いろいろ重なって、なかなか進まなかった作品をようやく読みおわりました(Audible×Kindleで読了)。

 

Daughters of the Lake  by Wendy Webb

 

<概要>

 ケイトは、夫の浮気が原因で離婚を決意し、実家に身を寄せていた。傷ついた心を癒し、前に進むために、仕事も辞め、しばらくのんびりするつもりだった。ケイトはしばらく前から、不思議な夢を見るようになっていた。夢の中では、ケイトはアディという名の女性で、その体を通して体験するアディの感情や人生は、夢とは思えないほど生々しいものだった。

 そんなある日、実家の前の湖で、女性の遺体が発見される。様子を見に行ったケイトは、思わず目を疑った。なんとそれは、あの夢の女性、アディそのものだったのだ。ケイトが調べていくうちに、アディとケイトは過去でつながっていることがわかる。実業家であったケイトの曾祖父の邸宅で、アディの写真が見つかったのだ。アディの遺体は、100年という時を経て、湖岸に打ち寄せられたことになる。そんなことが、現実にあり得るだろうか? 

 ケイトの夢の世界では、アディが最期の日を迎えようとしていた。なぜ、アディは命を落としたのか? 夢を通して過去へとタイムスリップするケイトが解き明かしたのは、遠い昔に隠された、驚くべき秘密と悲劇だった……。

 

<感想>

 夢の世界、過去の亡霊など、ゴシックロマンスな雰囲気のフィクション。タイトルの犖个量次daughter of the lake)瓩蓮△つて湖の精に愛され、妻となった人間の女性から生まれた娘のことで、この神話のような話もストーリーに深く関係しています。アディの時代が18世紀初頭で、歴史小説の雰囲気も味わえますし、謎解きもあるので、ミステリーとしても読めます。ということで、いろんな読み方ができる作品なのですが、それだけに、ちょっとパンチが弱いかなという印象を受けました。

 Amazon.comではかなりの数のレビューがついていて、星平均4.5という高評価。全体的にはよくまとまっていて、とても読みやすく、作品としての完成度は高いと思います。ただ、表紙のインパクトのせいか、もっとおどろおどろしいストーリーを想像していたので、そこまでじゃなかった爐っかり感瓩ぬぐえない。ミステリーとしても、謎にからんだ割と重要なポイントに途中でピンときてしまいましたし、スリラーとしても、背筋が凍るほどでもなかったので……。もっとダークなものが読みたかった気分のときに読んでしまったのが、よくなかったのかもしれません。

 

 あと、Audibleのナレーター、キャラクターの演じ分けもとてもスムーズで、声の感じもこの作品の雰囲気に合っていたのですが、ちょっと芝居がかりすぎ?というのか、間の取り方とか抑揚とかが、ときどき気になりました。こうなると、好みの問題ですね。Audibleを聴けば聴くほど、もっといろんなナレーターの、いろんな作品を聴いてみたくなります(すっかりはまっています)。

 

スペリオル湖

(舞台となる、五大湖最大の湖、スペリオル湖。ここまで大きいと、もう海ですね……)

 勉強仲間と一緒に、著作権が切れた大昔の(だいたい100年くらい前の)作品を訳して冊子を作る、という企画を進めています。あくまで内輪で楽しむための同人誌ですが、訳文を形にするという体験をするのも勉強かなと。なんでも好きな短編を選んで訳すというコンセプトにしたのですが、集まった作品は、絵本あり児童書ありゴシックロマンスありの、バラエティに富んだラインアップになりました。この作品たちが1冊の本になった姿を見るのが、いまから楽しみです(しかし、同人誌のタイトルをどうするか……)。

 

 わたしは、『砂の妖精』で知られるイーディス・ネズビットの作品をチョイス。「猫と犬」のお話をまとめた短篇集から2篇と、怪綺談の短編集から1篇訳しています。児童文学×ホラーというのは、ヴィクトリア朝の女性作家によくある組み合わせのようです。でも昔の児童文学って妙に残酷だったりするので(これでもかと不幸がおそってきたり、結構バイオレンスなシーンがさらっと描かれていたり)、よくよく考えると自然な組み合わせなのかも? いっときエドガー・アラン・ポーとか好きでよく読んでいたのですが、またゴシック熱が再発しそうです。

(『砂の妖精』に登場する妖精のサミアドも、たいがい怖い……子どもが泣きそうなレベル→サミアド

 

