読み切れるのか心配でしたが、読んでいくうちに先が気になって、気づいたら数日で読み切っていました。

 

 舞台は1920年代のアラスカ。子どものいない夫婦、JackとMabelは、アラスカの開拓地に移住します。Mabelはかつて死産を経験し、わが子を亡くした悲しみを乗り越えられないまま、長い年月を過ごしていました。そこで、新天地で心機一転、人生を再スタートするつもりでアラスカに移住したのですが、過酷な自然や開拓の厳しさのなかで、交わす言葉も少なくなり、夫婦の心はますます離れていきます。

 そんな重苦しい空気がただようアラスカでの生活でしたが、初雪が降ったある日、童心に返ったふたりは、Snow Childを作ります。この子は女の子だと、Snow Childに赤いミトンとマフラーを着せてやるMabel。すると、不思議なことが起こりました。森の中に、赤いミトンとマフラーをまとい、透き通るような肌と青い目をした、金髪の少女が現れたのです。少女は、おとぎ話に出てくるSnow Maiden(ゆきむすめ)のように冬の寒さを気にすることもなく、野生の生き物のようにしなやかに、風のように森の中を駆け巡ります。

 少女はFainaと名乗り、しだいにJackとMabelと一緒に過ごすようになります。ふたりは自分の娘のようにかわいがるのですが、春が来ると、雪の残る深い山奥へと、Fainaは姿を消します。悲しみとさみしさに包まれる夫婦でしたが、季節がめぐり、再び冬がやってきたとき、Fainaはまた、ふたりの元に戻ってきます……。

 

 白銀のアラスカが舞台ということもあり、幻想的な雰囲気ではあるのですが、わたしはファンタジーというよりヒューマンドラマとして読みました。Mabelの心境の変化や成長を軸に、過酷な環境で生きる人々の人生が丁寧に描かれています。また、Fainaがいったい何者なのか、どうして春になると姿を消してしまうのか、といったミステリーな部分もあります。自然描写も緻密で生き生きとしていて、とくにその野生動物の描写には心奪われました。キツネ、オコジョ、ライチョウ、グズリといった、アラスカならではの生き物たちも登場します。

 

 本作の翻訳書が見つからないので、日本で出版するとどうだろう……と考えてみました。とても美しい話ですが、それを日本語に翻訳して表現するのは難しいかなと(そのぶん、訳しがいはありそうですが)。家族や親子のあり方、生きるうえでの選択、何を大切にするかといった、根底にあるテーマはひじょうに普遍的なのですが、「アラスカの地」に日本の読者がなじめるかどうか……。ラストも、余韻を残す終わり方で、好みが分かれそうです。登場人物は少なく(ここはポイント!)、それぞれがしっかりと描きこまれています。そのなかでも、Mabelをどう訳すか、表現するかで、読者の共感、感情移入のしやすさが変わってきそうです。いろんな角度から読めるので、精読や読書会に向いている作品だと思いました。

 

(こちらの表紙も素敵です)

 

 もう一冊、洋書で読書会をやるならこれ!と思った作品があります。以前読んだ、こちらの作品です。

 

Faithful  by Alice Hoffman

(作品については、こちらの記事で書きました。)

 

 こちらも翻訳書が見当たらないのですが、日本の読者のとっつきやすさからいうと、Snow ChildよりはFaithfulかもしれません。

 今月は、仕事やらトークイベントやら、ミステリーの読書会やらで、犬本以外の本を久しぶりにまとめて読みました。積読本も(一部を残して)解消、ということで、ついつい新しい本に手が伸び……調子にのって、何冊かポチってしまいました。

 

The Snow Child  by Eowyn Ivey

 

 2013年ピューリッツァー賞フィクション部門の最終候補にもなっている作品で、以前から読みたいなと思っていたのですが、Kindleバージョンが破格の130円! 気がついたらポチってました。アラスカの厳しい自然が舞台になっていて、犬本ではないですが、動物はたくさん出てくるようです。まずはこちらから読もうかと。

 

I Could Chew on This : And Other Poems by Dogs  by Francesco Marciuliano

 

 これでもかというくらい、犬本な本です。愛犬家のみなさんなら、「なんでそこ、かじっちゃうかな」という思いをしたことは一度や二度ではないはず。うちの子が子犬のとき、買ったばかりの本とか、革のペンケースとか、もうかじられまくってました。タイトルに「犬によるポエム」とありますが、写真と詩(犬の「内なる声」だとか)がペアになった構成で、犬好き必笑、という紹介文にひかれてお取り寄せ。

 

 同じ著者の、こちらも合わせ買い。

 

You Need More Sleep: Advice from Cats by Francesco Marciuliano

 

 こっちは猫本です。わたしは人生で1匹しか猫を飼ったことがないのですが、ペットの猫の頭数がついに犬の頭数を上回り、猫人気に拍車がかかっているので、猫本も無視するわけにはいかないなと。「猫から人間へのアドバイス」ということで、単なる「かわいい猫ちゃんの写真集」を超えた、意外に深い内容?ではと期待に胸がふくらみます。

 

 と、このへんでポチッとは自粛。気になる本は山ほどありますが、ぐっと我慢です。新刊や未読の本に手を出すのもいいですが、これまでに読んだ本にも、すばらしい作品がたくさんあったので、読み返してレジュメを書く(原書なら)ことに力を入れようと思います。

 

犬と猫

(にゃんことわんこ)

パピー

(ビルバオ グッゲンハイム美術館のパピーちゃん。いつか会いに行きたい!)

 

 積読本をいつまでも積んどくわけにいかないので、仕事の合間に、寝る前に(というか、夜なべして)、少しずつ解消しています。

 とりあえず、以下を読了。翻訳ミステリーばっかりですね。
 

嘘の木

『嘘の木』(フランシス・ハーディング:著、‎児玉 敦子:訳)

 

書店猫ハムレットのうたた寝

『書店猫ハムレットのうたた寝』(アリ・ブランドン:著、越智睦:訳)

 

オリジンオリジン

『オリジン』(ダン・ブラウン:著、越前敏弥:訳)

 

 どの作品もとてもおもしろくて、どっぷり読みふけってしまいました。

 

『嘘の木』は、翻訳ミステリー大賞、翻訳大賞(二次選考対象)の両方にノミネートされている作品です。コスタ賞の大賞&児童文学部門賞を受賞した作品ということで、ファンタジーな児童文学かと思いきや、大人が読んでもじゅうぶん読み応えのある、重厚な人間ドラマでした。ミステリーとしても「この人が!?」という驚きがあり、19世紀後半のイギリスの時代背景、社会、文化といったところもしっかり描かれていて、歴史ものとしても読めると思います。こういうおもしろい翻訳書、どんどん刊行されてほしい!

 

「書店猫ハムレット」のシリーズは、シリーズ通して読んでいますが、アメリカ・ニューヨークの(都会というより、下町という雰囲気の)文化とか生活が味わえて楽しいです。キャラクターも地に足ついた感じで、コージー特有の「わやわや感(?)」が薄めで、安心して読めます。残念なことに、次巻が最終巻なんだとか……。最後まで、ハムレット(ハミー)の活躍に期待しています!

 

『オリジン』は、これぞダン・ブラウンという、壮大な舞台設定に、スピード感あふれる展開で、上下巻を一気読みでした。テーマとなるのが、テクノロジーと宗教という、まさに新・旧ふたつの世界。舞台となるスペインも、暗と明の両面を内包する国だからこそ、ストーリーに何層もの深みが出ているんでしょうね。ついつい時間を忘れて読書に没頭してしまう、「読ませてくれる」作品です。

 

 と、立て続けに「犬」が出てこない作品を読んだので、次は「犬本」かな……。

 


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