 だいたい訳し終わって、お互いの原稿にチェックを入れている段階なのですが、自分ではまったく気づかなかったミスの指摘や、この表現だとわかりづらい、曖昧に感じるといった読者目線のコメントなど、とても勉強になります。完全に第三者の目で訳文を読んでもらい、フィードバックを受ける機会というのは、そうそうありませんしね。他人の訳文をチェックするのも、自分だったらこう訳すかな、とか、この表現は自分の引き出しになかったな、とか、気づきが満載です。

 

 なにより楽しいのは、自分の選んだ作品を訳すということ。実際の出版翻訳では、ご依頼あっての仕事なので、基本的に好きな作品を選べるわけではありません。自分がこれぞと思った作品が訳せるなら、訳者冥利につきます。原書ハンティングと企画の持ち込みをもっと頑張ろうと、気持ちを新たにしました。

 

creepy

(怖い話を怖く訳すのは、本当に難しいです……)

 イギリスの湿地帯が舞台の、ダークなクライム・サスペンス。一気読み&聴きしてしまいました。

 

Their Lost Daughters  by Joy Ellis

 

 イングランド東部リンカンシャーの人気のない湿地で、意識朦朧となった少女が保護され、少し離れた海岸では別の少女の遺体が見つかる。この地域では、10年前にも少女が行方不明になるという事件が起きていた。Jackman警部率いる犯罪捜査課が捜査を進めるうちに、背後に少女をターゲットにした違法パーティーの存在が浮かびあがってくる。Jackmanたち捜査官はおとり捜査なども試みるが、なかなかパーティーの首謀者を特定することができない。保護された少女の話では、ほかにも「連れていかれた」少女がいるという。その少女はどこにいるのか? 生きているのか? 焦るJackmanたちを待ち受けていたのは、目を疑うようなおぞましい光景と、暗い欲望、そして悲しい過去だった……。

 

 Audible版のナレーター、俳優のRichard Armitageの声がとにかく渋くて、聞きほれてしまいました(ひとりですべてのキャラクターを演じています。さすがに少女の声は、ちょっと厳しいものが…)。ほかにもいろんなAudible作品のナレーションを担当していて、そのなかにちょうど読みたいと思っていた作品もあったので、次はそれを聴きたいと思います。

 

 作品自体は、星4.5はつけたいくらい秀逸なサスペンスでした。主人公Jackmanと、Evansをはじめとする部下の刑事たちのキャラクターもしっかりしていて、このままドラマ化できそうな感じ。内容はかなりダークで、サイコ・サスペンス寄りでしょうか。凄惨な描写はほとんどないのですが、Evilという言葉がしっくりくるような、人間の心の闇や邪悪さがテーマになっています。ラストもそうきたか、という意外性があって(まさかこの人たちがそういう関係だったとは…という、けっこう力業?なもっていき方)、完成度の高い作品でした。

 著者のJoy Ellisは、この作品ではじめて知った作家なのですが、直接会って話をしたRichard Armitageいわく「アガサ・クリスティを彷彿とさせる、物静かでシャイな老婦人で、こんなダークなストーリーを想像したとは思えない」(Audibleのインタビューより)ような方だとか(あ、でも、アガサ・クリスティみたいな人なら、ダークな話を書いても不思議ではないですね)。Jackman&Evansシリーズは第4作まで出ていて、今後フォローが楽しみなシリーズです。

 

 読んで(聴いて)いて苦労したのは、イギリスのスラング。アメリカの刑事ミステリーなどではなじみのない表現が多くて、かなり戸惑いました。「Wilco(will comply = yes)」とか、いろんな略語とか。最後まで読んで気づいたのですが、巻の最後に「(アメリカの読者向け)用語集」がついてました! この作品だけじゃなく、イギリスもののサスペンスやミステリーを読むときに、とても参考になりそうです。

 

夕日

イギリスの町

 

 海外のミステリードラマ、とくにイギリスや北欧などヨーロッパが舞台のものが好きで(『CSI』とか、コテコテのアメリカドラマも結構好きですが)、最近はドラマといったらそっち系しか観ていないほど。個人的にツボな設定があって、「ヨーロッパの小さな町で次々と事件が起こり、住民の誰かが犯人だと思われるのだが、みんな怪しい行動をはじめて、全員が容疑者に見えてくる……」みたいな設定。まあ、よくある設定ですね。探偵役の主人公が中高年、登場人物も平均年齢高めであれば、さらにツボです。

 要は、落ち着いて観られるミステリー(サスペンス)ドラマが好き、ということなんですが、アメリカのドラマにありがちな「ガラス張りのオフィス」で「最先端のテクノロジー」を駆使して事件を解決、とかよりも、「足を運んで地道に聞き込み」してピースをはめていくような展開のほうが、わたしはしっくりきます。古いものが好きなので、舞台背景も石畳とか教会とか、古びた雰囲気の街並みにひかれるのかもしれません(時代設定はあくまで現代、というところがポイント)。

 

 映画と同じく、ドラマにも原作があったりしますが、海外ドラマの原作(原書・翻訳書を問わず)でまともに読んだことがあるものといえば、ホームズとかポアロ、ミス・マープルくらいでしょうか。あの『BONES』とか『リゾーリ&アイルズ』にも原作があったとは、最近まで知りませんでした。

 リーディングのお仕事でも、映像化に向いていそうな作品(実際、映像化が決まっている作品)の依頼が来ることもあります。映像化されると原作も話題になる(話題にできる)ので、出版社としても売りやすいのは間違いありません。ネット配信など、ドラマの放映チャンスが増えている時代ですから、フィクションのレジュメを作成するときは、そういう映像化の部分を意識するのも大事になってきそうです。もちろんノンフィクションでも、いま流行のジャンルとなっているTrue Crime(犯罪ドキュメンタリー)などは、ドラマの原作・原案になることもあるようです。

 

 こちらはTVドラマからいわゆるノベライズした作品。ドラマ→小説と逆パターンですが、読みたくなりました。主演のひとり、オリビア・コールマンはいまや堂々たるオスカー女優。

 

Broadchurch  by Erin kelly

 

(このドラマの音楽を担当したのが、アイスランドのポストクラシカルの作曲家、オーラヴル・アルナルズ。サウンド・トラックは秀逸の一言につきます。)

 

 ↑も気になるのですが、この連休中に読みたい&聴きたいと思っているのがこちら。

 

Their Lost Daughters  by Joy Ellis

 

 イングランド東部リンカンシャーの人里離れた湿地帯で、朦朧状態でさまよっていた少女が保護され、そこから少し離れた海岸で、今度は少女の遺体が見つかる。過去の少女行方不明事件との関連も疑われ、ジャックマンとエヴァンスという警部&刑事コンビが事件の謎に迫る……という、クライム・ミステリー。シリーズもので、オーディブル版のナレーションをつとめているのが俳優のRichard Armitage。オフィシャル・トレーラーを観ると、読むまえから「ドラマ化してほしい」と思わせてくれる雰囲気です。

 

 

 この連休は読書三昧の予定なので、まずはこちらから楽しみたいと思います。

猫と犬

 

 アメリカのミステリー雑誌『Mystery Scene』の159号(最新号)で、「犯罪小説に登場する犬」の特集が組まれていたので、思わずデジタル版を購読してしまいました。記事は数ページでしたが、なかなか読みごたえがありました。なかには既読の作品も。

 

◆Killing Trail: A Timber Creek K9 Mystery by Margaret Mizushima

感想はこちら→K9ユニットもの海外ミステリー "Killing Trail"

 

 コロラド州ティンバークリークを舞台に繰り広げられる、マッティ&ロボのK9ユニット・シリーズ。こちらのシリーズは、派手なツイストや血も凍るようなスリリングな展開はないけれども、安定感があって読みやすいです。マッティの相棒ロボ(ジャーマン・シェパード)以外にも、わんこがいっぱい登場します。準主役のコールが獣医なのですが、著者マーガレットさんのご主人が獣医のせいか、コールの診察のシーンなどは描写がとてもリアルです。

 第3作まで読んでみて、各キャラクターの人物像がだいぶ定着してきました(現在、シリーズは第4作まで刊行)。マッティの職場(警察署というか、保安官事務所?)が、あの『ツイン・ピークス』に出てくる保安官事務所に似ているような? 受け付けに「ルーシー」みたいなキャラもいたりします。

 

***

 

 この特集で、ほかに紹介されていた作品も、やっぱりK9ものとか、主人公が警察関連の作品がほとんどでした。ミステリー専門雑誌で犬が登場する作品となると、どうしてもそうなるんでしょうか? もうちょっと変わり種の作品も紹介してほしかった気もします。ミステリー×動物、といえばコージー・ミステリーですが、そっち系はあまり取りあげられていませんでした。

 

 ちなみに『Mystery Scene』、デジタル版が1冊700円くらいだったのですが、記事が盛りだくさんで、読み切れるのか?というほど内容が詰まっています。最初、年間購読しようかと思ったのですが、この1冊でとうぶん楽しめそう。とにかくミステリー小説だらけの雑誌なので、積読本がエンドレスに増えてしまいますね……。

 クロスジャンルなコンテンポラリー・フィクションを読了。犬もちょこっとだけ出てきます。

 

Where the Forest Meets the Stars  by Glendy Vanderah

 

 主人公のジョアナは、博士課程で鳥類学を研究する、20代半ばの大学院生。幼い頃に父親を、そして最近母親をガンで亡くし、自身も同じ病で数年間、闘病していた。大きな手術を乗り越えたジョアナは、研究の遅れと、自身の人生を取り戻そうと、夏の間、大学が管理する田舎のコテージでひとり暮らしをはじめる。早朝から夕方まで鳥たちを観察し、データを集める日々を送っていたある日、ひとりの少女が姿を現す。「アーサ・メジャー」(Ursa Major=おおぐま座)と名乗った少女は、自分は遠い星からやってきたエイリアンで、「5つの奇跡」を見るまでは星に帰らないという。こうして、ジョアナと不思議な少女は出会い、ひと夏を共に過ごすことになるのだが……。

 

 宇宙からやってきた少女という、SFかファンタジーのような設定で、この物語はいったいどこに行くのだろうと、奇妙な感覚をおぼえながら読み進めました。心身ともに傷ついたジョアナの内面が中心に描かれているのですが、そこにアーサの謎と、同じくアーサと深くかかわることになる、コテージの隣人ゲイブのエピソードが絡んできます。ジョアナの人生に突然現れた「エイリアン」、アーサとは何者なのか? 終盤は完全にサスペンスな展開で、ミステリー、マジックリアリズム、ロマンスと、クロスジャンルな味わいのある作品でした。

 以前、似た雰囲気の作品を読んだことを思い出しました。

 

The Snow Child  by Eowyn Ivey

以前の記事→白銀のアラスカに現れた少女 "The Snow Child"

 

 こちらも、ある日不思議な少女が姿を現す、というストーリー。主人公が夫婦ですし、時代設定など背景はまったく異なりますが、少女の謎が明らかになっていくところや、主人公とのかかわり方などに共通点を感じました。

 

 コンテンポラリー・フィクションは、作品によってはあまりに「現実的」すぎて、読書で非日常体験をしたい気分のときは敬遠してしまうのですが、この作品はかなりファンタジックなので、最後までぐいぐいページが進みました。オーディオブック併用だったのですが、わりと淡々とした声の女性ナレーターで、抑えた語り口が作品にマッチしていてよかったです。あまり仰々しい演技だと、この作品の世界に入っていけなかったと思います。ただ、低い男性の声色にやや違和感が……こればっかりは仕方がないのかもしれません(男性ナレーターが女性を演じるほうが、違和感が少ない気もします)。

 

森と星

アイリッシュウフルハウンド

(左がアイリッシュ・ウルフハウンド)

 

 児童書の「犬本」を読みました。

 

The Poet's Dog  by Patricia MacLachlan

 

 吹雪にあい、迷子になってしまった少年ニッケルと、その妹のフローラ。そんなふたりを助けてくれたのが、人間の言葉を話す犬、テディでした。テディは、ふたりを森の一軒家へと連れていきます。その家で、テディはひとりで暮らしていました。雪に閉ざされた家の中で、助けが来るまでをのりきろうと、ふたりと一匹は力をあわせ、心も通わせていきます。

 なぜテディは人間の言葉を話せるのか。テディの飼い主は詩人というのですが、どうしていまはひとりぼっちなのか。少しずつ語られるテディの過去は、あたたかくも、悲しい物語でした。

 

  原書で100ページほどの短いお話ですが、言葉づかいがとても美しく、心にしみじみと響いてきます。子どもと犬という小さな存在が、身を寄せあい、厳しい状況のなかでもユーモアを忘れずにいる姿にじーんときました。テディという犬の言葉で語られるストーリーは、大人や人間が語り手の作品にはない、不思議な魅力があります(犬好きなら、ますます)。物語のなかでは、テディの言葉は「詩人」と「子ども」にしかわからない、とあるのですが、子どもは誰もが詩人で、子どもの心を持っているのが詩人。ふと、そんなことが頭に浮かびました。

 

 本作の翻訳書が刊行されています。

 

テディが宝石を見つけるまで

『テディが宝石を見つけるまで』

パトリシア・マクラクラン:著 こだまともこ:訳

 

 タイトルの「宝石(Jewel)」という言葉には、実はテディ自身も知らなかったような、大きな意味が隠されています。それがわかったときは、涙がこぼれそうになりました。

 

 テディは「アイリッシュ・ウルフハウンド」。体高が100センチ近くもある、ひじょうに大きな犬です。でも性格は穏やかで、家庭でもじゅうぶん飼える犬だそうです(運動量や食事の量を考えると、そう簡単に飼えないでしょうけど)。大きな犬は大好きで、なかでもアイリッシュ・ウルフハウンドはあこがれの犬。日本ではほとんど飼われていないようですが、いつかどこかで会ってみたい……。

雁の群れ

 

 大好きな作品の続編を読みました。

 

"The Wild Robot Escapes" by Peter Brown

 

 第1作はこちら。翻訳書も刊行されています)。

 

"The Wild Robot" by Peter Brown

 

野生のロボット

『野生のロボット』 

ピーター・ブラウン:著 前沢明枝:訳

 

 無人島に流れ着いたロボットが、生存本能を発揮(発動?)して、自然のなかで生き抜くため、「野生のロボット」へと成長していくという、とても風変わりな、でもとても心温まるお話です。ロボットのロズは、ひょんなことで赤ちゃんガンのママになるのですが、それをきっかけに、ロズを警戒していた野生動物たちも心を開き、互いに助け合うように。そうしてなかよく楽しく暮らしていたロズたちですが、1作目の最後で、思わぬ事態が発生し……。

 ロズやロズの息子(りっぱなガンに成長)、動物たちがどうなったのか、それがどうしても知りたくて、次作を手にとりました。オーディオブックと併読したのですが、オーディオブックがもう最高で、聴き終わるのがおしいくらいでした。ナレーションはもちろんですが、効果音やテーマ曲もすばらしく、子どもが聴いたらわくわくすること間違いなし。一度聴いただけではもったいないので、もういっぺん通り、寝る前に少しずつ聴いていこうと思います。

 

 ロボットが主人公の話は、ともすれば、テクノロジーvs自然、みたいな構図になりがちですが、ロズと動物たちはお互いを認めあい、一緒に生きる道を選びます。"The Wild Robot Escapes"では、ロズと人間、社会とのかかわりが多く語られているのですが、ロズは持ち前の「学習能力」と「適応力」で、新しい環境でも奮闘します。でもロズは、人間のために働くことを目的に作られはいても、本当の自分は「野生のロボット」。自分らしく生きるには、といったロズの心(ロボットではありますが)の葛藤も描かれています。いろんなテーマに通じる、なにげに深い作品です。子どもだけでなく、大人も読むべき本じゃないかと強く感じました。

 

 とにかく、ロズがチャーミング。こんな素敵でやさしいキャラクターを生み出せるなんて、著者のお人柄なんでしょうか。洋書で読書会をする機会があったら、いちばんに選びたい作品です。

 鳥の羽がテーマのノンフィクション。

 

The Feather Thief by Kirk Wallace Johnson

 

 "The Feather Thief(羽泥棒)"というタイトルに、「羽を盗むってどういうこと?」と興味をひかれて読み始めました。エドウィン・リストという将来有望なアメリカ人の若きフルート奏者が、子どものころから趣味でやっていたフライタイヤー(フライフィッシング用のルアー)作りに取りつかれてしまい、信じられない行動に出ます。アーティスティックなフライタイヤーを作るため、美しい鳥の羽をどうしても手に入れたいと、ロンドン自然史博物館に侵入し、貴重なコレクションを盗み出したのです。300羽近くもの、大量の剥製をです! この事件を知った著者が、熱心な調査をもとにまとめたのがこの作品。まさに、事実は小説より奇なり、ですね。

 

 盗んだのが博物館の所蔵品ですから、当然、歴史的・科学的価値があります。コレクションがいかにして集められたかを明らかにするため、鳥の羽がいかに人々を魅了してきたか、文化や歴史、博物学者やコレクターの生涯といった「鳥の羽」にまつわるエピソードも紹介されています。極楽鳥(フウチョウ)やカザリドリなど、南国の美しい鳥の羽は、古くは女性用の帽子飾りとして、ヨーロッパで熱狂的な人気があったそうです。高値で取引されるため、危険を冒してでも標本を採りにジャングルへと旅立つ冒険家も多く、乱獲のせいで、絶滅の危機に瀕した鳥も……。

 

 著者はふとしたきっかけで事件のことを知り、それこそ取りつかれたように何年も調査と取材を続け、ついにはリスト本人にインタビューするところまでこぎつけます。犯行の様子や犯行後の行動、後日談など、リストの視点で臨場感たっぷりに描かれているのも、著者がリスト本人と直接(何時間も)話をしたからこそ。警察の捜査や博物館員の思い、フライタイヤ―界の反応などもサイトストーリー的に盛り込みつつ、事件はその後、意外な結末を迎えるのですが……と、クライム・ノベルを読んでいるようなドキドキ感もありました。読み物としてもじゅうぶん楽しめる一冊です。

 

 この事件を取りあげた、ナショナルジオグラフィックの記事がありました。

 →日本語版

 →英語版

 

 鳥の名前や学名など、専門用語もたくさん出てくるので苦労しますが、オーディオブック併用でなんとか読み進めています。なじみのない単語も、発音を聞くととっつきやすくなりますね。

 

ルリイロコンゴウインコ

(フライタイヤ―には、こういうきれいな鳥の羽を使うんでしょうか?)

 

 最近、オーディオブックにはまっています。洋書は「聴きながら読む」スタイルが定着しつつあるのですが、そのきっかけとなったのがこちらの作品。

 

◆Sadie by Courtney Summers

 

 犬も動物もまったく出てこない本ですが、検索でひっかかって妙に読みたくなり、オーディオブックをダウンロード。一気に読んで(聴いて)しまいました。

 セイディという、10代後半の少女が主人公。父親が誰かも知らず、母親は薬物中毒という、家庭に恵まれなかったセイディは、年の離れた妹マッティを親代わりに育てることが生きがいでした。でも、そのマッティが何者かに殺されてしまい……。犯人を見つけ、自ら裁きを下そうと心に決めたセイディは、ひとり町を離れます。

 一方、ニューヨークの放送局のプロデューサー、ウェストは、事件とセイディのことを知り、追跡調査を開始。セイディの足跡を追い、出会った人たちにインタビューし、リアルストーリーとしてポッドキャスト番組にまとめて放送していきます。果たして、ウェストはセイディを見つけることができるのか……。と、セイディとウェストの視点が交錯しながらストーリーが展開。ジャンルとしては、YAミステリーといったらいいのでしょうか。

 

 唯一心の支えだった妹を亡くし、ひとり犯人を追うセイディは、もろいナイフのよう。自ら危険に飛び込んでいき、出会った相手を、そして自分をも傷つけてしまう。物語が進むにつれ、セイディがなぜ犯人を追うのか(もちろんマッティのためでもありますが)、本当の理由が明らかになっていきます。読み終わったあとも尾を引くというか、いろいろ考えさせられる作品でした。

 

 この作品のオーディオブック版、なんといってもキャスティングと構成がすばらしい! セイディは生まれつき吃音症なのですが、そのセイディを担当したナレーターの熱演には心を打たれます。また、ウェストが語りの章では、オリジナルのポッドキャスト番組を仕立てていて、オープニング曲まで流れるという、力の入れようです。誰かにインタビューしている場面は、ちゃんと「インタビューしている雰囲気」になっていたりと、随所凝った構成で、本物のポッドキャストを聞いているようでした。オーディオブックは、ひとりのナレーターがすべて読み上げる場合と、複数のナレーターがキャラクターを演じ分ける場合とありますが、この作品は後者です。

 専門家からの評価も高いようで、Audie Awards(アウディ賞:優れたオーディオブックに授与される賞)のYA部門等のファイナリストになっています。作品自体も評価されていて、Edgar Awards(エドガー賞)のベストYA部門にもノミネート。ぜひ、受賞してほしいと思います!

→Audie Awardsの2019年の受賞作品が発表され、"Sadie"がYA部門の最優秀作品に選ばれたようです!

 

sad girl

(本の表紙の女の子には顔がありません。顔がないのが、ストーリーを暗示しているように感じました。)

 

 オーディオブックは出版翻訳のお仕事をするときにも、名前とか固有名詞の発音など参考になることが多く、欠かせない存在になりました。わたしはAudible.com(アメリカ版)を利用しています。日本版(Audible.co.jp)を使ったことがないので、違いはよくわかりませんが、洋書のラインアップはやっぱりアメリカ版のほうが豊富な気がします。アメリカ版はメンバーになると、Audibleオリジナル・オーディオブックが毎月2本、プラスでダウンロードできる(その月のリストから2本まで選べる)というサービスがありますが、日本版はどうなんでしょうか?


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